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効果的なSDGs事業の取組に向けたSNS分析~第3回 SDGs17目標に係るキーワード分析~

はじめに

SDGsが社会に浸透し、「Why SDGs?」と「What is SDGs?」が提唱される機会も増えました。

日本の環境省によると、「SDGs」が創出する市場機会は年間12兆ドル、日本円に換算(1ドル=100円で換算)するとおよそ1,200兆円にも及ぶと言われており、今後もSDGsに関連するキーワードは様々な場面で目にする機会が増加すると考えられます。

また、昨今の事業を行う上で大事なキーワードが経済価値と社会価値の向上を両立させる「CSV(Creating Shared Value)」と、環境・社会・ガバナンスを投資の判断基準とする「ESG投資(Environment, Social, Governance)」であり、SDGsはビジネスにおいても重要ワードです。

SDGsを絵に描いた餅にしないため、SDGsを事業として推進を試みている企業等が増加している中、SDGsの推進者が様々な手法でSDGsの重要性やそのメリットを発信しようと試みています。

一方で、「SDGs」というキーワードの受信者は、発信者のメッセージをどのように受け止めているのでしょうか?

本分析では、「How To Achieve SDGs」の一助として、複数回にわたりSNS上で「SDGs」がどのように浸透しているのかを考察し、発信者のメッセージを受信者に効果的に伝える際に参考となるテクニックを提言します。

分析シリーズは全4回で構成されています。

  • 第1回 SDGs浸透状況に関する考察

  • 第2回 特定ニーズに対するSDGs分析手法

  • 第3回 SDGs17目標に係るキーワード分析

  • 第4回 個別企業・教育機関・自治体のSDGs戦略への提言

第3回では、SDGsの17個の目標についてキーワードを定め、そのキーワードのSNS上での傾向を読み解いていきます。

※こちらの記事は2020年に情報技術開発株式会社(tdi)様、株式会社ホットリンク様と作成したものを改めて本noteで公開しております。

アジェンダ

  1. 17目標に係るキーワード分析
    1. 貧困をなくそう(キーワード 「貧困」)
    2. 飢餓をゼロに(キーワード 「飢餓」)
    3. すべての人に健康と福祉を(キーワード 「健康」)
    4. 質の高い教育をみんなに(キーワード 「教育」)
    5. ジェンダー平等を実現しよう(キーワード 「ジェンダー」)
    6. 安全な水とトイレを世界中に(キーワード 「安全な水」)
    7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに(キーワード 「エネルギー」)
    8. 働きがいも 経済成長も(キーワード 「働きがい」)
    9. 産業と技術革新の基盤をつくろう(キーワード 「技術革新」)
    10. 人や国の不平等をなくそう(キーワード 「不平等」)
    11. 住み続けられるまちづくりを(キーワード 「まちづくり」)
    12. つくる責任 つかう責任(キーワード 「リサイクル」)
    13. 気候変動に具体的な対策を(キーワード 「気候変動」)
    14. 海の豊かさを守ろう(キーワード 「海洋ごみ」)
    15. 陸の豊かさも守ろう(キーワード 「生物多様性」)
    16. 平和と公正をすべての人に(キーワード 「平和」)
    17. パートナーシップで目標を達成しよう(キーワード 「グローバル」)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

分析方法

今回の分析レポートでは、WEB、SNS、ニュースなどの情報を収集し、自然言語処理の技術を活用した分析結果から、マーケティングの専門家やSDGs関連のコンサルタントが気づいた点を取りまとめる方法を採用しています。

活用したソリューションは以下の2つとなります。(詳細は各社のホームページを参照ください)

  • BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長
    (株式会社ホットリンク 係長事業からの技術供与)
    リンク先:https://www.hottolink.co.jp/

  • UiPathを利用したWEBクローリング
    (情報技術開発株式会社RPA推進室からの技術供与)
    リンク先https://www.tdi.co.jp/

17目標に係るキーワード分析

1.貧困をなくそう(キーワード「貧困」)

このキーワードは、全世代に共通して関心の高いものと考えられます。
グローバルな視点での問題よりも、国内の身近な問題にクチコミが集中する傾向があり、中でも「(コロナ関連の)支援」や「こども」というキーワードとの関連が多く見られます。
取り組み事例としては、医療・介護、食品・給食、住環境整備を通じたひとり親支援や貧困層のサポート活動などが数多く存在します。


2.飢餓をゼロに(キーワード「飢餓」)

このキーワードは、比較的若い世代において、「空腹」や「食欲」と関連付けて使われる傾向が見られます。また、年代が上がるにつれて、クチコミ数は減少いたしますが、社会問題や国際問題として議論されるケースが発生しています。
このテーマは国内問題というより、グローバルな視点での問題としての認識が強くなり、取り組み事例としても、世界に向けた施策の事例が存在しています。


3.すべての人に健康と福祉を(キーワード「健康」)

全世代においてコメントが多くなります。
社会的、国際的な問題に対するコメントよりも、自身の健康管理や健康促進として議論されるケースが多いようです。
取り組み事例としては、企業における身近な対象者として、社員の健康管理や健康促進に関する取り組みや技術提供などが見られます。

4.質の高い教育をみんなに(キーワード「教育」)

「教育」というキーワードは非常に身近なテーマであり、クチコミ数は増加します。従って、「学校」「義務教育」というキーワードと関連付けされるケースが多く見られます。
SDGsで問題提起している「教育の場の提供」などのキーワードを見つけることは難しい状態ですが、取り組み事例としては、海外に学校関連の施設を整備する例などが存在しています。

5.ジェンダー平等を実現しよう(キーワード「ジェンダー」)

「ジェンダー」というキーワードは比較的若い世代でクチコミが行われる傾向が強いようです。
日本においては、女性差別や女性蔑視に対する批判的なコメントが多く存在すると感じられます。
年代が上がるほど、より広い定義でのジェンダーについてコメントするケースが増加します。
事例としては、各組織、各ポジションにおける女性比率を高める取り組みが見られるほか、LGBTへの理解を進める事例が存在しています。

6.安全なトイレと世界中に(キーワード「安全な水」)

「安全な水」というキーワードは、極端にコメント数が減少します。
日本においては、トイレや水に関するインフラが整備されているため、問題意識がそれほど高くないことが原因でしょうか。
「安全な水」は「病気」「健康」「衛生」に関連する用語と結びつけられるケースが多くみられます。
取り組み事例としては、全世界への水と衛生環境の整備が代表的なものとして存在します。

7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに(キーワード「エネルギー」)

「エネルギー」というキーワードは、全世代で頻出のキーワードとなります。
しかしながら、「エネルギー=元気」という意味合いで使われるケースが多く、エネルギー問題について語られるケースはまだまだ稀です。
「エネルギー」という言葉をエネルギー問題として認識するためには、「クリーンエネルギー」「再生可能エネルギー」など、別の言葉を付加した状態で把握することが必要となります。
また、エネルギー問題は批判的なニュアンスでコメントするケースも多いことが特徴です。
取り組み事例としては、クリーンエネルギーの供給に関する事例などが存在します。

8.働きがいも経済成長も(キーワード「働きがい」)

「働きがい」というキーワードは、意外と利用されにくいキーワードのようです。また、年齢が上の世代が相対的に多用している結果が見られました。
日本においては、仕事の存在や内容よりも、労働条件や労働環境と働きがいを関連させて捉えるケースが存在することが特徴的です。
取り組み事例としても、自社の労働環境改善に関するものが多いと考えられます。

9.産業と技術改革の基盤をつくろう(キーワード「技術革新」)

「技術革新」については、日本国内の技術について語るケースが多いと考えられます。他国の名前が関連語として出現するケースもありますが、どちらかと言えば、日本の技術と比較する観点で使われているようです。
このテーマは、日本人にとって馴染みが強く、リサイクルの推進やイノベーションの喚起などの多様な事例が存在しています。また、世界に目を向けた例では、途上国のインフラ整備などの事例も見られます。

10.人や国の不平等をなくそう(キーワード「不平等」)

「不平等」については、日本では性別の不平等や貧富の差による不平等がコメントされる傾向が強いようです。
「世界」というキーワードも見られますが、世界の不平等を語るよりも、世界から見た日本の状況を語るケースが多いように感じられます。
取り組み事例としては、フェアトレードの推進がポイントと考えられ、先進国と生産国の情報連携が重要視されております。

11.住み続けられるまちづくりを(キーワード「まちづくり」)

「まちづくり」というキーワードは、まちの魅力をつくるという意味合いで使われることが多いようです。
20代、30代では、まちづくりの政策や条例などの大きな枠組みに関するワードが多く、40代、50代では、「まちづくりサークル」「まちなか農業」「公園」「自転車」などの、より具体的なワードも見られます。
取り組み事例としては、エネルギー効率化、介護サービス、保育サービス等の推進を掲げるケースが存在します。

12.つくる責任 つかう責任(キーワード「リサイクル」)

全世代において、「リサイクルショップ」についての話題の中で、「リサイクル」という言葉を用いるケースが突出して多くなっています。
特に若い世代においては、ゲームに関連したツイートに反応する傾向が非常に高いようです。
その他、リサイクル問題としては、プラスチックやペットボトルに対する意識が高いと見受けられます。
取り組み事例としては、様々な手法でリサイクルを推進する取り組み、食品ロスに関する取り組みを推進するケースが多く存在します。

13.気候変動に具体的な対策を(キーワード「気候変動」)

「気候変動」というキーワードは、全世代において関心が高く、気候変動を楽観視できないというトーンが感じられます。
年齢が上の世代においては、経済や株価との関連に関心を持つコメントが多く見られたことも、特徴の1つです。
取り組み事例としては、脱酸素を推進する技術の提供のほかに、公共交通の利用、徒歩や自転車の推進などが存在しています。

14.海の豊かさを守ろう(キーワード「海洋ごみ」)

「海洋ごみ」というキーワードは、全世代において出現数が非常に少なくなります。
少ないコメントの中でも、「プラスチック」や「発泡スチロール」等のワードを確認することができ、SDGsに関連する問題意識が強いコメントが存在することが特徴です。
取り組み事例としては、ビニール袋を削減しマイバックを使うなどの非常に身近な取り組みが多いようです。また、水産物に関連する認定を推進する取り組みが見られます。

15.陸の豊かさも守ろう(キーワード「生物多様性」)

生物多様性というキーワードからは、動植物の保護や環境に対する保全などの関連語が見られます。
森林破壊や砂漠化などの世界的な問題への危惧よりも、国内の自然を守りたいという気持ちが多く見られるように感じられます。
事例としては、緑化や環境保全区画の整備などが見られます。

16.平和と公正をすべての人に(キーワード「平和」)

「平和」というキーワードは、全世代において頻出のキーワードです。
この言葉は、日常の落ち着きを表す代名詞として使われるケースも多く見られます。
平和への関心は、原爆や終戦の日に関連して、8月に特に増加することが大きな特徴です。
この取り組みについては、NGO・NPO活動に対する支援が多いようです。

17.パートナーシップで目標を達成しよう(キーワード「グローバル」)

「グローバル」というキーワードは、全世代において、企業のグローバル化と非常に強く結びついて定着した言葉のようです。
ビジネスを連想させる関連語が多く、世界貢献というニュアンスを見つけることが非常に難しい用語です。
この取り組み事例としては、ODAに対する支援等がイメージし易いようです。グローバルで行うワーキングシェアや、特定の物品が不足している地域への物品供給などもこのテーマの事例として存在しています。

提言

第3回目では、SDGsが掲げる17個の目標に関連するキーワードに対して、SNS上ではどのような関心があるのかを考察しました。

キーワードの選定によっては、SDGsが求める目標イメージと大きく異なるケースも見られますが、SNS上の日常的な関心の多くは、日本の置かれている今の状況に着目したものであり、SDGsで議論されている世界レベルの問題とは、まだまだ大きく乖離しているものが多く存在しているようです。

本来のSDGsの目標達成のためには、我々の生活からは想像もできないような、世界的な問題にもっと関心を持つ必要があるのかもしれません。そのために、我々は必要となる情報をもっと参照し、本来のSDGsの目的を学ぶ必要があると感じることが出来ました。

一方で、企業や自治体が、一般の人々にSDGsの推進に強い関心を持ってもらうために、身近な問題や日本的な問題に関連した取組を展開している例も見られました。その他、日本企業の持つ技術を積極的にSDGsの取組に貢献させる事例も存在しています。

今回の分析を通じて、SDGsの取組に対しては、次のようなパターンを見出すことができると考えらえます。

  1. 身近な問題に対して対策を取るSDGs

  2. 世界レベルで起きている問題への関心を高めてもらうためのSDGs

  3. 自分たちのもつ「技術」を活用して貢献を図るSDGs

  4. 世界的なパートナーシップ、認定制度などの仕組みを通じたSDGs

「日本の置かれている問題」と「世界が抱える問題」には大きなギャップがあるようです。
しかしながら、「身近な問題に目を向けさせること」と「世界の問題に目を向けさせること」の2つの視点が日本におけるSDGsの浸透には必要なアプローチなのかもしれません。

⇒第4回 企業・学校・自治体のSDGs戦略への提言へ

このnoteをご覧になって、SDGsをやってみて直面したお困りごとを相談したい方、実際にSDGsに取り組む際の事例を知りたい方がいらっしゃいましたら、ぜひお問い合わせフォームから弊社までご連絡ください。

・株式会社Flexas Z Webサイト:https://flexas-z.com/

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