🧠ナンバー1ラウンジ嬢とワイの仁義なき戦い


昔ラウンジで働いていたことがある。ラウンジとはスナックとキャバクラの間みたいなもんで俗に言う水商売だ。

これはそんなラウンジで出会った女の子の話。

はじまりはじまり

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若い頃、旅資金を貯めるために度々水商売をしていた。最近は水商売1本でやってく女の子はそう多くないらしい。例に漏れずこのラウンジでもワイも含めほとんどの女の子が昼職もしていた。
その中にワイと同業の子が1人いた。彼女は昼は歯科医院で歯科助手として正社員で働いていた。別のラウンジでも働いていた事があり、その時のお客さんが彼女を追いかけてこの店に流れてきたことでたちまちナンバー1の座に着いた。

ある時、彼女とたまたまバックヤードで一緒になり少し話をしたことがあった。

彼女は歌手をめざして某うどん県から上京してきたと言っていた。たしかに店で歌うカラオケではいつも高得点を出していたので「なるほどそれでかぁ」なんて腑に落ちた。
しかし彼女の話はそれだけに留まらずプライベートな事をあけすけに話してくれた。

まず彼女は当時30代前半だったのだが以前結婚していたらしくなんなら子供もいるらしい。しかし子供の親権は元旦那に取られ、今は年に1、2度会う程度なのだと無感情に言った。

彼女が今のこの状況に対してどういう思いでいるかを汲み取れなかったワイは否定も肯定も出来なかった。なので話の腰を折らないようのらりくらり相槌を打つことに徹した。途中ワイの事も聞かれたので旅の資金集めの為に働いてるという事を話した。

そうこうしているうちに店が混み合いワイも彼女もお互い別々の卓で接客にとりかかることとなった。

しばらくするとママから他の卓に行ってくれとの指示を受けた。ラウンジでは本指名を受けてない子はグルグルと色んな卓をタライ回しにされる。
ワイと直接会った人は想像に難くないだろうが、「The賑やかし」のワイは当たり前に本指名などされず、ただただ盛り上がっていない卓を温める要員として重宝され、その使い勝手の良さからママからの全幅の信頼を得ていた。

指示通り新たな卓に座るとお客さんから開口一番「歯科衛生士って仕事しないんでしょ?w」と半笑いで言われた。てかなぜこの客がワイが昼間歯科衛生士をしているのを知っているのだろう?疑問に思ったワイは聞いてみることにした。すると客は悪びれもせず「さっきAちゃんがそう言ってたからさぁ」と告げた。
Aちゃんとは件のナンバー1ラウンジ嬢のことである。


今になって思う事は何のしがらみもないワイが疎ましかったのかもしれない。話をしていくうちに言葉に出来ないモヤモヤが彼女の心を覆い尽くしそれは怒りや嫉妬という表層意識として現れてしまった。
きっとその感情の下にはまた別の感情が横たわっていた事だろう。

ワイからしたら店でナンバー1張ってお客さんからひっぱりだこで男性を虜にする美貌と話術を持っている彼女が心底羨ましかったわけだが、隣の芝はなんとやらって奴なのかな。


めでたしめでたし

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