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山梨ワイン農家から学ぶ生産方法と想い

ぶどうの収穫真っ盛りとなる直前の8月中旬、山梨県のワイン農家を訪れた。特に印象深かった奥野田葡萄酒醸造所をその魅力とともにお伝えしたい。

■アットホームなワイナリー

ワイナリーツアーに予約し少し早めに到着したところ、お昼休み中とのことでオフィス兼お店は閉まっていた。聞くと従業員4名で、1.5ヘクタールの農園で葡萄の生産、収穫、醸造、販売までを行うお店であり昼休み中は皆で休むことにしているとのこと。従業員4名という少なさには驚いたが、日ごろから葡萄の生産も機械のメンテナンスも醸造も手掛けるワイナリツアーの担当者が説明をしてくれるのだから、説明がわかりやすいしきめ細やかなのは間違いない。

■農薬に頼らない生産方法の工夫

現社長が平成元年に若い担い手を探していた旧醸造所を引き継いだ際には農薬を使った生産が一般的であった。しかし薬に頼らず自然にも人にも優しい有機栽培を実現させたいとの思いから、残留農薬値の高い畑からの脱却を図るべく様々な工夫が施されている。例えば、通常間隔をあけて植えると根が横へ広がる葡萄の木をあえて密度高く配置することで土中の農薬が幹に上がることを防ぐ、あえて土に生える雑草を残すことで農薬を吸い幹や葉に回るのを阻止する仕組みだ。木の間隔を狭めたために手押し型の農業機械一台が通るのが精一杯の広さのため作業はすべて人による手作業だ。

■人手不足解消に一役買うテクノロジーの力

山梨県の農家人口の減少は著しく20年前と比べ農家の数は約半数近い(平成7年30,074人、平成27年16,978人)。山梨県の農業は山梨県民だけでは維持できないと言われているほどだ。そこで導入されたのが富士通株式会社が開発した生育管理装置だ。畑の温度、湿度、日当たりなどの情報を収集し、太陽光パネルによる発電でこれら情報を事務局のパソコンに送信する仕組み、送られた情報はデータベース化され、季節ごとや年ごとに傾向を比較することもできる。これにより農家が見回ることなく随時畑の情報を確認することができ、特別な保護や管理が必要な葡萄の木には早めの対応が可能となる。

■ファンとの交流

ワインセミナーや葡萄収穫会など、消費者との接する機会を持つのも特徴だ。100名を超えるイベントもありさぞ運営が大変だろうと思ったが、2回目の参加者が新たな参加者に解説するなど参加者同士の交流に運営が助けられているとのこと。9月には葡萄の収穫会が行われ、よい葡萄の見分け方や味わいについて学ぶことができるとのこと。ワイン好きにとっては目が離せないワイナリーだ。

<出典・参照>

奥野田葡萄酒醸造所

山梨県の農林業(平成28年、農林水産省)

富士通株式会社 食・農ウェブサイト


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