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東京のアートブックショップ flotsam booksです。

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マガジン

  • book review practice

    アートブックを中心としたブックレビューを若い書き手たちに書いてもらっています。新刊、古書問わずアートブックの面白さを知って頂けると嬉しいです。

  • NOTO TOO LATE

    編集者志望、写真やファッションが好きな青年、坂入純平による写真集レビュー。お仕事のご依頼は直接本人まで。

  • キラキラ症候群レビュー

    1996年生まれ 東京藝術大学大学院生 写真を研究しているLucy Fleming-Brownによる写真集レビュー。

  • breathe and breeze

    ハセベチカさんによる写真集レビューブログです。

  • 光るライオンのしっぽ

    flotsam booksでのブックレビューの新連載が始まりました!お店の本棚にある面白いけど誰もレビューしなさそうな本を不定期でレビューしていきます。気になる本があればぜひ店頭でめくってみてください〜 これからどうぞよろしくお願いいたします!!

最近の記事

flotsam zines tour 2024

今年もこの時期がやってきました。 応募フォーム 予定数に達したので一旦受付を停止しております。 flotsam books zine 販売会は2022年「TKO zines tour」という名称で東京、大阪、金沢を巡回し、2023年には仙台、名古屋、神戸、京都を追加し、8箇所を回るツアーとなりました。 2022年の様子はこちらで記事になりました。 企画皆さんのzineをflotsam booksで販売します。 6月上旬に東京flotsam books、その後、大阪、

    • #14 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。(2) One sunny afternoon, I lay down on the grass and read it.(2)

      Julian Klincewicz 『Solo Tumult』 文:井手 沙耶果/Sayaka Ide (English ver. is below) 一人芝居 / Monodrama わたしは演劇が好きだ。舞台上と客席それぞれの場所で生身の人間と人間が向き合った時に伝わる、誤魔化しようのない圧倒的な存在感を放つエネルギー。それは、画面上で映画やドラマを観ている時には決して体感することができない。しかしその一方で、舞台が苦手だとも感じる。なぜなら突然こみ上げる感情を理解

      • #13 1と無限

        Contact High Zine Issue 4: Into the Parallel 澤田雄斗 2024年のある日。 体に上下の揺れを感じると、同じ方向に向かっていたはずの車が逆を向いて隣を通過していった。 違和感を感じつつも先へ進むと、そこにはひび割れたコンクリートが辺りを埋め尽くしている。いつもと変わらない車内からはまるで別世界のような景色が見えた。 スタイリスト島田辰哉が中心となり、不定期で発行されるインディペンデントマガジン「Contact High Zine

        • #12 旅のおわり世界の始まりAcross the sea  草野庸子

          Across the sea by 草野庸子 秋田紀子/Noriko Akita  草野庸子の写真からどの写真も共通してあたたかい眼差しを感じる。人間に対してもモノに対しても。彩度はどの写真も低めで少し冷たい感じもするのだが、写真から滲み出てくる何かがあるので私も同じような眼差しで写真をみることができる。  光が差したロンドンの風景。見たことがない場所なのに懐かしい気持ちになる。写真に写してしまうと目の前にあるものでさえとても遠くに感じることがあるとある記事で彼女は語っ

        flotsam zines tour 2024

        マガジン

        • book review practice
          12本
        • NOTO TOO LATE
          9本
        • キラキラ症候群レビュー
          2本
        • breathe and breeze
          3本
        • 光るライオンのしっぽ
          1本
        • アル中の生え際
          1本

        記事

          #11 “MEN UNTITLED” Carolyn Drake

          MEN UNTITLED by Carolyn Drake 伊藤 明日香 もう一度、最初から始めよう。 いわゆるアート史をさかのぼると、最初から始めることは何度も試みられてきた。 そうでしょう?表現は繰り返され一般化された商品、例えばTシャツやあなたのスマホの壁紙、建設途中の敷地を覆う仮囲いに至るまで消費されるとそれを逆手に取ったり極端に身近なものになったり目に見えるものでは無くなったりバナナになったりして、その度に表現を試みるものは幾度も立ち返ってきた。そして、Caro

          #11 “MEN UNTITLED” Carolyn Drake

          #10 “CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH

          “CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH 伊藤 明日香 もう一度、最初から始めよう。 初めてみた海外の景色はなんだったろう。日本に産まれて育った自分には”海外”という言葉の感覚が染み付いている。最近ではなんだかそれに違和感を感じるようになったが、自分から離れることは未だ叶わない。 そういえば、内と外の概念とは一体いつ生まれたのだろう。知らぬ間に自分に植え着いた、外があるという感覚。その想起が私をここからどこかへと歩ませたくなるきっかけとなっているに違いな

          #10 “CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH

          #9 『INTO THE PARALLEL』CONTACT HIGH ZINE-4th Issue:「bad experiences」から広がる並行世界

           スタイリスト島田辰哉氏、アートディレクターYOSHIROTTEN氏、写真家山谷佑介氏の3名が中心となり、2015年9月にローンチされた日本発のインディペンデントマガジン「CONTACT HIGH ZINE」の4th Issue「INTO THE PARALLEL」。 2018年から2020年にかけての「bad experiences」を埋めるために「INTO THE PARALLEL」は制作された。テーマはパラレルワールド。複数の並行世界の分岐点を模索するため解読不能な文字

          #9 『INTO THE PARALLEL』CONTACT HIGH ZINE-4th Issue:「bad experiences」から広がる並行世界

          #8 The First 10 Years of Needles & Pens

          The First 10 Years of Needles & Pens 光咲 階層も年齢も国籍も違う人が、好きなことが同じという理由で自然と集まることは素晴らしいことだ。大人になればなるほど、育ってきた環境やルーツが違い、新しく出会う人との交流関係を築きにくくなると個人的には思う。しかしながら、心が惹かれるような好きなものが共通だと気付いたとき、もう既にそこには、昼の星のように不可視な関係が始まっているのではないだろうか。 そんな空間を作り上げている場所がカルフォルニア

          #8 The First 10 Years of Needles & Pens

          #7 狭間にある主観

          小山田孝司: なにがみてるゆめ 澤田雄斗 「ファッション関連で何かオススメの本はないですか?」 デザインも絵画も写真も分からない青年が店主に聞いている。 隣には普段からストリートで写真を撮っているという女性が一人、すでに何かの本を手にしていた。 「うーんそれならこの辺かなー」 そういって何冊かの本が手前に並ぶ。 有名ブランドや知らないスタイリストの写真集・・・ 「何冊か読んで好きなの持っていきなよ」 そして3冊目に手にしたのが、広辞苑くらい分厚い空色の本だった。 しかし広辞

          #7 狭間にある主観

          #6 Universal, Under Exposure Journal

          Yuri Shibuya: Universal, Under Exposure Journal 伊藤 明日香 もう一度、最初から始めよう。 初めて買った写真集のことを思い出してみる。 写真作家の作品集、参考書、展示会のブックレット、図録、ZINE、当時は好きだったアイドルのものから、なんで買ったのかわかんないけどそれがないと誰かと馴染めなかった本まで、なんでも。 私が最初にお金を出して買えたのはZINEだった。たしか¥1,000くらいしたのだが、¥100マックでお腹を満た

          #6 Universal, Under Exposure Journal

          #5 山本昌男: くらやみ

          山本昌男:くらやみ 中根健太  日本人写真家・山本昌男と音楽家・内田輝による写真と音楽の対話から生まれた写真集。この2名がコラボレーションをするのは2020年の『sasanami』に続き2回目である。本書はiikki booksというフランスの出版社から出版されており、写真集のほかに音楽家が作曲したレコードも同時に販売している。 山本昌男の写真には人間が先天的に持っている自然への敬意、崇高、五感を揺さぶるものが写り込む。普段から先端的なものに触れていると忘れがちだが、身の

          #5 山本昌男: くらやみ

          #4 シンキング・アバウト・ユー

          アンダース・エドストローム写真集: ANDERS EDSTROM: SPIDERNETS PLACES A CREW / WAITING SOME BIRDS A BUS A WOMAN 横田陸  スウェーデン・フロソ出身の写真家、アンダース・エドストロームによる、2004年に出版された写真集。 出版社は、高品質のアートブックを作り上げることで有名な「Steidl Mack」(イギリスの会社「MACK」の前身)だ。 アンダースは、1990年にパリへ移住し、そこからファッショ

          #4 シンキング・アバウト・ユー

          #3 「未だ触れぬ未知、隔たりの優しさについて」

          Batia Suter 『Exosphere 』書評  犬童アツヤ/Atsuya Indo 昨日はたまごサンドのことを考えていたらどうにも食欲を我慢できず、夜中にせこせこ朝ごはんにあてがうために作り始めてしまった。 辺見庸は『ゆで卵』という小説のなかでゆで卵を食べる擬音語に「ぽくぽく」をあてがっていたけど、なかなかしっくりくる音だなあと思いながらゆで卵をフォークで潰しマヨネーズや黒胡椒、少し甘いしんなりした玉ねぎと和える。隠し味にお酢を垂らすことも忘れない。 さてこの書評を

          #3 「未だ触れぬ未知、隔たりの優しさについて」

          NOT TOO LATE #9: なにがみてるゆめ

          文:Jumpei Sakairi 小山田孝司 作品集: なにがみてるゆめ  スタイリストの小山田孝司さんは2023年8月、出版社のDogYearsから写真集「なにがみてるゆめ」を発売した。2020年1月〜2023年5月にかけて、22名の写真家が小山田さんの友人・知人である287名を撮影した。ロケーションは被写体の生活する地域など。その日の服装に、小山田さんのアイテムを足した姿を写した。  この写真集は、国内の雑誌を中心とした「物撮り」的なファッションの写真に対するアンチテ

          NOT TOO LATE #9: なにがみてるゆめ

          #2 鮮やかな美しさ、危険な魅力の中に潜む怒り

          Petra Collins『Discharge』文: 秋田紀子/Noriko Akita ニューウェーブフェミニズムの発信者の一人としても知られている Petra Collins(ペトラ・コリンズ)はアート、ファッション、フィルム、音楽、文化など幅広い分野を通して独自の世界観を発信するマルチタレントアーティスト。幅広い分野で引っ張りだこな彼女の初の写真集『Discharge』(2014) この本を数ページめくって思ったこと    「映画だ。」      テキストと余白、カ

          #2 鮮やかな美しさ、危険な魅力の中に潜む怒り

          #1 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。

          Hanayo 『Keep an Eye Shut』文:井手 沙耶果/Sayaka Ide (English ver. is below) 「目、閉じて」。 誰かにそう言われると、これから一体何が起こるんだという不安に襲われはしないだろうか。たとえそれが信頼している人であったとしても、無意識のうちに用心してしまう。急に視界が閉ざされるということは、人の潜在的な恐れを強く喚起する。 「目、開けていいよ」。 束の間の不安を一瞬で吹き飛ばすこの言葉。目を開けた視線の先に、花代の『K

          #1 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。