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04 バルセロナの住宅事情

 スペインで3ヶ月以上の住むには、法的にはNIEが必要であることは述べた。しかしNIEを持っていたとしても、バルセロナでは物理的に住むのは大変な状況にある。というのもバルセロナの地価は僕の予想以上にこの数年で高騰していたからだ。
 僕はこちらへ来る前に住む場所を確保してこなかったのだが、来てみてからいかに条件が良い場所を見つけるのが困難かを思い知らされた。具体的な家探しのプロセスの前に、なぜ大変な状況にあるのかの背景を少し見てみたい。

 よく知られているように、スペインでは長くフランコによる独裁政権が続いていた。しかしその独裁が終わり、EUへ加盟した1986年以降に、スペインの経済成長は本格的に始まったと言える。1992年のオリンピックを経て、90年代後半からは特に不動産価格が上がり、建設産業も好調だった。大きな原因は内需だが、GDPの成長率も3%以上であり2003年は対前年度比で20%を超えたらしい。

 しかし2007年のリーマンショックで一気に不動産バブルが崩壊した。その後に金融機関の不良債権が大幅に上がった結果、2012年に深刻な経済危機に陥る。その当時の失業率は、25%近くの570万人になったという。そのうちの若者の失業者は50%を超える事態となった。
 EU圏内の他の国々との失業率を比較してみるとグラフのようになる。
(「世界経済のネタ帳」より)

 失業率が上がる原因はいくつかある。バブル崩壊を契機とした2012年の経済危機はその要因の一つだが、それだけではない。一度雇うと簡単には解雇できないスペインの雇用制度のせいもある。それに加えて国の一割を占めるような膨大な移民も職を奪っていることの要因の一つになっている。
 だから経済の回復がそのまま雇用につながるとは限らない状況もあるのだ。ちなみにスペインのGDPの伸びを見るとこんなこんな感じだ。

 2013年が失業率のピークであるが、この年からは経済は回復している。
経済規模としてはEU圏内で第5位(GDP:1兆4100億ドル)、世界では第13位にランクインしている。
 2014年からは不動産価格も上昇し続け、2015年のヨーロッパの不動産投資対象国で最も人気があったのがスペインであったと、世界的に有名なイギリスの大手不動産会社のナイトフランク社は報告している。
 中でも2015年上半期のスペインでも最も高い地価の都市がバルセロナである。バルセロナはスペインの中でも不動産市場をリードしており、住宅価格が前年比で7.9%も上昇しているということのようだ。
 特にバケーションシーズンにあたる6月から9月にかけては以上なぐらい価格が急騰する。それは不動産物件というよりも、それを運用する賃貸価格へと反映されるのだ。
 バケーション賃貸の急騰ぶりはおそろしい。バルセロナのビーチ・観光地に近い1ベッドルームで、通常は「一ヶ月」で1000ユーロ前後の部屋があるとする。それがバケーションシーズンには、「一週間」で1000ユーロで貸し出すということもありうる。実に4倍〜5倍の価格で取引されることになる。

 この地価が高騰している原因の一つに最近特に目立つのが、過度な「観光化」である。バルセロナは市民の数が約160万人にも関わらず、約3200万人の観光客が年間に訪れている。だからマンションの多くが観光客用に部屋を提供するようになり、一般用の賃貸が不足しているという事態が起こっているのだ。
 例えば観光の中心地である旧市街地から少し外れた場所にあるポブレ・ノウ地区には7万人が住んでいる。しかしこの地区のホテルのベッド数は2万台という数字が上がっている。またその隣のグラシア地区では観光客用に提供しているマンションが1万5000個もある。そうやって観光客に提供する部屋があることは、一般向けの賃貸料の上昇につながる。2015年には賃料を23%も引き上げるマンションもあったという。
 その事態に対して、現職のバルセロナ市のコラウ市長は観光客の宿泊を目的としたマンションの固定資産税を引き上げると同時に、B&Bへの規制も強化、年間に貸し出せる部屋も制限するという方針を、2017年の3月には打ち出している。(以上、東洋経済ONLINEより)

 僕はそのような状況下で部屋を探さねばならないことになっていた。条件が良い場所を見つけるのはいかに難しいかが理解できるだろう。そのような事情をまるで下調べもせずに、バルセロナに着く前に一ヶ月の部屋を確保してきただけだった。
 ここから大変な家探しが始まるとは思いもしなかった。

20170415

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