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敵のレベルが見えると、何が起こる? ――能力的判断と戦術的カタルシス

SmokingWOLFさんがブログ「シルバーセカンド開発日誌 遊ぶ人に技量アップしてほしい!」で述べていた、「コマンドRPGでプレイヤーの戦術的カタルシスをどう演出するか」(要約)という話が面白かったので、簡単にですが僕も一つ語ってみます。

テーマは、「敵のレベルが可視化されることによって起こる、能力的判断と戦術的カタルシス」です。


■やりこめば勝てるのか、頭を使えば勝てるのか

ブログで述べられていたのは、

(アクションゲームに比べてコマンドRPGは、)勝てない理由が強化不足か戦術が甘いせいかの判断が付きづらい

という課題でした。

詳細は元記事に任せるとして、「強化」というのはPCと敵とのステータス(ゲーム内資源)の比べ合い、「戦術」というのはプレイヤーとゲームとの知恵の比べ合いと言えます。

やりこめば勝てるのか、頭を使えば勝てるのか。あるいは、やりこんだから勝てたのか、頭を使って勝てたのか。ここがごっちゃになってしまうということですね。


■FFXVと某タイトルを例に上げて

ここで一つの解決策を提示した例として、『FINAL FANTASY XV』(FFXV)と『某タイトル』(ネタバレになりそうなので名前は伏せます)を挙げたいと思います。(どうしても気になる方はDMで聞いてね!)

【補足】FFXV及び某タイトルはアクションゲームですが、レベル制を採用したアクションRPGです。「戦術」と「アクション」はそれぞれ「知恵」と「反射神経」というように、どちらもプレイヤー自身の能力であり、ここではカタルシスを生む要素という意味では、同じものとして扱います。

FFXVと某タイトルはどちらも、プレイヤーも敵もレベルを持っています。

敵がレベルを持つという要素はありふれた選択肢であり、採用しているゲームも多くあると思います。では、敵がレベルを持っているとどのようなことが起こるのでしょうか?

まず思いつくのは、「敵のレベルと自分のレベルを見比べて、適正な相手かを見極める」という考え方です。これを、能力的判断と呼ぶことにします。

レベルの可視化によって能力的判断が容易になると、まず端的に、「レベル不足なのか戦術(アクション)がイケてないのか」の判別がつきます。

……はい、解決しました。(それでいいのか)

能力的判断によって、「適正な敵に気持ちよく勝つ」「レベル差に余裕をもって勝ちに行く」「格上相手に命からがら勝利する」、といったプレイヤーの嗜好によるプレイスタイルが容易になります。

ただしレベルが見えると、RPGのもつ"難易度自動調整機能"が失われてしまう、という側面もあります。

【補足】RPGの難易度自動調整機能(持論):プレイヤーの能力に応じてレベル上げが発生し、それらより適正レベルが滑らかに変化、誰もが気持ちよく戦える作用。戦術下手でボスに勝てずレベル上げをしても、敵のレベルが見えなければ「自分が下手」とは思いにくい。

また、見えているレベルが本当に信用できるのか、というのも気になるところですね。

さて、ここからが本題です。


■レベル詐欺! こいつ強すぎる!!

FFXVを一通りプレイしてみて、レベルの可視化がもたらす作用はそれだけじゃない、ということが見えてきました。

FFXVには、レベル詐欺とも言える、「同じレベル帯なのに全然勝てない」敵が出てきます。○○洞窟のアイツとか、うわっ、この敵強すぎ……と思った方、少なくないでしょう。

その○○洞窟のアイツ、マジで強すぎて、でもレベルは足りてるし……イケるやろ……行ったれ!! との思いで、死に物狂いで撃破しました。赤字でした。

これ、一見すると調整不足のようですが、プレイしているうちに、これは意図的な演出なのではないかと思えてきたのです。(特に○○洞窟のアイツは倒さないと先に進めない構造になっているので、絶対わざとです)

つまりこういうことです。

プレイヤーは、レベルの可視化によって能力的判断をして、適正な敵を選びます。でも、ずっと「同じくらいの強さの敵」と戦っていても、飽きてしまいますよね? そう思うMゲーマーは、格上に挑むことでしょう。でも、その考えにも至らず、知らずのうちに飽きていくプレイヤーは……?

そう、意図的に「適正レベルだと思ったら全然勝てない敵」を配置することで、難易度デザインのメリハリをつけているのです!

プレイヤーは「裏切られた」と思うわけですが、「レベルは合っているのでなんとか撃破したいと苦戦し、辛くも勝利する」達成感を得るかもしれませんし、「敵のレベルは信用できない、ある程度の目安にはなるけど、油断はならないぞ」、という緊張感を得られるかもしれません。

緊張感というのも大事で、レベルが正確すぎるとハラハラドキドキがなくなる分、少し遊ばせることで安心と緊張のバランスを取っているんですね。


■“適正レベル”が生むストーリー体験

一方、某タイトルでも同じように、レベルは同じなのに硬すぎる敵が出てきます。こちらはまた別の働きを持っていて、その「適正レベルなのに硬すぎて倒せない敵」がストーリー上の演出に一役買うのです。

ネタバレになるので詳述できませんが、「あんなに硬かった敵、絶対適正レベル間違えてるよと思ったら、確かに○○ということなら適正だ!」という感じです。「○○という要素によって、こういった硬すぎる敵を倒せる! ○○ってつよい!」という○○要素の演出にもなるというわけです。

このように、レベルを可視化した上でプレイヤーを騙すことで、能力的判断の材料にしつつ、アクションの、あるいはストーリーのカタルシスを演出しているわけですね。

これなら、コマンドRPGにも適用できるんじゃないでしょうか。直接敵のレベルでなくても、クエストの推奨レベルとかでもいいですし、クエスト受注時は低レベルモンスターの討伐だったけど、進行中にアクシデントでモンスターの親なり格上の敵が出てくる、という演出も面白そうです。

最後になりますが、WOLFさんの該当記事、めっちょレベルデザインの参考になるので、オススメですぞ! ありがとうございました。

ハゲた

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