海外への本社移転について
株式会社フラクトライト代表の中川優志(@ugnk93)です。株式会社フラクトライトは、生成AIで広告マーケティングの切り口で新事業を立ち上げている会社です。
noteでは、弊社のことがちょっと気になる人達へ向けて、事業やこれまでやってきたこと、今後取り組んでいくことについてご紹介します。
前回の記事はこちら
今回は、第6回 海外への法人移転について です。
前回の投稿では、生成AI×キャラ領域で、事業機会や事業を立ち上げる上での課題、について紹介しました。本記事では、米国と日本に拠点をおく弊社がなぜ2拠点で活動しているのかをご紹介したいと思います。
法人移転の経緯と流れ
設立当初に検討したこと:シンガポールor日本or米国
まず生成AI関連で事業立ち上げを行うことを決めてから、法人をシンガポール、日本、米国、のどこで作るか考えました。IPO(EXIT)を前提にして投資家からお金を集めていくにあたり、各国のファイナンスに詳しい人に相談したところ、シンガポールの取引所は流動性が低いので、日本か米国の2択だろうという話になりました。米国での事業立ち上げのリサーチはかなりやっていたので、米国でスタートするのは資金力の問題を解決するのに手間取るだろうと思っていました。また日本では、競争が激しくなりそうだと思いい、早期に動きたかったので日本法人で開始しました。将来的に海外移転する可能性を見据えて、資本金10万円(1円×10万株)で登記し、J-KISSで資金調達しました。当時は日本の強みのある領域で日本で課題解決しながら世界展開していくストーリーを考えていました。
広告事業への転換とともに米国法人移転手続きを開始
当初のサービスは事業立ち上げに時間がかかる or お金がかかりプレシードで調達するのは困難だと思い、裏側で構築していた機能を切り出して、広告関連の事業を立ち上げていくことにしました。米国でまだ参入している企業がいなかったこと、米国ベイエリアに見込み顧客が多いこと、winner takes all の市場で世界シェアを取りに行く必要があること、から米国法人を設立することにしました。米国デラウェア州に登記してカリフォルニア州に法人登録しました。
また、米国を主戦場として事業拡大するにあたり、現地の資金調達を行うために米国法人を親会社として日本法人を100%子会社化する手続き(インバージョン)を行いました。この親会社を海外にするインバージョンの手続きは、企業価値が上がった後でやってしまうとかなりの税金がかかるので、事業を米国や各国でやるんだという覚悟と、今しかないということでやりました。
このような流れで現在は、米国法人 fluctlight inc.(デラウェア州登記、カリフォルニア州登録)とその100%子会社として株式会社フラクトライト(東京都港区)の2拠点で事業運営しています。
学んだことや反省点
資金調達と法人設立を別の方法があったかも
通常の事業立ち上げと比べて、2023年の時点で生成AIでまともな事業を立ち上げようとすると、思ってる以上に時間がかかるため、まずは法人設立せずに個人プロジェクトとして進めて、資金調達をレンディングのような形でやっておいて、法人化の際に調整する、というような方法を模索したほうが余計なコストがかからなかったかもしれないです。
あるいは、米国なりシンガポールで最初から法人登記してしまい、必要であれば日本法人を登記する、という形がよかったと思います。
日本での手続きは全部時間がかかる
エンジェル税制
日本では役所が絡むと手続きにとても時間がかかります。最初、エンジェル投資家から資金調達しました。このときに、J-KISSを解剖しましたが難しかったので、普通株式がシンプルだと思い、エンジェル税制を使った普通株式による調達も検討しましたが結果辞めました。
エンジェル税制は改正が行われており、当時、改正後の具体的な内容を役所の担当部署に聞いても、まだ経産省から情報が降りてきてないのでなんとも言えません、2−3ヶ月したら情報が来るかもしれないがいつ情報が来るかは断言できませんということでした。役所としては当然の対応といえますが、起業する立場としては、プレシードでエンジェルから資金調達するうえで、資金調達プロセスに役所からの回答待ち期間2−3ヶ月が組み込まれるのはナンセンスだったので辞めました。
また、初年度に売上や利益が上がると企業要件から外れるということで、事前に投資家と合意したにも関わらず企業の進捗状況によって適用可否が変わるのはおかしくてリスクでもあるので、この点も難しかったです。資本政策の一部を役所任せにするというリスクをとる理由はありませんでした。
また、法人登記、取締役の変更、新株発行、資金調達、など、登記簿の変更や会社法上の手続きが大量にあり、どれも言われるがままに処理したり、適当に判断することはできないので、よく調べて意見を聞いて判断をしていきましたが、手続きに時間がかかりました。当たり前のことのようなのですが、アメリカだと全部驚くほど楽なので、障害物競走で自分だけ障害物が10倍の量あるような感覚になります。
生成AIの領域では弁護士コストがかかる
日本で未開拓の領域でスタートアップをする最大のリスクは、政府による規制リスクだと思っています。過去にも、UBER、Airbnb、仮想通貨、WEB3、ドローン、ライドシェア、など新領域は規制されて市場が消滅or過激に縮小するケース、規制から広げていかないといけないケースがありました。また見せしめに逮捕されたり、政治的な結びつきのつよい団体からの圧力があったり、摘発されたりなど。このようなリスクを避けるために弁護士への相談をこまめに行なってきましたが、かなりお金がかかりました。
この観点もあり、エンジェル〜プレシードの段階で弁護士コストをかけるのはナンセンスな一方で著作権等や法規制のリスクが避けられないので、個人ベースで自由に試行錯誤・方向転換してやっていき、売上が伸びてきたら資金調達したり法律周りを確認したりする流れがスムーズだなと感じました。
インバージョン手続きは時間がかかる
日本法人から米国法人に親会社を移転する手続き(インバージョン)を行いましたが、とても時間がかかりました(正確にはまだ一部手続きが残っています)2023年10月に依頼して2024年2月末時点で95%完了くらいの感じで、こんなに時間かかるものかと当初の想定外でした。
この期間中、日本法人の資本・資産を動かせなかったり、米国法人から新株発行することができなかったので、色々な方にご迷惑をおかけしました。
米国はやっぱりお金がかかる
日米の物価差や為替差が話題になって久しいですが、個人の消費レベルでなく事業運営レベルとなるともっと高くなります。自身の生活だけでなく、採用、営業活動、現地パートナーへの支払い等、それなりに資金力が必要になります。この日米の基本的なコスト差に加えて、米国での資金調達のバリュエーション&調達額水準と、日本での水準が異なっていて、投資環境の差を、日本から米国へ投資してもらう人達には理解してもらわないといけないので、これもまたコストがかかります。ただ一方で、日本を開発BPO拠点と考えればコスト優位性があったりもします。
おわりに
というような形で、苦労したり課題だったり反省点ばかりだったかもしれません。前回記事で共有した観点も踏まえると、日本だと生成AI領域では個人プロジェクトから始める創業形態が最もスマートな気がしています。
また海外展開の観点では、日本→米国で事業を成功させるのは難しいといわれますが、米国→日本で事業を成功させるのも難しいと思っています。Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft といった世界的に大成功した超メガサービスをのぞいたら、米国でIPOしたりユニコーンと言われているベンチャー企業のうち、どれだけの数が日本で成功しているかというと、ほとんどありません。日本から世界へ目指すベンチャーがいても投資家が少ないのは当たり前だし、逆に米国から日本で事業をやりたいといっても出資してくれる投資家は少ないです。
昨今、日本から世界へ!日本は世界で戦わなければならない!日本を底上げ、のようなお題目が叫ばれて久しいですが、そんなものほっておいて、自分がやりたいこと、実現したいことに熱中して取り組むことが重要だと思います。そうやって自身の熱中できることに取り組んで突き進んでいれば、おのずと世界への道は開けていくのではないでしょうか。
今回は、米国へ本社移転した経緯についてご共有しました。
今後は下記のようなテーマで記事を公開していきます。できるだけ具体的に有益な情報を共有できるようにまとめますので、ぜひX(旧ツイッター)をフォローしてウォッチしてください!
次回は、「現在の事業内容について」
いまやっている事業について簡単にご紹介したいと思います。
現在フラクトライト社では、生成AI×広告マーケティングの領域で事業をやっています。興味のある方はご連絡ください。(X(旧Twitter)、Facebook、LinkedIn)
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