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Master CFIはO1ビザへの登竜門だ

O1ビザを取得してパイロット職だけでなく色々な方面から相談を受けるようになりました。その相談内容をまとめておきます。

Q&Aスタイルとしてこちらで共有しますので参考にしてください。

O1ビザから永住権、そしてMaster CFI(以下MCFIとします)やF1ビザからOPTまでいろいろ聞かれました。今回はMaster CFIについて書いてみます。

O1ビザ〜永住権の記事はこちらから

就職につながるMCFIの具体的活動内容の記事はこちらから

Q MCFIは何をやれば取れるのですか?

Instructor Activity、Educator Activity、Service to the Aviation Community、Professional Activityの4領域の活動が必要です。

32単位(1単位=15時間なので合計480時間)が必要ですが、各領域で必要な単位数が決められています。

Q その4領域は何をすればいいのですか?

私も最初は何をどうすればいいのか分からなかったのですが、私なりの意見を入れてまとめてみました。

Instructor Activityは16単位必要です。一般的な教官業務なので教官としては一番クレジットががつけやすい領域です。少なくとも2つの活動内容を含まなければなりません。例えばPrivate PilotやInstrument RatingのFlight Trainingという資格取得のための教官業務だけではなく、CheckoutやFlight Reviewという有資格者への教育という別の内容を入れなければなりません。フライトインストラクターということで最低8単位はAirplaneやATDによる教育業務を入れる必要があります。

Educator Activityは4単位必要です。セミナー講師をしたり、セミナーに必要な資料を作ったり、記事を書いたり、プログラムを作ったりという内容です。教官業務の延長線上の活動と思ってください。フライトだけをこなす教官(言い方変えればタイムビルディングだけを目的とする教官)であればここを実施するには少し気が重い作業、というか少し重い腰を上げないとできない領域になります。しかしこの領域に入る気持ちになって実際に作業を進めていくと次の領域へも意識が動き、周りから自然と声がかかってくるのです。

Service to the Aviation Communityは2単位必要ですが、二つの活動内容を含む必要があります。Educatorの活動をやっていると色んなことが起こり始めます。自分でセミナーを開催すると他を見に行きたくなります。(後述:Professional Activityに入ります)さらに自分のセミナーにも磨きがかかります。どこかでイベントが開催されると声がかかります。

Professional Activityは2単位必要ですが、二つの活動内容を含む必要があります。前述したようにセミナーに参加したりするのが一つ。自分の知識や技量を向上させるために他の機体のCheckoutを受けたり、IPCやFAA wings programを受けたりしてみることです。2単位なので30時間が必要です。セミナーなどであっという間にそんな時間は溜まっていきます。できるだけリアルに人に会ってコミュニティーへの参加と貢献を常に意識してください。

Q 具体的に教えてもらえますか?

全体で32単位(1単位=15時間なので合計480時間)が必要とお伝えしました。一般的に人が働く時間は年間で1080時間(週40時間勤務x年間52週)とされています。

MCFIは480時間を2年間で実行するプランです。1年では240時間。教官業務をしながらできる時間だと思いませんか。

Instructor Activityの具体例を挙げてみます。普段の教官業務を考えてみます。一回のフライト前に30分のPreflight Briefing、フライトで1時間、フライト後のPost-Flight Briefingの30分であれば、一回のフライトで2時間です。必要な16単位は240時間ですので単純計算で120回のフライトで達成します。これって月に50時間程度フライトするフルタイムの教官であれば、2〜3ヶ月で達成される数字だと思いませんか。通常のフライト訓練に前述したCheckoutやFlight Reviewなどを入れていけばいいのです。なのでここは一番クレジットがつけやすいところです。

Educator Activityの具体例を挙げてみます。自分の所属するスクールに「この間発生した事例を考察しました。こうです(と資料を見せる)。みんなにも伝えたいので、1時間教室貸して欲しい!」とお願いするのです。スクール内で発生したヒヤリハット案件のような失敗例だとみんな興味を持ってくれるはずです。または自分の生徒たちから聞かれたことをテーマにしたaviation seminarを提案してみるのです。無報酬で実施しますと提案するのがポイントです。スクールに所属する生徒や資格保持者はもちろんスクール側に対するPRタイムです。

これって普段仲間でハンガートークとしておしゃべりベースで話ししてることだと思いませんか。これをオフィシャルにするだけの話です。

仮に1時間のセミナー実施として、事前準備や終了後のアンケートやまとめを記事にしておくなど作業が伴いますので、初めての実施には結構時間がかかります。かけていいんです!全部記録を取ってクレジットしたらいいんです。仮に5時間としましょう。全部で6時間かかる計算ですね。必要4単位は60時間ですので単純計算で10回のセミナーで達成します。月一回やれば1年もかからない。アメリカのスクールによくあるEmployee of the Monthにも選ばれるでしょう。一旦表彰を受けると不思議なことに次のチャンスがやってきます。次の領域へ進むチャンスも生まれてきます。

実施したセミナーのまとめた資料をAOPAやSAFEやNAFIなどの航空団体に寄贈する。取り上げてもらえばO1ビザも一気に近づきます。

Service to the Aviation Communityの具体例を挙げてみます。FAA safety teamに登録してProviderの役職を申請します。誰でも参加できるボランティア登録制のチームです。そこに登録されるだけでFAAの証明書がもらえます。O1ビザ申請に役立ちます。国の組織ですから効果抜群です。ProviderからRepresentativeへ昇格するようにFAAへ積極的にPRします。活動を見せます。必要な2単位は30時間ですので、FAA safety teamでの会議や講習会など、そしてイベントでのボランティア活動に30時間をかけるのです。FAA safety teamとイベントで二つの内容で30時間ですが、ここはO1ビザを狙う一番の鍵なのでできるだけ多くの時間をかけてください。

コミュニティーへ参加し貢献することで生まれてくるたくさんの出会いです。とにかく貢献することだけを考えてください。何を望んでいるのだろう。何ができるのでだろう。飛び込んでいってください。O1ビザ取得につながると考えれば行動できるはずです。

Professional Activityは前述した通りです。プロパイロットとして色々な場所に出向いて勉強してください。

どれくらいの期間で実施できますか?

MCFIの審査は過去2年に遡っての活動をクレジットしてもらえます。MCFI取得だけだったら2年かけてもいいともいますが、1年で実現するくらいの勢いであれば周りの注目も浴びる人材になっているはずです。それがO1ビザにも繋がっていくと思います。

Q MCFI取得はどのくらい大変でしたか?

正直私の場合は活動自体は普段から行なっていることだったので全く問題ありませんでした。しかし、それを書類で証明するということが一番大変だったと思います。なので今から全ての活動を表計算ソフトで記録しておくことをお勧めします。

実際に記録を提出して審査会にかけられます。必要に応じて記載した証人へ連絡することもあります。提出した時間が全て認められない場合もよくあります。なのでギリギリのクレジットで提出するのではなく、ある程度余裕を持って活動して提出することをお勧めします。

Q なぜMCFIがビザに繋がったのですか?

Educator ActivityとService to the Aviation Communityは相互関係にあると思います。そしてここがO1ビザ取得にとても重要な鍵を握っていると思います。移民局が考える米国に必要な「トップレベルの業績を持つ人材」と思ってもらえる。そのように見せるロジックが生み出せると思います。

私は職場の都合で結構早い時期にChief Instructorに任命されていました。600時間ちょいの時間しかありませんでした...

フルタイムでやってくれる人が他にいないからという理由で(笑)

でもその場に投げ込まれたことがチャンスだったと今では思えます。

職責上、年上で経験豊富な部下となる教官の管理指導(やりにくい😅)や生徒の指導というルーティーンワーク以外に、毎月のmeetingでトピックを決めてレクチャーさせられていました。正直苦痛でした。毎月のmeetingが終わったらすぐに翌月のトピックを考え始めないと間に合わない経験値...ひたすらネタを探していました。ネタ探しに先輩パイロットに聞く、整備士に聞く、管制官に聞く日々。

毎日の教官業務で目の前の訓練生や教官との会話の中で気づくことがたくさんありました。たくさんの教材やポスターやツールを作りました。毎月掲示板に航空情報など生徒が興味を持ってもらう資料を作っていました。仕事をやりやすくするための工夫は必死でやりました。普通にやっていてはアメリカ人に負けてしまう(勝ち負けではないですが)...という焦りもあったと思います。スタートラインで既に出遅れている英語が第二外国語の経験の浅い日本人教官ですから。

職責上、空軍組織でのflight operationsチームでの会議に参加したり、発言したり、プレゼンをしていました。周りは空軍のパイロットの人達やパイロット以外でも空軍の組織の方々ばかり。ついていくのがやっとでした。

珍しい基地内の日本人パイロットとしてでしょう。色々な活動が米軍のテレビやラジオや雑誌や新聞で取り上げられたりしました。

アメリカの文化らしいなあとして感じたのは、表彰を思い切りしかも頻繁にやってくれることです。私もえ?!こんなのでもらっていいの?というレベルでも(笑)多分これは在日米軍基地で働いた人であれば理解してもらえるはず。褒める文化素敵です。きっとアメリカ社会もそうなんだろうなと思います。

チームから表彰され、調子に乗ってさらに頑張る。褒められると伸びる子なので😆  グループから表彰され、基地レベルで表彰され、そして太平洋空軍レベルの表彰をいただくことができたり、アメリカ人試験官の退任に伴い試験官任用の推薦をもらったりすることができました。空軍での経験の中でもこの二つが一番大きなO1ビザに合格できた要素だと弁護士は言っていました。

米軍基地という特殊だったからMCFIやO1ビザになったんでしょうと思っている貴方!違います!米軍基地はアメリカ社会と同じです。

定期的なセミナーを実施する。目の前の訓練生のために色々知恵を絞って「何か」を作り出す。コミュニティーで活動して「認められる」よう努力する。NAFIのMCFIの活動事例を見てみる。見よう見まねでもいいのでやってみる。きっとヒントが隠されているはずです。意識しないと見えないものです。

実施したセミナーをまとめて定期的にWEBで記事にすることがメディアに取り上げられることもあるでしょう。地元の小さな新聞に載ることもあるでしょう。AOPAレベルのFlight Instructor of the Yearに選出されることも可能でしょう。

ジャンルは違いますが、松下幸之助氏が昔経営者に対して講演をした時の話。参加者からはどうやったら事業が成功するのか教えて!と聞かれたことに対して「そのためにはまずは成功しようと考えることです。思わないと始まらない」と答えてほとんどの参加者が理解できなかった一方、若かった稲盛和夫氏はなるほどと思ったらしいです。MCFIからO1に繋げたかったら何をしたらいいかを考えて考え抜いてください。そして行動に移してください。何かが見えてきます。

この記事は不定期に更新していきます。追加質問があれば追加していきたいと思います。



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