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DesignOpsという考え方

DevOpsのプロセスが一般化して、運用時の課題を柔軟に開発へ反映することが大切とされるようになって何年も経ちます。
デザイナーも当然、開発チームと一緒になってスクラムチームに参加してデザインをしていくわけですが、開発の優先度のなかでデザインを行うことによってどうしても全体の一貫性を保つことが難しくなってきていると感じることがよくあります。

システム内のデザインの一貫性の棄損は、ユーザビリティ、学習効率、ブランド力の低下に結びつくため、重大な課題となるのですが、では、一度開発をストップしてきちんと軌道修正をするだけの工数がかけられるかと言うと、開発のリソースをデザインに全振りすることは売上へのインパクトから悪手といわざるをえません。
そこで重要になってくるのが、デザインを「運用する」という考え方です。
昨今、デザインシステムの作成、構築がブームのようになってきていますが、おそらくはそういった課題感から生まれてきている事だと認識しています。

スクラム内でのデザイナー

開発チームの人数に対して圧倒的に少人数のデザイナーがすべてのデザインを検討し、レビューし、ユーザーにとって価値ある状態を維持することはとても大変で、どうしてもマンパワーに頼ってしまい、新しいメンバーが入った場合のナレッジのシェアや再現性に課題があります。
デザイナーが実現すべきもっとも大切なことの1つは「一貫性のある体験」であり、そこが何らかの方法で維持できると、デザイナーはもっと「課題の発見」などのより前のめりの改善に着手することが可能になります。

また、どうしてもデザイン≒センス、のように捉えられてしまうシーンもまだまだ多く、デザイナーの考え方がブラックボックスしてしまっているという現状もあって、1人の職人技に頼られがちですが、組織として、プロダクトとしての効果を最大限に発揮するためには「デザインをチームで行う」ということが不可欠です。
質の高いデザインを再現可能な状態にして提供することが、プロダクトの成長や、ユーザーにまっすぐに価値を提供することにつながっていきます。

DesignOps

https://www.designbetter.co/designops-handbook

(DesignOps Handbookより引用)

IxDA(The Interaction Design Association)の創始者でもあるアメリカのデザイナーDave Maloufによる「DesignOps Handbook」には4つのポイントが定義されています。


- Workflow
 デザイナー間のプロセスだけでなく、非デザイナーとのプロセスを整備して効率的なワークフローを整備する

- People
プロセスに必要なリソースの配分や採用基準を整備する。

- Governance
デザイナーが効率よく作業できるための権限を整備する。

- Tools&Infrastructure
デザイナーが効率よく作業できるような環境を整備して、運用できる状態にする。

このあたりは一般的な会社における組織運営とさほどかわりはないように思います。

シンプルに書くと簡単なことのように聞こえてしまいますが、デザインの前提となるリサーチや理解といった、デザイナーが常日頃から課題と感じている「調査/ヒアリングの手法」や「デザイン決定までの意思決定」「つくったものが効果的かどうかの検証」など、デザインを「つくる」以外のプロセスも構築する必要があり、それらはデザイナーだけで決められることではないのでデザインに対する「組織の理解」が必要になります。

デザインの目的

デザインの目的は作家性のある作品をつくることではないし、デザインをどのように事業やプロダクトの「武器」として使うか?についてはデザイナー以外との仲間との対話が不可欠です。

1人でプロダクトをつくりつつ、組織をつくる、スーパーマンのような人がいると良いのですが、やはりデザインの世界にも「集合知」を持った状態で、1人の視点ではカバーしきれないような様々な要因をデザインに落とし込んでいく必要があります。
そのためには、組織もデザインも「運用する」という視点を持ち、最強のデザインチームを形作っていくことが重要で、実際にすばらしいプロダクトを作っている会社はもう何年も前から始めています。実際見聞きするのはAdobeAtlassianDropboxなどの大企業の例ばかりですが、とうぜん自分たちもそのレベルを目指さないと到達できないとおもっています。そこにいくまでのプロセスは千差万別ですが、ゴールとして描く状態はどこも同じようなビジョンを掲げているように見えます。

決して、質の高いデザインよりも運用や合議での決定を重要視しろ、という話ではありません。あくまでもデザインの効果を最大化するためにはどういった体制、プロセスが必要か?というポイントが肝心です。UIについての運用の話も含みますが、それだけではなくプロセス全体の話です。
また、デザインシステムをつくることが目的なのではなく、デザインシステムはデザインオプスの手段の一つです。

「デザインのねらい」はなにか?ということをデザイナーに限らず、会社の戦略の中でしっかりと議論することが、良いプロダクト、良い体験をつくることの根っこなります。
デザインオプスということを常に模索して形にしていく役割がデザインチームの中に、会社のなかに必要なんです。

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