anone5話

冒頭の振り返りシーンで、傘を渡した時に亜乃音さんの手と玲さんの手が触れなかったのを再確認して、いつか亜乃音さんもるい子さんのように娘さんと手を重ねる日がくればいいなと思いながら5話を観始めました。(4話の感想はここ)

今回はやっぱり彦星くんのことを病院の外で待つシーンが印象的だったのかな、と思うけれど、5話のことをぎゅっと凝縮したセリフは「生きなくたっていいじゃない、暮らせば。暮らしましょうよ。」という亜乃音さんの言葉だと思う。今回はそれについて書いていきます(コメント欄にカルテットに絡めたおまけの感想あります。そちらもよろしければ是非)。

「生きなくたっていいじゃない、暮らせば。」という言葉は彦星くんの言う「明日」を考え出すと「いつか」を信じてしまうことと同じだ。「暮らす」や「明日」という小さなものが積み重なると「生きる」や「いつか」に繋がる。それはまさに夢に出てきたポイントカードのようなもので、少しずつ少しずつ積み重なるものだ。

5話はかなりの部分がハリカちゃんのナレーションによって進んでいく。anoneの中でハリカちゃんのナレーションというのは、彦星くんとのチャットを表す。つまり5話はチャットと、そこで語られる持本さんが買ってきた蝉のパジャマや、るい子さんの可愛いくしゃみや、亜乃音さんのお友だちの話のような、些細な毎日を中心に進んで行くのだ。

そんな風に強調されたチャットは病院の外で待ち続ける夜に繋がっていく。
ここにいてもいなくても同じと言いつつも、病院の外で待ち続けたように、ハリカちゃんはお医者さんでもお金持ちでもないから病気を治せなくても、あのね、と語り続けた。そのしつこいほどの積み重ねが、意味のないように思えることが、命の危機に瀕した瀕した彦星くんを救ったのだと思う。

何故そう言えるか。それは彦星くんがハリカちゃんとのチャットを楽しみにしていただろうと思うからだ。夢の中でハリカちゃんがぽんぽんぽんっと押してくれるスタンプと同じで、チャットは明日を考えるきっかけであり、習慣という名の暮らしであり、そしてそれは「生きる」に繋がる力となっていたのだ。もしかしたらそのポイントカードがたまる「いつか」がきた時、ハリカちゃんと会えるのかもしれない。

そして、亜乃音さんはみんなにポイントカードを作る人だ。毎日、起きて、食べて、帰って、寝る家を、ハリカちゃん、持本さん、るい子さんに作り、暮らしを作っている。だから、ハリカちゃんが明日は行くから、と言った時に「帰るって言いなさい」と言うことでハリカちゃんの「生きる」を支える。
そして、ハリカちゃんが病院の前から離れようとした時には手を強く握りしめることで、彦星くんの帰る場所であるハリカちゃんを支え、間接的に彦星くんの「生きる」も支えるのである(そう思うと、ハリカちゃんが亜乃音さん化しているとも言えそう)。

5話でよくわかるのは、辛い思いを抱える人に、生きよう、って力づけるのではなくて、暮らそう、って寄り添うのがanoneという作品の優しさだということだ。
anoneでは、やきうどん食べてる時に「話さざる」とうまく言えないような些細な日常がいたる所で描かれる。それは彦星くんの病室から見える映画みたいな、映画になるようなドラマチックな人生を、生きようとしなくていいじゃない、暮らそうよ、という視聴者へのメッセージなのだと思う。

つぎ、7話の感想

#エッセイ #anone #ドラマ #感想

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