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人生100年時代稼ぎ続けるための必須スキル: 自己革新と雇われパラダイムのアンラーニング

手も足も出ずに引退してしまう日本の問題

私は現在72歳で、後進独立コンサルタントを指導する私塾を運営する傍ら、投資持株会社の取締役を勤めて子会社の顧問として管理会計と原価管理を指導している。

ところが、ご多分に漏れず周りの同級生の殆どはリタイアしている。そのことに、少子高齢化・人生100年時代にこの状況でいいのだろうかと、かなり危機感を感じている。

割とマシな大学を卒業したおかげか、同級生の多数は大企業の部長クラスの職にあったので、60歳の定年時に即リタイアとなることは少ない。引き続き子会社の役員などを務めている。

ところが、65歳になりその年限が過ぎると、続々とリタイアしてしまう。その結果、小さな学科の同期25人くらいのうち70歳を超えても働いているのは、ほんの2-3人になってしまっている。(少数ながら自営業として独立を志す人もいたが、成功せずやめてしまうケースが多い。)

お勉強ができて世間的にも生産性が高いと思われるこの人たちが隠居するのは、少子高齢化が進む日本の損失であり残念なことである。ただ、我々の世代が定年を意識しだす50代の頃には、人生100年時代という言葉もなく備えができなかったのは致し方がない面もあろう。

(私の場合は、40代の頃に中学で同級だった女性の「70歳で幼稚園の経営を始め100歳まで働く」という発言を聞いて発奮したので、幸運な例外となったのだろう。変な同級生に感謝!)

人生100年時代の備えへの関心の薄さ

では、我々の世代はともかく現役世代はどうだろうか?先日、お節介だが「人生100年時代を稼ぎ続ける」というテーマのセミナーを企画し、そのようなものへのニーズを調査してみた。ところが、意外にも関心が薄く反応が芳しくなかった。

人生100年時代と言われても何かすべきという実感がない、という感じのようだった。金融庁の金融審議会の老後2000万円問題が騒がれているのに、なんとも狐に摘まれたような気分だった。

なぜ関心が薄いのか、なぜ折角独立を志しても途中でやめてしまうのだろうか?この疑問に対する答えを見つけないと、高齢化する日本の生産性はどんどん低下し、我々団塊世代の子供の頃の貧しい日本に戻ってしまいそうである。

しかし、これは変な話である。産業革命以来、社会は様々な技術的・制度的革新を遂げ、その結果我々の暮らしは豊かになってきた。そして、それらの革新の原動力は個人である。つまり、世の中にはその時々の状況に飽き足らず様々な問題を解決してきた人たちが少なからずいる。

実際、上記の企画についても、後日セミナーを強行したところ少数ながら参加者から強い賛同をいただいた。

このことが意味するのは、問いの立て方を間違ってはいけないということである。我々が立てるべき問いは、「なぜ人々の関心が薄いのか?」ではなく、「来るべき社会の変化に関心が薄い人と、現状に飽きたらない人の差を分けるのは何か?」なのである。

必要なのは自己革新力

なぜ関心が薄いのか、なぜ折角独立を志しても途中でやめてしまうのか、その解決のヒントは、ジョン・W・ガードナーの本「自己革新」にある。ガードナーは、この本で次のように問うている。

「個人・組織・社会の中には、成長を続け、成長するとともに繁栄するものもあれば、衰退し、活力を失ってしまうものもある。これは一体なぜだろう?」

そして、その答えが自己革新力の違いにあると言う。

ガードナーは、自己革新ができない原因はイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクが言う「心を縛る枷」にあると言っている。新しい世界を切り開けない、あるいは新しい世界に適応できない理由は、外的要因ではなく、内的要因が殆どなのだ。

凝り固まった個人の心情、態度、習慣、行動や目的を達成するために手段にこだわる習性、道徳の高台に立つ(世の中はこうあるべきだなどと人を裁く)、既得権益に拘る、などのことが自己変革を妨げるのである。

最近流行の言葉で言えば、不適切となった既存の習慣/知識/ 価値基準などを棄て、新たに妥当性が高く、有用なものに入れ替えるアンラーニングができなければいけないのである。

では、どうすれば自己変革できるのだろ言うか?その手がかりが、最近出版された松尾睦著「仕事のアンラーニング」に載っている「自己変革スキル」のフレームワークにある。(フレームワークといっても、他の論文を引用した一般的な定義が載っている程度で、その具体的な使い方は読み手の知恵に任されている。)

そこで挙げられている「自己変革スキル」とは、次のような4部分からなるものを指すとされている。

1. 変革の準備:自分の中で変える必要があることを理解している
2. 計画性:自分を変えるための実現可能な計画の立て方を知っている
3. 資源の活用:自分を変えようとするとき、積極的に支援を探し求めている
4. 意図的行動:成長の機会があれば、見逃さないようにしている

上述の人生100年時代への備えに関心が薄い人たちは、そもそも1.の変革の必要性を実感していない、ということになる。

人生100年時代を稼ぎ続けるのに必要な自己革新: 勤め人パラダイムのアンラーニング

人生100年時代に稼ぎ続けるための変革の必要性を理解したとしよう。その時、人生100年時代を一生稼ぎ続けようとすると、どうしてもどこかで企業に雇われない生き方を探らざるを得ない。

そして、そのためには以下のようなアンラーニングをもとにして計画を立てることが必要となる。

① 生計手段を定年時までにいくら貯めると言うストックの発想から、子育てが終わった後は生計に必要な額はそれほど多くはないので、引退せずに少額で良いから稼ぎ続けるフローの発想に切り替える
② リンダ・グラットンがライフ・シフトで触れた強化すべき無形資産のうち、現役世代に注力した生産性資産(スキル・知識)よりは変身資産(アンラーニング、自己変革スキル)の強化に力点を移す
③ 仕事の取引をそれまでの正社員という身分を前提とした見知った相手との会社内相対から、見知らぬ人だが一定のルールがある市場での仕事単位の取引に変える覚悟をする
④ それに伴い取引の場が会社という安心社会から市場という信頼社会に変わることを理解する
⑤市場という忙しい場では、能力を示す以前に注目されることが必要である。すなわち、市場では注目が希少資源であることを理解し、その獲得方法を工夫する                             ⑥ 同様に自分の主たる商品価値が、専門的なスキル以前に取引するに値する人間であると信頼されることに移行する、すなわち信頼も希少資源であることを理解し、その獲得を心がける
⑥ 市場での自分の商品価値は相手が決めると理解する。自分の価値を想定して行動を開始するのではなく、市場で行動してその結果から決める
⑦そのために、自分の評価指標を獲得売上額などの結果ではなく、行動しているプロセスの評価にする(マーケティング・営業のシステムを作り、その行動指標を評価する)
⑧ 以上をまとめた顧客獲得は、ネットワーク(チャネル)経由ではなく、自らがマーケティング ・営業を行う自己集客とする

変化の必要性に気づかない人はさておき、折角独立を志しても途中で挫折しやめてしまう人が多い理由は、これらのアンラーニングがうまくできないことにあると言えそうである。

これらのアンラーニングの詳細については、後日必要に応じて説明していくことにする。


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