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言の葉つなぎ Vol.2 石川慶子(特別正会員/舞踊家)

日本のフラメンコ界を代表するアーティストである、理事や特別正会員によるリレーエッセイ「言の葉(ことのは)つなぎ」、第2回は、特別正会員の石川慶子さんが登場です。 昨秋は、人気テレビ番組「芸能人格付けチェック」フラメンコのお題で、監修とプロ枠での出演を務め、現在全国を巡演中のツアー「フラメンコのちから」全公演に出演中、注目の実力派舞踊家です。



昨年の秋、「芸能人格付け」が放送されて、家族や友達、はたまた全然知らない方にまでご連絡をいただき、喜んでもらった。反対に、腫れ物みたいに扱われたりもする。収録の時、「ヤバい、放送日にきっといろんなとこから叱られる。いや、もしかしたら内容差し替えかも?」と思い悩んだので(ギリギリまで、フラメンコじゃなくて他のダンスになるかもと言われてた)、ひとまず放送されたことにほっと一息。

フラメンコ拡がれ!と思ったけど、波紋が広がっただけなのか?!

じゃあフラメンコってなんだろう。

このテレビのお仕事をやっていく中で「もっとフラメンコっぽい感じで」と何回か言われてフラメンコって何だっけ?となった。私にとってはすべてのものがフラメンコだけど。ロペス・デ・サントスの黄色の激カワ衣装を「カジュアルすぎる」と却下され、「もっとフラメンコぽいもので」と言われたときに、西郷輝彦の『星のフラメンコ』とか沢田研二とか、昔のTVなどを見て勉強した。赤いスリットの入った衣装(バタとか)、黒い帽子、カスタネット、赤い薔薇。。。以前の私なら「ぽい」というのは噓だ、そこに本当のフラメンコはない、と書き記すと思うけど、今年4月のコンクールに出たときにフアン・フェルナンデスとそんな話をしていて、「いや、僕だって『フラメンコっぽく』を練習してるよ」と言われ、フアンでそうなら、つべこべ言わずにやらなきゃなと思った。相対的に「よりフラメンコらしい」は存在する。でもそれもやっぱり個人的な感覚。だから気をつけなきゃいけないのは、切り捨てないことなのかも。

逆に、先日予選に出演したゴットタレントみたいな、スペインのテレビではどうかというと、「もっと日本らしく」と言われる。日本の伝統芸能を踊り、そんな人たちがフラメンコやるから面白い、みたいな感じでフュージョンを向こうから提案される。へレスでの最後のリハで、鍵田真由美先生が「日本に勝つ、スペインに勝つ、自分に勝つ!」と仰られたのが印象深い。実際収録の日に他の出場者(スペイン人カンテ)から目の敵にされた。そりゃ、日本人が大人数で派手な和服でフラメンコやるってなったら嫌だろうな。色物扱いよね?でも私たちのがウケる。当然だ。

フラメンコってなんなんだ

日本人のフラメンコってなんなんだ

謎は深まるばかりだし、答えは結局ないんだけど、そうこうしているときにとっても嬉しいメールをもらった。

「こんにちは。はじめまして。私は○○高校の進学コースの卒業生です。石川先生が新任されて、自己紹介の時にフラメンコを踊られたのをみて私も踊りたい!と思ったのがフラメンコをはじめるきっかけです。高校生の時はフラメンコ講座には入れなかったのですが、高校を卒業しても気持ちは変わらず、大学生の時に地元のフラメンコ教室で始めました。このフラメンコの出会いが今もたくさんの学びに繋がっています。12月の仙台公演に出演されるのを知って、思わずメッセージをしたくなりました。12月11日の群舞で参加させていただきます」

メッセージを読んで泣きました。着任当時なんて2002年の話だからもう21年前?!(※私は元高校教員です)。ファルダを手作りしたなー。また生徒や学生に教えたいな。それにしても、これこそ『フラメンコのちから(←日本フラメンコ協会全国ツアーのタイトル)』!フラメンコに恋に落ちる瞬間、誰かのそのきっかけになれるなんて本当に光栄です。最初の開催都市である宮城で彼女と一緒に踊れるの、ミラクル!

今年の第8回名古屋未来のフラメンココンクールの講評で審査員のアデラ・カンパージョが「dejar fluir la inspiracion(インスピレーションが湧き出るままにしてください)」って言ってて、どこかで聞いたと思ってたら、実家でアデラからもらった手紙が出てきた。2011年、今から12年前。何年たってもアデラはアデラ。そして慶子は慶子。

だからフラメンコもフラメンコ、

ということで。


Para bailar;

Hay que pisar firme y al mismo tiempo volar como un pájaro, abrir las alas y dejar que la imaginación te lleve donde quiera tu sentir.

Tu amiga Adela Campallo

踊るためには;

地面を踏みしめて着実に進む、それと同時に、鳥が羽根を広げて飛ぶように、イマジネーションを開放し、あなたが感じるところに連れて行ってくれるようにすること

あなたの友 アデラ・カンパージョ


石川慶子さんが、かつての教え子と共演者として感動の再再会を果たした、全国公ツアー「フラメンコのちから」、ツアー後半の1/15, 16 徳島公演、17, 18 大阪公演、1/23, 24 館山公演 も、ご注目ください!



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