『おにいさん、おねえさん、はとりさん』A観劇メモ

『おにいさん、おねえさん、はとりさん』とても面白かった。という観劇メモ。
前半は全体の感想で、後半は細かくネタバレしつつの感想です。かなりぐだぐだな感じなので、先に言っておくと、ちょう、ちょう、ちょ〜う面白かったです。わたしの好みも多分にありますが、それにしても良かったです。

構成は2人ペアの寸劇を5本立てというもの。
上演はAとBがあって、キャストは同じだが、それぞれペアが組み替えられていて話も全く違うらしいので、どっちも観れる!という仕様。ひとまずAだけみてきました。

寸劇をいくつか観るというのは初めてだったけど独特の楽しさがあった。
1本目がすごく面白くて、2本目、3本目…と次の話が始まるまでの間、うずうずと期待して待った。
自分に合うなっていう面白い短編集を見つけた時とか、面白いエッセイの書き手を見つけた時とかに、次の話や次の本を想像してにんまりするのに似ていて、うずうずとした気持ちが至福だった。そして全部、うずうずに応えてくれる面白さでした。
舞台上には2人だけで、すごくシンプルだけど、その空間が目の前に手に取るように想像できる濃密さがあった。最高。

それと、舞台とか映画で、特に舞台で会場が笑うときの空気は、客側ながらも病みつきになるな、と思っているのですが、まさにその空気がたくさん味わえた。
序盤から最後に至るまで、短い話の中にも緩急があって、舞台上の空間と客席が緩やかに繋がっていて、舞台上にどんどん客席が飲み込まれていく感覚も気持ちいい。
1本目の途中でんん、これはBも観たいな、とちょっと思ったのですが、その後4回のだめ押しを受けてBも観ることにしました。Bを観るまでのそわそわした気持ちでご飯10杯くらい食べれそう。

というわけで、それぞれの面白かったところをちまちまと書いていきたいと思います。
ネタバレです。

1本目
ラジオパーソナリティとリスナーが電話を通して会話する話。しょっぱなから笑える。メス、とかめちゃくちゃ笑った。
ラジオの発声ってラジオを通してじゃなくて、目の前の人がしているとちょっと面白い、っていう発見もあった。急に声張ってタイトル叫んだ後、地声に戻るってだけで結構面白い。
この話で一番グッときたのは、距離があってお互いが見えないはずなのに、相手の方を見るシーン。
最初はギクシャクと会話をしているんだけれど、ラジオパーソナリティが相手にグッと近づく話題を切り出す瞬間に、椅子に座りなおしてちょっとリスナーの方に向くのだ。
そういうことされるとグッとくるのは分かってるんだけど、だけど、すごい、すごいドキドキした。
最後に2人がまた、ってなる時その時もドキドキする。
ほっこりとする話。

2本目
バイトの休憩室。
最初の会話の続かない休憩室、めっちゃわかるわ…という空気とともに笑いが生まれていた。あの気まずさ…リアル…!
アイドルにハマってるんですよって話始めたときは、話し方がオタクだ!ってなって、同担拒否だったってことがわかったら、別の種類のオタクだ!ってなって、また笑う。
でも、アイドル好きなのが気持ち悪いとか、ブリサバが気持ち悪いとか、そういうことないですからって断言するシーンっていうのがこの話をただ笑える話じゃなくしていて、一緒にライブ行きましょうよっていうその後のちょっと心温まる展開を引き出している。
いいよね、好きなものは誰になんと言われようと好きだし、それで他人から気持ち悪いなんて思われるって、思わずにいきていきたい、と思った。

3本目
このカップルは15分後に別れるという宣言で、あ〜カップルの話か〜って思ったら、パジャマに長靴履いている人が出てきて驚く。
話を聞いていると、ここは海…? SF…? と状況を探るところから始まる。
個人的に長靴を履いたままヨガをやっているのがおかしくて、にまにましてしまった。踊るときは脱ぐのにね。踊るのは非日常なんだなと思った。
スクリーンを見ながらの会話って、当たり前なんだけどスクリーンから目を離して相手の方を見るという行為や、その時の言葉で、それぞれが何を重要と考えているかがわかって面白い。スタンドバイミーを観ながらの別れ話では、2人が相手の方を向く瞬間が違くて、それが面白かった。
それにしても、最後の踊れないけど踊るのシーンが愛おしい。

4本目
小学校時代の担任の結婚式に行く直前の2人。
一番会話のテンポやテンションが生々しかった。うわっついた!指についたわこれ、こっちにもついた!っていう軽やかさ。それにあの衣装、半端なくいい。あのナマケモノのトレーナーと、ジャージのズボン。髪型や話し方も相まってゲラゲラ笑ってしまう。
ハレの日だから化粧する、という言葉、とっておこうと思う言葉だった。
チョークを口紅にしてたら色つきリップをくれた先生っていう話とか、小突きとか、結婚のタイミングとかを2人が話すことで、で2人の向こう側にいる人が見えてくる面白さもある。
着信をあいみょんにしてる友達に対して、いい感じの登場の曲チョイスが西野カナというネタの細かさ。昔からの友達って、そういう趣味が違うけどなんか一緒にいるよね、と思った。

5本目
テンションの超高い友達と、テンションの超低い友達という組み合わせ、あるあるじゃんと思いつつしっかりリアルさが滲み出ていく展開だった。
あのだるがらみの仕方と、だる絡みの奥にある愛。お互いがお互いのこと手放さないぞって思いが好きだなぁと思った。この話はそれに尽きる。
泊まりの時に話す話ってすごく人を柔らかい部分で繋ぐなあと思うので、それで化粧落としてお風呂入ってって、女の人しかいない空間で男の人の話して。
あざを見つけて心配したら「好きだから。」答えたから「そうか」って心配を止めるシーンのような、相手の尊重の仕方が愛おしいなと思う。

1本目は引きこもっているリスナーを受け止めるパーソナリティ、2本目は気持ち悪くないって宣言するドルオタくん、3本目は地上か彼女かの決断、4本目は化粧という行為、5本目は彼女たちの彼氏の問題。そういうポイントが、小気味好い自然なコミュニケーションと共にあることで、リアルな世界として舞台が存在するんだろうなと思う。

2019年1月12日 どらま館にて おにいさんおねえさんはとりさん

#演劇 #はとりさん #観劇メモ #エッセイ

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