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【 Crew.1 】 ライター/細道 徹

【プロフィール】
細道 徹(ほそみち とおる)
福井県あわら市(旧金津町)出身。福島大学卒業(スポーツ社会学専攻)。スポーツグッズや海外のスポーツビデオなどを扱う企業に就職し、東京・渋谷のサッカー専門店に勤務。編集プロダクションを経て、2001年に雑誌サッカーダイジェストなどを出版する日本スポーツ企画出版社入社。2002年の日韓W杯では日本初の日刊誌(首都圏版)を担当。2005年から業務委託の形でサンパウロに渡り、ブラジル国内でサッカーの取材にあたる。2008年に母親の介護のため帰国後は、福井県内で医療・介護分野で介護福祉士として従事。現在は、医療法人オレンジに勤務し、主に診療クラーク業務と訪問介護を担当。

福井ユナイテッドとの出会い

2021シーズン途中から、ライブ配信をサポートする形で関わり始めました。サッカーが好きなので、関われて嬉しかったですね。ブラジルにいた頃、現地のクラブの一員のような感覚を味わったんですが、再びそれを味わえている感覚があります。試合の時は痺れますね。他人のことで喜ぶことって、大の大人になってからは、あまりないんじゃないかと思うんです。ここまで一喜一憂できるほどのことって。気持ちが入ることって、自分にはありませんでした。スポーツ、サッカーの良さだと思います。痺れますね。
自分も小学5年生で地元金津小のスポ少でサッカーを始め、大学まで競技を続けました。福島大学では東北の大学リーグで1部と2部を行ったり来たりでしたが、カテゴリーは違えど、昇格の難しさ、上がった時の充実感を味わいました。

2023シーズンからホーム開催試合ではクラブ公式の撮影を担当

ブラジルでの思い出

取材した中で一番の大物は、CBF(ブラジルサッカー連盟)の一室で行った、故マリオ・ザガロ氏(2024年1月逝去)。選手で2回、監督で2回と4回もW杯優勝を獲得したレジェンドです。僕が会ったときで74歳。2006年のブラジル代表の総監督の頃。当時サッカーとフットサルの日本代表を率いていたジーコとセルジオ・サッポの対談も同じくリオで行いました。現地のルートで取材したので、掲載した媒体は日本サッカー協会に注意されましたけど(笑)。

ブラジル滞在時の取材後(2005/12/19)

ブラジルはフットサルが盛んな上、とてもレベルが高く、当時日本ではFリーグ創設の頃だったので、フットサルも取材しました。フットサルでは、ブラジル代表のクルーと一緒に、国内での親善、公式試合を回りました。そのほか、ブラジル最高峰リーグ、リーガ・フットサルに所属していたクラブ、サン・カエターノには、年間でチームに帯同させてもらったのも貴重な経験でした。広大な国土をチームと一緒にバスで転戦したのは、ハードでしたね。

当時見ていて思ったこと

日本からのサッカー、フットサルの留学生と関わることもありました。そのなかには、後にJリーガーやフットサル日本代表として活躍した選手もいます。現地の子との違いは、言葉にすると月並みですが、サッカーにかけている思いと競争力でしょうか。とにかく競争は激しく、ショックでした。プロ予備軍でも、取材した翌日にクラブに行くと昨日いた選手がいないことも日常でした。戦力外としてカットされたり、移籍したり、ビッグクラブや欧州に引き抜かれたり。U-20の高校生年代でそうでした。

福井ユナイテッドの印象

僕自身、あまりたくさんのチームを見ているわけではないけれど、特に今年は雰囲気がいいなと感じます。若いチームだけど、上がっていきそうな。ブラジルにいた時のサン・カエターノに似たような雰囲気を感じています。藤吉監督はじめコーチ陣は、選手と向き合っている印象です。監督、コーチみんなが自主練習も最後まで付き合っているのは印象的です。

選手・スタッフ全員が喜びを表現するシーンからもチームの一体感が伝わる

チームのスタイル

当然、勝つためにやっているサッカーだけど、同時に福井ユナイテッドのスタイルを大事にしているなと思います。ボールを保持しながら、相手を見ながら立ち位置を変えていく。藤吉監督からは、プレミアリーグのブライトンを率いるロベルト・デ・ゼルビ監督のスタイルからもインスピレーションを得ることもあると聞きました。攻撃は最終ラインからビルドアップして、単純にボールを保持するのでなく、ゴールへと直結したプレーを選択する。一見すると、縦パス一本に見えるときもあるけど、実際は、空いた味方を利用している。リアクションとは異なる、相手を見て攻めるスタイルだと思います。選手個人のレベルも上がっているように思いますし、昨年はJリーグでの経験値の高い選手たちも加入し、よりチームとしてのバランスが整ってきた印象があります。

地域におけるクラブの存在

ブラジルでは、ヨーロッパほど地域貢献的な取り組みは、あまり見受けられませんでした。特にサンパウロやコリンチャンスなどのビッグクラブでは、勝つということにこだわる。メディアやサポーター、周囲の厳しい目がありました。セキュリティの問題もあり、選手との距離は感じました。一方で地方の小さいクラブでの熱量は凄かったです。例えば、カズさん(三浦和良選手)がプロ初ゴールを決めたキンゼ・デ・ジャウーなどでも、大事な試合となれば地元の人がスタジアムに集まりました。人口13万人くらいの小さな町で、U-20のチームがサンパウロ州選手権の決勝戦1stレグにおいて、強豪サントスを迎えた時には1万人を超える人がスタンドを埋め尽くしました。その2005年、ジャウーはクラブ史上初のタイトルを獲得したのですが、300キロ以上離れたアウェイ戦にも100人以上のサポータが詰め掛けるなど「オラが町」のクラブを心から応援する思いには熱くなりました。福井ユナイテッドにも、いつか福井県民みんなの感情を熱くさせる存在になってもらいたいですね。

400km以上離れた新潟でのアウェイ戦に駆けつける福井ユナイテッドFC サポーター

福井ユナイテッドの魅力

クラブの広報活動とは別に、一昨年よりひとりのサッカー好きとして「大人サッカー教室」に参加させてもらっています。世界中で、トップチームの選手が、ガチでファンと一緒にボールを蹴るなんてことはないと思います。ファンやサポーターにとっては、選手の技術だけでなく人となりを間近に触れられる貴重な経験ですね。

トップチームの選手と一緒にサッカーを楽しめる「大人サッカー教室」

このイベントだけでなく、福井ユナイテッドはファンとの距離が近い。それが一番の魅力じゃないでしょうか。もちろん、地域リーグというカテゴリーだからできる一面もあると思いますが、ここから上に上がっていくことを、一緒に体験できるのも魅力のひとつ。Jリーグ創設31年目を迎えた今年、Jなし県は、福井を含めてわずか6県。さらに、全国リーグに所属していない県は和歌山、島根、福井の3県のみとなりました。それでも、着実に進んでいる実感はあります。オリジナル10の一つ、鹿島アントラーズも土のグラウンドからスタートしている。ともに育っていく経験は今しかありません。周囲も選手も今しかない。突然プロになるわけじゃありませんから。

雨の中でもサポーターと一緒に盛り上がったファン感謝DAY

2024シーズンについて

期待しかないですね。でも、勝負事なので絶対はないし、やってみないと分からないのは事実です。だけど、こんなこと言ったらアレですけど、昇格はできると確信しています。選手・スタッフは、本当にみんな全力で頑張っているのを見ているから、期待しています。僕も一緒に勝ちに行く姿勢で臨みます。伝えることを通じて、少しでも勝利に貢献できたら。クラブの広報活動をきっかけに、1人でも試合を見に行こうとか、応援してみようとか気にかけてくれたらうれしいですね。一人でも多くの人が、福井ユナイテッドを自分ごとにできるきっかけを提供していきたいですね。

即戦力の新加入選手も徐々にチームにフィット。今シーズンの昇格に期待が高まる