“ゲームの力で世界を変える一歩を” 感動を紡ぐシリアスゲーム開発者 後藤誠さん

ゲーム業界29年。誰かを喜ばせることを最高の生きがいとする後藤さんに、ゲームの可能性とそこから広がる未来への熱い想いをお伺いしました。

 プロフィール
お名前:後藤誠(ごとうまこと)
出身地:宮城県栗原市
活動地域:東京をメインにボーダレス
経歴:小学校6年でプログラミングに魅了され、中学・高校とゲームとプログラミングの日々を送る。当時からの意志を貫き、ゲーム開発を生業として取り組む中で”シリアスゲーム”と出会い、満を持して2018年1月独立。
現在の職業および活動:株式会社ゲーム・フォー・イット 代表取締役社長
CEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)運営委員
IGDA Japan:SIG-For Next Generation 副世話人
2018年2月 ソーシャルビジネスグランプリ ファイナリスト選出
2018年10月 公益財団法人 丸和育志会より優秀プロジェクト賞受賞

「ゲームの可能性を広げたいっ」
Q1:シリアスゲームとは、どのようなものですか?

後藤 ゲームというと、遊びやエンターテインメント的なイメージが強いと思うのですが、シリアスゲームとは、社会の諸問題の解決を主な目的としたコンピュータゲームのジャンルです。

記者 具体的にはどのように使われているのですか?
後藤 海外ではシリアスゲームが様々な分野で活用されています。特にオランダはシリアスゲーム(※1)の認知度が高く、様々な分野に向けた開発や利用が盛んな国の1つです。オランダのユトレヒトにあるメディカルセンターでは、病院で発生する様々な問題に対応するためにゲームが活用されていて、その制作を行う部署もあると聞いています。例えば、「MRI検査で子どもが動かないようにさせるためのゲーム」というのもあるそうです。

MRI検査では、検査機器の狭い筒の中で動かないようにする必要がありす。子どもによっては恐怖を感じ、じっとすることが難しい子も少なくありません。そこで事前に心の準備をさせるためにゲームが使われているとのことです。
ゲームは、プレイヤーがローラーコースターをコインを取りながら進むというもの。コースの途中に、入り口が花で飾られたライオンのようなデザインになっているトンネルがあって、そのトンネルを通るときは「動いては行けない」というルールで、動かないようにすると高得点が入るようになっているそうです。検査の当日子どもが検査室へ行くと、MRIの機器にゲームに出てきたトンネルと同じライオンのデザインが施されていて、子どもはそれを見て、「あ!ゲームと同じだ!」と気づく。すると、検査中じっとするようになって、検査が終わってMRIから出てきたときには看護師たちから拍手で「おめでとう」「頑張ったね!」と迎えられると聞きました。 

想像すると、感動的ですよねっ。苦痛な検査が苦痛ではなく、むしろ楽しくて心が満たされるものになるなんて、夢がありますし、すごいなと思います。ゲームの力ってすごいなって。

ゲームは遊びだけではなく様々な可能性を持っていて、それを自分は広げたいんです。

「世界を変える一歩になるゲームを創りたい!!」
Q2:シリアスゲームの開発に携わるようになったきっかけを教えてください。

後藤 中学・高校のときですが、認知症の祖母を介護した経験があります。両親が共働きでしたので、食事もそうですし、おむつ交換やお風呂にいれたりもしました。人が老いるということを身をもって感じて、そこから、何か役に立つことをしたいという思いが芽生えました。
ですが、当時ハマっていたゲームを通して得た「感動」が忘れられず、自分もそのようなゲームを「作りたい」多くの人に「伝えたい」という気持ちがから、独学で学んだプログラミングでゲーム開発の道に進み、忙しい日々を過ごしていました。

36歳位の頃、ちょうど今から10数年前ですが、CEDEC(※2)というカンファレンスで、東京大学の藤本徹先生による「シリアスゲーム」のセッションがあって、海外では、ゲームが医療や、教育、介護、軍事、社会変革など様々な分野に活用されていて、ゲームについての研究も盛んに行われているという内容に、衝撃を受けました。
祖母の介護を通じて感じていた「役に立ちたい」という思いと「ゲーム開発」への思いが重なり、雷に打たれたような大きな感動が全身を駆け巡りました。正に点と点が繋がったイメージです。自分がやってきたゲーム開発を通して、誰かの役に立てられる分野があるんだ!と。その後、藤本先生にそんな思いを伝えたくてメールをしたのを覚えています。

そしてさらに、2016年サンフランシスコで開催されたGDC(※3)という世界最大のゲーム系カンファレンスで、衝撃的なセッションに出会いました。
それは「YOUR GAMES WILL CHANGE THE WORLD! IT'S YOUR CHOICE HOW」というセッションで、「We are Chicago」というゲームを通して、多くのゲーム開発者へゲームを通した社会的変化の一歩を訴えたものでした。このゲームはシカゴの南部を舞台としたアドベンチャーゲームで、ゲーム内に出てくるエピソードは全て実話を元にしているというのが特長です。差別や暴力、ギャング、ドラッグが当たり前という環境で子どもたちが生活をしている、それをゲーム内のエピソードを通して擬似体験することで、社会的な問題について考えさせるゲームとなっています。

このゲームの開発者が発した「われわれゲーム会社一人ひとりがこういったゲームを作って広げることで、世界を変えられる一歩になる」というメッセージに、感動して、胸がいっぱいになって、泣いてしまいました。
自分もしたい。自分も世界を変える一歩になるゲームを作りたい!!と思いました。

記者 世界を変えたいと思われたのですね。
後藤 はい。この動き自体は小さいかもしれないし、毎日何千とでるゲームの1個かもしれないけれど、1個が100個になり1000個になっていけば、触れる人も多くなって、差別の問題や社会の問題を考え改善しようという一歩が広まっていくだろうなと思います!

「どんな困難も自らの力で乗り越えられる未来を」
Q3:後藤さんの夢をお聞かせいただけますか?

後藤 私が描いている未来は、一人ひとりが自らの力でどんな困難も乗り越えられる世界です。
当然いろいろな方の助けはあっていいのですが、例えば、いろいろな災害や危険で実際にはなかなかできない訓練、自殺を考えてしまうような困難なことも、事前に疑似体験をすることによって、乗り越えられる困難に変わると思っています。
世界中の困難、ごみ問題、飢餓問題、食料問題も、自分に痛みがないと他人ごとになってしまいませんか?
それを、まさに今その場にいるようなゲームで自分の体験として感じることができたら、変わると思うんですよね。

ゲームには、人を動かす力、モチベーションをあげる力があります。ただ単に何かを訓練する、学ぶということだけではなく、遊び感覚でのめり込めてしまいます。その力はすごいなと。
私一人では無理で、専門家やいろいろな方と繋がって共に作っていきたいと思っています。

現在、自分の会社の第1本目として、生活習慣病の予防をテーマとしたゲームの開発を進めています。2018年10月に公益財団法人 丸和育志会様から、この事業計画について優秀プロジェクト賞をいただきました。

記者 ニーズがあるということですね
後藤 賞をいただけたこと、自分の活動に理解をしてくれる人がいたということが本当に嬉しかったです。

「人間が人間としてどうあるべきか」
Q4:AIが活躍する時代に求められるニーズとは何だと思いますか?

後藤 AIは、今のスマホと同じくらい生活に溶けていくでしょう。おそらく、車などの交通機関や電信機器すべてにAIが入っていくと思います。
昔、JRに切符を切る駅員さんがいましたが、それが自動改札に変わったからといって、駅員さんの尊厳が失われるということはないですよね。人間がしなくてもいいことをAIがしてくれて、しかも、人間以上にいい仕事をするようなる…。
そうなると、人間は本当にするべき生産的な活動に集中できるので、働き方も変わってくるのではないかと思います。人間がAIに頼り切ってしまうという問題が出てくる懸念もあるので、人間は人間で、もっと進化することが求められるのではないかと思います。
人間が人間としてどうあるべきか、ということが問われてくるのではないでしょうか。

記者 人間にしかできないこととは、どのようなことだと思いますか?

後藤 人間にとって大切なことは、結局、思い出や家族、友情であったり、人と人との繋がりで、あとは全部二次的なものなのではないかと思います。AIの登場によって、本当の意味でそこに集中できる時代になると思っています。

そこから生み出されるものは、次の人の教育であったり、未知の探索であったり、人と人が繋がって創り上げる物語でしょうか。そんなアートな部分というのが人間がするべきことかなと思います。

「自らが困難を乗り越えていける世界を創りたい」
Q5:どんな美しい時代を創っていきたいですか?

後藤 そうですね。私はやはり、差別もいじめも社会問題もない時代にしたいです。おそらく、ないといってもあるでしょう。いろいろな人がいるので。ですが、あったとしても乗り越えていける世界にしたいです。
一人ひとりが輝いていて、馬鹿にする人もいなくて、差別もなくて、どんな災害が起きてもみんなが助けてくれて、自らも乗り越えていける、そうなったら、すごく美しい世界だなと思います。

あとやはり、感動、ですね。
ゲームを作っていて、感動って、すべての根源だとつくづく思うのです。
感動も創っていきたいです!

「自分のストーリーを発信しましょう!」
Q6:読者にメッセージをいただけますか?

後藤 「自分のストーリーを発信しましょう!」と伝えたいですね。
その人にしかないストーリー・物語が必ずあって、そこに他の人からみたときに気づきや感動があります。それは、世界が共有すべき物語だなって、思います。
気づかないんですよ、自分では。自分が生まれた環境や自分の行動は自分では当たり前で、でもそこで一所懸命生きている姿は、他の人からみると、気づきや感動に溢れていたりします。
発信することによって、感動した人が次の感動を創って、また感動を創って、その感動の連鎖が世界中に広がるような気がするんです。

ゲーム作りもそれに近くて、ゲーム会社でゲームを作っている人は、子どものときに遊んだゲームで感動して、いつかこんなゲームを作りたいと思って携わっています。
今遊んでいる子どもたちも、遊んでいるゲームに感動していつかこんなゲームを作りたい、こんなキャラクターやストーリーを作りたいと思って、ゲーム業界を目指しているわけですよね。
ゲームだけではなくてすべてにおいて、例えば、すし職人もそうですし、大工もそう。いろいろなところに感動があって、いつかそれを自分もしたいと思って、目指して、そこにまた感動が生まれます。
そういう感動のストーリーが、一人ひとりの中にあると思っています。

記者 一人ひとりの感動のストーリー、素敵ですねっ。今日は、ありがとうございました!

※1 オランダでは、シリアスゲームはアプライドゲーム(Applied Game)と呼ばれている
※2 CEDEC:Computer Entertainment Developers Conference
https://cedec.cesa.or.jp/ 
※3 GDC:Game Developpers Conference
https://www.gdconf.com/ 

**********************************後藤誠さんの情報はこちら↓↓

◼︎Face Book

https://www.facebook.com/makoto.goto.sesame

◼︎株式会社ゲーム・フォー・イット


【編集後記】
今回、インタビューを担当した、石塚、見並です。
後藤さんから発せられる一つ一つのメッセージに、人の尊厳を大事にされていることを感じ、心動かされました。
世界を変えるゲームの可能性も、すごく感じました。後藤さんのますますのご活躍を願い、応援し、楽しみにしています。
素敵なお話をありがとうございました!!

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。

https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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ishizuka

リライズ・ニュース

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