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ワインブドウの収穫会@奥野田葡萄醸造株式会社 in山梨

8月にワイナリー見学でお世話になった奥野田葡萄醸造株式会社さんにてワインブドウの収穫会があると聞き、中央線特急「かいじ」の始発に乗り込み参加。収穫会は9月の土日に3週連続で行われており、今週は赤ワインの品種としてお馴染みのメルローを収穫した。

9時に畑に到着し、ブドウの切り方、取り除くべき箇所、ケースへの入れ方についてレクチャーを受け早速収穫開始。ちなみにこの日は35名が参加し、全2400キロほどのメルローのうち、1200キロの収穫が目標とのこと。つまり一人当たり40キロ収穫しなければならない計算だ。何より、私が収穫したブドウを使ったワインが2021年には商品化されるのだから責任重大でありなおさら気合が入る。

メルローは他品種と比べて切り取りやすいと聞いたものの、実際に収穫を始めてみるとブドウ同士が絡み合うように成長しているもの、枝と房との隙間がほぼなくブドウを傷つけないように注意深くハサミを入れる必要があるものなど個性豊かなブドウたちばかりでド素人の私は悪戦苦闘。しかし時間が経つにつれ徐々に馴れ、1つの枝にいくつもの房が連なっておりその上部を切ると一気に切り落とせることに気づき、しおれなく熟れ過ぎでもないほどよく弾力がある実だけを素早く残す切り方を習得した。休憩時間を含めて約4時間の作業があっという間に感じられるほど夢中になった。蝉の声が聞こえる中ふと空を見上げればトンボが飛び交い、照り返しの強い日差しで噴き出た汗が涼やかな秋風でさらわれて、夏と秋の間の季節を堪能しながらの作業は何とも贅沢で心地よい。

大好きなワインの収穫作業に関われた!!という達成感はもちろんのこと、この収穫会ではいくつか気づきや学びがあり共有したい。

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1.体験型アクティビティへのニーズの高まり

参加者の中にはワイナリーの会員となり苗の植え付けや手入れから収穫まで数か月にわたり関わっている人がいた。中には、収穫会が始まった約10年前から毎年通い皆勤賞という強者もいたほどである。ワイン好きが乗じて生産や醸造のやり方も知りたい、けれども転職するほどではなくあくまで趣味として、でもやはり本格的に学びたいという人にまさに絶好の機会なのであろう。「地産地消」「食の安全」が謳われる最近では、こうしたプチ農業体験を通じて生産に関わりたいと希望する人は多く、ワインだけではなく米、野菜、チーズ、畜産、水産など農業全般に見られる傾向といえる。手段としては、農地の一区画を借りて菜園を手掛ける「週末農園」、週末だけ地方で暮らす「週末移住」などさまざまあるが、人の手を必要としている農家の下で、育て方を教わりながら日本の農業に貢献できる収穫体験は参加者にとりまさに一石二鳥ではないだろうか。

2.農家の負担軽減にもつながるwin-winな関係

イベント参加者は農家にとってもありがたい存在だ。山梨の農業はもはや山梨県民だけでは支えきれないのが現状であり、農家人口が限られる中、労働集約型の作業を自社内で独自に行うのは非常に困難だ。まして、手作業が基本となる傷つきやすい果物や野菜においてはなおさらだ。今回の参加費は1人3,200円(一般参加の場合。会員価格・2日連続参加の場合割引あり)であり、1人あたり時給1,000円のアルバイト35人を5時間雇うのに比べ、コスト削減どころか多少なりと収益も得られるため農家側のうまみも大きい。まさに参加者・農家双方にとってwin-winな企画といえる。従業員5名の奥野田ワイナリーでこれほどのイベントを企画・運営するのはさぞ大変なのではないかという疑問が浮上したが、ワイン好きという共通項で集まった参加者がリピーターとなり、先輩参加者が新しく来た人に教えるという良い循環が自然発生的に生まれイベント運営を支えているのだそうだ。

3.面白さ、感動を提供するおもてなしの心

プチ農業体験に来てよかった!面白かった!また来たい!と思えるかどうかはやはり主催者のぬかりない準備、参加者に喜びと感動を与えるおもてなしの心が欠かせない。今回のイベントは単に農業体験ができるというだけではなく、最寄駅までの迎え、ハサミの貸し出し、朝のおにぎり、おやつ、飲料水、お弁当、グラスワイン1杯無料サービス(さらに超安価で追加オーダーも可)とありがたいサービスも含まれていた。参加者が熱中症になることなく最後まで楽しめるように、喜んでもらえるようにという配慮が端々に感じられ、参加費3,200円では安すぎる充実ぶりだ。

今でこそ生産者と消費者がつながる場を提供する素晴らしい奥野田ワイナリーだが、30年前に現社長がたった一人で始めたワイナリーであり、当時は壁もない言葉通り「風通しのよい」場所で、ビジター用のトイレを設置したのもほんの10年前とのこと。こうした苦労や困難をまるで漫才のように面白く語り、少しのハプニングも笑いに昇華できる心の余裕を持った社長とお客様を喜ばせるおもてなしの心を持った従業員だからこそ実現できる消費者との交流の場なのかもしれない。

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■奥野田葡萄酒造株式会社



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