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パイロット不足???

会社への採用願書を、インターネットで提出する事が当たり前になった時代、様々な会社のパイロットの採用情報を、インターネットで目にする人も沢山いるのではないでしょうか。パイロットを目指されている方の中には、既に外国のサイトから下の例のような募集要項を目にされた方もいると思います。

http://www.crewresourcesworldwide.com/jobs/
https://caeparcaviation.com/jobs/
http://www.hawaiiaviation.com/positions.htm
http://www.wasinc.aero/Web/Jobs/SearchJobsPage.aspx

見ていてあらっ?と思われた方いませんか?募集要項を見て、今からパイロットになろうと思われる方や、資格を既に取られた方の中で、300〜500時間という時間だけが目に付き、調べを進めている人もいるのではないかと思います。募集要項は、機種限定資格を所持し、同機種で数百時間の飛行時間があるか、同類機種での飛行経験を必要とした上で、総飛行時間を1000時間と書いてあるのを良く見かけるのは最近始まった事ではありません。

最近は「パイロット不足」とも言われているこの業界、実はパイロットが不足しているのではないのです。会社側からの、パイロットに対する福利厚生が不足しているため、免許と経験があるにも関わらず、飛ぶ職を選ばずに、福利厚生の整った、航空業界とは全く関係無い業界で、仕事をする人や、福利厚生を会社と交渉する立場にある組合から離れて、海外の航空会社で仕事をする事を選ぶ人がいるのも事実です。

パイロット側からしてみれば、免許と飛行時間と経験はあるが、組合の関係上、国内で他のエアラインで働く事が難しいので、外国エアラインのパイロット職を探し、外国のエアライン側も、自国のパイロット組合に関係の無い、外国からのパイロットを雇う事があるのです。ちなみに米国のエアライン業界では、一度所属する組合を出て違う国で働くと、米国のエアラインには戻って来れないと言う話も、頻繁に聞きます。こういった理由も含め、有資格、経験有りのパイロットを海外から雇おうとする傾向が見られます。この状況をパイロット不足としているのが一般的な見方ではないでしょうか。

さて、このような契約雇用は、エアラインでは数年単位の契約が通常です。一方、ビジネスジェットでの契約雇用の場合は、数日間、数週間、または数ヶ月単位で雇用されるのも日常茶飯事です。契約が終わり次第、通常、次の機会まで解雇です。ビジネスジェットのパイロットは、一部を除き組合制度はありませんので、正規雇用で、稀にスケジュールのあるパイロットの場合は、本職の休み期間を利用して、同機材を運航している企業で「アルバイト」をさせてもらえるケースもあります。契約雇用での給与は、機材によって業界のスタンダードが決められています。一般的には、海を越えて長距離を飛べる機材で、1日当たりの給与でUS$1200〜$1500、場合によってはUS$2000+も珍しくはありません。http://pilots4rent.com/rates.shtml に、機材で分けた大まかな1日当たりの給与がリストにしてあります。

ビジネスジェットの契約パイロットを募集している会社では、http://www.acass.comhttps://inflightcrewconnections.com などが、代表的です。給与の数字に驚かれる方もいるかと思いますが、ビジネスジェットに限らず、全てのジェット機の資格は通常6ヶ月毎に更新する必要があります。通常は正規雇用の職場が更新のトレーニング費用を持ってくれるのですが、短期契約職のみをやっているパイロットの場合は、給与から自費で更新のトレーニングに出席する必要があります。

意外とビジネスジェットのトレーニング費用は通常の旅客機よりも高額なもので、リカレント訓練でも、長距離を飛べる機材になると、1週間の訓練費用がUS$30,000と言うのも珍しくはありません。イニシャルトレーニングと呼ばれる一番最初に機種限定を取得する為の、1ヶ月に及ぶトレーニング費用では、機材によって日本円で1000万円を超える物もあります。契約職のみだと、自費で健康保険などもカバーする必要があります。皆さん、上記を読んでパイロット不足が事実と思われましたか?少しインサイトを深める事ができたのではないでしょうか。「パイロット不足」の宣伝と、事実を比較された上で、特に今後自費で訓練される方には見極めて頂きたい現状だと考えます。

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