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新しい生分解性プラスチックの開発

Israeli Scientists Have Created A Biodegradable Plastic That Just Might Save The Planet
Dominik Döhler - ZAVIT
January 18, 2019iStock

「イスラエルの科学者たちが地球を救う可能性のある生分解性プラスチックを作りだした」

 プラスチックの生産は過去最高を記録し続けており、それに伴う汚染は、人類がこれまで地球に及ぼしてきた中で最も破壊的な力の 1つかもしれない。企業や研究者たちは、絶えず増え続ける問題を最終的に終わらせる代替手段を切望して探している。
 そのような中、イスラエルの科学者たちが有害な作用のないプラスチックを製造する方法を見出した。この画期的な発見のキーは、藻類の消化により天然のバイオポリマーを生産するという単細胞微生物(古細菌)の独自の性質にある。
 単細胞微生物の性質を利用して生分解プラスチックを作るというアイデアは、新しいものではなく、多くの企業がすでに植物や高分子産生細菌から生分解性材料を製造するビジネスを行っている。
 しかし、それらの大部分にはひとつの共通点がある。それは、この方法は、非常に多くの淡水、あるいは、多くの土地を必要とするのだ。
 ところが、今回のイスラエルの研究者たちによって用いられた微生物はこれに当てはまらないのだ。というのも、この微生物は、死海から隔離されたものであるため、塩分の高い状態でも生き残ることができるからだ。つまり、海洋で用いることができるのだ。
 イスラエル・テルアビブ大学環境学部の科学者たちは、海水中で成長した藻類をその微生物に与えた後に、微生物によるバイオポリマーの生産能力を初めて認識した。
 テルアビブ大学環境学部のアレクサンダー・ゴルバーグ博士(Dr. Alexander Golberg)は以下のように言う。
「この研究の革新的な特徴は、プラスチックポリマーを派生させる古細菌が、海水で生産した海藻を餌にしたということです。これらから作られるポリマーが将来のプラスチック生産の一部あるいは完全にすべてこれに替わる際にも、多くの淡水や土地は必要ないと思われます」
「石油などの化石燃料ではないもので作られているポリマーはすでにたくさん存在しますが、それらの製造プロセスを見ると、大量の淡水と広大な土地が必要であることがわかります」

自然は生分解性と同じではない

 現在、研究者たちは、これよりもさらに最も適した藻類とそれに対応する微生物を探している。
ゴルバーグ博士は、このように言う。
「現在、私たちはさまざまな藻類をさまざまな微生物と共に試験しています。なぜなら、すべての種が異なるポリマーを産生するからです。究極的には、個々の特性を持つ複数の種類のポリマーのライブラリを持つことが重要です」
 これが意味するところは、たとえば、ペットボトルなどのプラスチック製品はさまざまな種類のプラスチックからできているということがある。キャップとボトルとラベルは違う種類のプラスチックだ。
 この環境に優しい製品の実用性に関する重要な問題は生分解性の問題であり、一番の問題は、この製品が実際にどれだけ生分解性を有するかということだ。
 今日の生分解性についての最も一般的な定義は、「 6か月以内に物質が標準的な堆肥の状態に分解されれば、その物質は生分解性を示す」となっている。
 ゴルバーグ博士と研究チームによってテストされたポリマーは、製造から 2ヵ月から 4ヵ月以内に分解される。
 したがって、この新しいプラスチック製品は、生分解性の定義を満たしているが、しかし、実際には、海で何が起こるのか予測するのは難しい部分はある。
 陸上で管理された堆肥環境は、海洋環境とはまったく異なるため、ポリマーが水中でどのように反応するかについて、確実なことは言えない。このことについては、ゴルバーグ博士も認めている。
 さらに、特定の物質が何に分類されるかを正確に考慮することが重要だ。ポリマーが生分解するという事実は、それが単に消えることを意味するのではない。

博士は以下のように述べている。
 「仮に、ポリマーが CO2 に分解するなら、それは私たちにとって完璧です。 CO2の量がかなり少なくなるからです」
 「しかし、もし、物質がいくつかの中間分子に分解された場合、それらは検出するには小さすぎるものですが、それでも他の分子と反応する可能性があり、その場合は、私たちは問題に直面するかもしれません」
 「したがって、徹底的な調査を行い、すべての可能性のある結果を検討することが重要です」

長期的にはより安価になる

 プラスチックは、これまで市場に投入されてきた中で最も社会に遍在する材料の 1つだ。その理由は、使用の点で信じられないほど用途が広いだけでなく、プラスチックはその製造において非常に安価であるため、今までのところは広範囲の異なる製品にとって、プラスチックは最も便利な選択肢となっている。その理由は、使用の点で信じられないほど用途が広いだけでなく、プラスチックはその製造において非常に安価であるため、今までのところは広範囲の異なる製品にとって、プラスチックは最も便利な選択肢となっている。
 したがって、現状のプラスチックの代替物質は、用途が広く、そして大量生産が可能であり、何より安価に製造できるという条件を満たしていなければ、普及にはつながらないと考えられる。
 優れたプラスチックの代替物が出たとしても、大量生産ができなかったり、製造コストが高価なものとなるのならば、それが従来のプラスチックを超えて普及するという可能性はないだろう。
 しかし、ゴルバーグ博士は、石油由来の従来のプラスチックは、その環境の損傷についての長期的なコストを考えると、すでに非常に「高くつく」ものとなっていると主張する。
 「従来のプラスチックと生分解性プラスチックの経済性を単純に比較することは非常に困難です」と博士は述べる。
 大量生産性に関しては、プロセスに必要な微生物が藻類のように海水中で成長するため、研究者たちは大規模なポリマー生産は実現可能であると確信している。
 博士によると、このプロセスは高価なバイオ施設を備えた閉鎖型工場などを必要としないものであり、大規模な海中農場で行うことができるという。藻類を長距離輸送する必要はなく、乾燥の危険性も回避されるために、海洋農場の近くの水上のボートあるいはリグ上に処理施設を配置することもできる。

また、海藻農場は実際に環境への良い影響を与える可能性もある。
多くの場合、農業用水や産業排水から生じる過剰な栄養素が海洋環境に害を及ぼしており、それは、「デッドゾーン」(水生生物が存在しない海域)の出現を頻繁に引き起こしている。
 海藻農場を栄養素汚染の被害を受けている場所、あるいは海洋のデッドゾーンに建設することによって、成長している藻は水から過剰な栄養素を除去する能力を持っているため、それによって汚染を除去することができる可能性がある。
 デッドゾーンが微生物が住める環境に戻れば、魚や他の生物も同様に戻ってきて、藻を食べ始める。
 しかし、それでも、たとえ非常によく意図されて進められたとしても、自然に介入するということには、必然的にいくつかの有害な環境への影響を現出させる可能性はある。
 ゴルバーグ博士は、当面の目標は、この微生物によるポリマー生産の大量生産性を実証することだと述べている。
 「私たちのこの研究の主な目的は、これらが科学的、工学的な観点から可能であることを示すことでしたが、すぐに大規模生産につなげようとは考えていません。一歩ずつ研究を進めていくつもりです」

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