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多くの可能性を秘める米国航空留学

この話の対象者はアメリカにパイロット訓練でパイロット資格を取得した後に日本に帰国してエアラインパイロットを目指す方々です。

これまでのケースを見てみると次の3つになるのではないでしょうか。

① 自分で日米それぞれのパイロットスクールを探して日米の資格を取得する

② 日米一環のパイロットスクールで日米一貫コースで取得する

③ 私立大学の操縦科でのカリキュラムに従い日米一貫コースを取得する

パイロット不足の日本ではパイロットの採用は行われていますので、その枠に入ることができれば何の問題もないのですが、もしできなければどうしますか?

受かるまで受験し続ける。が一番多い回答ではないでしょうか。

試験に合格した時点が最高のパフォーマンスであることは既に自身の経験でご存知のはずですよね。受験した時と同じProficiencyを維持していますか?

うっ!と痛いところをつかれた方と感じた方はFlight Simulatorで技量を維持すべきだと感じてもらえたのではないでしょうか。

それでも落ち続けることもあるでしょう。年数が経過すると年齢も重ねていきます。技量も落ちていきます。若い方々がどんどん出てきます。若い人が有利です。

脅かすつもりはありませんが事実です。

バックプランを立てておいてほしいのです。せっかく自分に投資するのです。もう少しだけ追加の投資を考えてみてください。

結論を先に言うとフライトインストラクター資格を取得してくださいと言うことです。

最終目的が日本でのエアラインパイロットなので、できるだけ無駄なコストはかけたくない。かけられない。という方がほとんどだと思います。なのでイヤイヤ無理〜という人は下の本章を見なくても結構です。

ちなみにこのブログは玉那覇尚也のパイロットになろう2022年4月7日放送にご出演された元航空局試験官・審査官・専門官の浦松香津子さんとの話の後に書いているリアルなお話です。放送後のランチ中にも出た「教育証明を取る大切さ」を書いているつもりです。今後は我々は協力して日本の教育証明取得者を増やしていこうとタグを組む予定です。

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インストラクターという資格

ここでは二つのケースを考えてみます。

A. 前述した3つのシナリオで帰国した人またはその予定で進めている人

B. これから全てを計画している人

Aの場合には、国内での教育証明(フライトインストラクター)という資格を取得することになります。資格取得は一つです。それでも従来の有資格者より有利になることは間違いありません。

Bの場合には、アメリカ滞在中にグランドインストラクターやフライトインストラクターという2種類の資格を取得する可能性があり、さらに帰国後には教育証明を取得し3種類の資格を取得する可能性があるということです。

いずれの場合においても日米共通する難しさとしてはオーラル試験。他の試験と比べて圧倒的に長いオーラル試験時間。浦松さんはJCAB ATPLより難しいとおっしゃっています。元FAA試験官の私から言わせてもらえれば、同じくFAA ATPより難しいと思います。事実、パイロット試験の不合格率はダントツ一位です。

不合格率の1番の原因は人前で教える経験をしたことがないに尽きます。Commercial Pilotや事業用操縦士は一人で飛ばせることを前提に試験を実施します。インストラクターは全く別の性質であることを理解していない状態で準備に臨まれる方が非常に多く、脱落率も多いというのが私たち二人の共通の認識です。

インストラクター資格取得者は少ないから希少性も出てきますね。インストラクターなしではパイロットは養成できないことも知っていますよね。つまり仕事には困らないということです。浦松さんもおっしゃっていました。

教育証明あればこの業界で一生食いっぱくれることはない

JCAB教育証明の一つの資格とFAAインストラクター二つの資格を合わせた3つの資格保持者はどちらか有利か。答えは出ているはずです。

一旦航空業界にプロとして仕事をするとネットワークが繋がって、いつか時を経てエアラインパイロットになる可能性だってあるはずです。

要は資格だけ取って終わるか、航空業界に滑り込むかどうかの差です。

グランドインストラクターという資格

日本にはない資格。グランドインストラクター。浦松さんは国内でも必要な資格だとおっしゃっていました。と言うくらい大切な座学教官という仕事。パイロットになりたいから飛びたい!という気持ちもわかりますが、自身のパイロット訓練でも感じていたはず(これからやる人は必ず理解できる日が来ます)座学時間が足りない。きちんと座学を教えてくれる人が少なくなってきているんです。

アメリカには3種類のグランドインストラクターの資格があります。

Basic Ground Instructor(BGI):Private Pilot以下の資格の座学を教えることができ、エンドースを与えることができる資格です。

Advanced Ground Instructor(AGI):Pilot資格全ての座学を教えることができ、エンドースを与えることができる資格です。AGIはBGIをカバーできるので最初からAGIを取ることをお勧めします。

Instrument Ground Instructor(IGI):Instrument Ratingの座学を教えることができ、エンドースを与えることができる資格です。

もちろんグランドインストラクターを取得しなくても、フライトインストラクターの資格は取得できます。

しかしグランドインストラクターはパイロット資格がなくとも取得できる資格。教官を目指し教える勉強をしたい人にとっては絶好のチャンスです。

私がお勧めする方法は、Private Pilotを取得したらすぐにAGIを取る。Instrument Ratingを取得したらすぐにIGIを取る。それから少なくとも100時間以上は飛行経験をつける期間があるのです。その期間を利用して教官を目指して練習をするのです。

さっき書いたように「オーラルで落ちる原因が人前で教える経験をしたことがないことに尽きる」を知っておけばいつスタートしておくべきかかが分かるはずです。

フライトインストラクターという資格

日本と違ってパイロット資格とは別の資格。パイロット資格証明書は二つになります。日本は保持する資格に追記される限定です。一つです。

アメリカの場合はパイロット資格とは別の資格となるため、仮に身体検査証明を取得できない状態になってパイロット資格は使えなくなっても、条件はあるものの、飛行機に乗ってインストラクターとして教えることができます。つまり一生フライトができます。身体検査が通らなくなった時に備えていいバックアップになると思いませんか。

日本の教育証明の取得を目指すのであれば、アメリカ(海外)のフライトインストラクター資格保持者はフライト試験が免除される大きな特典があります。それだけでも何十万円、いや何百万円のセーブになります。

ここまで読んでいただければアメリカでグランドインストラクターを最初に取得し、フライトインストラクターを目指す、そして帰国して教育証明を取る理由がわかっていただけたと思います。

インストラクターとしての実務経験

理想的なのは、資格取得後に現地アメリカ人のように働きながら飛行時間と教育経験をつけていく方法です。

現地アメリカ人は、今の歴史的なパイロット不足で大手エアラインでも飛行時間1,500時間で採用されるようになっている現状では、馬車馬のように働き、時間が達成されると卒業していきます。教える経験値は半端なく多い実績を持つことになります。

報酬をもらいながら、飛行時間もつけられるまさに一石二鳥の美味しい方法ですが、日本人がアメリカでそれを実施することは簡単ではありません。どの国も自国の国民の就労権利を優先させるため、外国人の就労が難しいのが現状です。

日本人が現地のアメリカ人と同様に働くための方法があります。一つの方法として、学生ビザを使ってインターンシップ制度を活用するのです。

アメリカの大学を卒業すると取得学位の業界で一定期間就労することが認められており、パイロット業界に限らずそのままアメリカに滞在したい学生達は、インターンシップ期間中に就労ビザへ変更する事例が多くみられます。

ここで大切なのことは、自動的に就労ビザへ切り替えられる訳でなはいということです。雇用主であるアメリカの企業が外国人で、しかも新卒の経験のないまたは少ない人を、地元のアメリカ人より優先して採用したいと思わせなければこの壁は越えられないということです。

その壁を乗り越えるためにも、できるだけ早いうちからインストラクターとして教える経験を積んでおく必要があるのです。パイロットとして取得する資格も飛行時間もほぼ横並びの現状、どうやって人と違うことをアピールできるのかを考えてみてください。

別の例を出して説明します。大学時代に接客のアルバイトをしている人をAさん、していない人をBさんとします。卒業後に新卒としてカスタマーサービスの会社に応募するとします。雇用主からしたら二人のどちらが魅力的でしょうか?Aさんですよね。

学生ビザからインターンシップを活用する方法を説明しました。ここにも効率的な方法があるのです。

短大留学とフライトスクールの合わせ技

アメリカ航空大学と言えば、4年制航空大学が一般的だと思います。4年制大学ということで学費が高い。しかも付属のフライトキャンパスでは更に訓練費が高い。

それらの大学ではインストラクター資格を取得させ学内でインストラクター業務をインターンシップ期間中にさせています。でもそれがいつ実施できるのかというと、大学就業年数の後半、3年生、4年生、いや卒業してから、ということになるでしょう。

安く早くできる裏技を紹介します。

いや航空大学の学士号が必要なんだ!とか卒業大学の名前が大事なんだ!とか大学のカリキュラムが一番なんだ!という方へ。学歴やカリキュラムでパイロットを採用するとこなんてありませんよ。

パイロットとしての知識と技量がみられるのです

プロパイロットとして働きながらオンライン大学や大学院へ進学する方法も普通にあります。

私が56歳でEmbry-Riddle航空大学へも進学できる話を書いたブログもよかったら読んでみてください。

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短大に行く理由① 学費

4年制大学に比べて学費が安い。なので地元のアメリカ人は短大を卒業して4年制大学に編入をして学位取得を目指す方も多いです。

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Credit: Education Data Initiative

短大に行く理由② 地元のフライトスクールと提携している(安い)

大規模な有名な4年制大学付属の立派なフライトプログラムは前述の通り訓練費が高いです。

4年制大学でも地元のフライトスクールと提携している場合もありますが、短大の場合はほとんどがそのシステムを採用しています。

つまり安くパイロット訓練を受けることができるということです。かっこいい制服はないかもしれないけど(笑)

短大に行く理由③ 2年目から働ける

カリキュラム後半に組まれている専門科目を早めに取得することで、1年終了時点でCertificate(修了証)が授与されます。

Certificateがもらえるとその業界でインターンシップ制度を使ってフルタイムで1年間働くことができます。

雇用主や地元のコミュニティーに知ってもらう絶好のチャンスが2年目から作れるのです。フルタイム教官の1年、復学して1年、卒業後に与えられる別の1年、合計3年間という期間を最大活用できるのです。

アメリカ就労ビザ 取得の道 (16)

多くの選択肢が見えてきました

アメリカ訓練を日本資格取得のための基礎訓練だけとして捉えるか、アメリカで実務経験をつけてから日本資格取得を目指すのか、多くの選択肢が見えてきたはずです。帰国後に日本でのプロパイロットを目指すのであればJCABの事業用操縦士、計器飛行証明、教育証明というステップが必要になってきます。

① 短大1年で修了してOPT1年で帰国するケース

渡米後2年で飛行時間約1,000時間近くなっているでしょう。

このタイミングで帰国してJCAB資格を取得して約1年かかったとしても開始して3年では次の資格と経験を有していることになります。

・FAA Commercial Pilot - Airplane Single/Multi Engine Land / Instrument Rating

・FAA Ground Instructor - Advanced / Instrument

・FAA Certified Flight Instructor - Airplane

・JCAB事業用操縦士 - 飛行機陸上単発 / 多発 / 計器飛行証明 / 教育証明

・飛行時間:1,000時間(内機長時間700時間)

魅力的な資格と経験になりませんか!

② 短大卒業でOPT2年で帰国するケース

渡米後4年で飛行時間約1,500時間近くになっているでしょう。

①と同じ資格ですが、総飛行時間が1,500時間(内機長時間1,200時間)となっていることを考えると相当魅力的な経験となります。

アメリカ滞在延長の可能性

【② 短大卒業でOPT2年で帰国するケース】を帰国しないケース

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滞在延長して就労するためには適切な就労ビザが必要となります。その適切な就労ビザはO1ビザが一番いいと思います。

最初のOPT期間からO1ビザ取得を意識して行動するのです。2回目のOPT期間で基準を満たして申請です。申請して2週間では結果がわかるプレミアムサービスを使います。その後は大使館で面接して取得完了です。

私自身がインストラクターとしてO1ビザを取得できたので、その経験からノウハウを公開していく予定です。下のブログで確認ください。

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アメリカ永住権の可能性

永住権を申請できる就労ビザがいくつもありますが、O1ビザもその一つです。永住権を取得するとアメリカ国内のどの航空会社へも応募する資格がもらえます。

今や歴史的なパイロット不足。アメリカでのパイロット需要は過去の記録を塗り替えています。そこでエアラインパイロットとしての経験を積むと一気に舞台は世界に広がります。

今回のブログの対象者は日本に帰国してプロパイロットになる方々でしたが、アメリカや世界を経験してからでも遅くはないのでしょうか。

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Credit:Boeing

世界中の経験あるパイロットが争奪戦

下のリンクでパイロット職を検索してみてください。

”仮に”でいいので、前述のアメリカでのエアラインの経験があったとしてサーチをかけてみてください。

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Credit:CAE

どれだけの可能性が広がるか自分で見ることができます。当然日本の航空会社に”経験者”として採用されることも可能です。

その時には、一般的に取得するJCAB事業用操縦士や計器飛行証明は不要です。国内エアラインに採用されている経験ある外国人パイロットがそのような基礎資格を取得して訓練してますか?

一般的な基礎資格が必要なのは、経験が浅いパイロットだからなのです。だったら経験を海外でつけてみてはいかがですか?

そういうことも含めて多くの可能性を秘める米国航空留学なのです。







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