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DMO議論を乗り越えて -目的と手段のはき違え-

観光ちいきづくり法人は、全国あらゆる地域で観光振興の新しい切り札として設立され、それぞれの地域特性を背景に大小さまざまな組織が存在している。私の住む沖縄県北部地域でも、出ては消え、消えてはでてくるこの議論で、個人的な見解を記しておく。
結論としては、DMO的な機能や役割は必要なので、それはビジネスとしてやっていきましょう。沖縄独特の行政主導の施策はスピードが遅すぎるし、コストとパフォーマンスがあってないので、小さく民間でできることからやりましょう。そのうえで、それぞれの得意分野と不得意分野をカバーしあいましょう。共通言語が違いすぎるため。


2回り目のDMO設置議論

2015年にDMOの制度がスタートし、観光協会とは違う視点で、マーケティングの観点から、お客の求める視点・サービスを提供することで、より付加価値が高く、質の高い観光サービスを提供することで、観光振興を図る目的で、制度化された。

DMOとは

観光庁のサイトには、DMO基礎的な役割・機能(観光地域マネージメント)として下記の4つがあげられている。

(1)観光地域づくり法人を中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成
(2)各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイク ルの確立
(3)地域の魅力の向上に資する観光資源の磨き上げや域内交通を含む交通アクセスの整備、多言語表記等の受入環境の整備等の着地整備に関する地域の取組の推進
(4)関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組みづくり、プロモーション

観光庁ウェブサイトより
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.html

関係者の合意形成、ブランディングと数字による検証、観光インフラのブラッシュアップ、プロモーションなど、必要なことは全部やってという、総花的ではあるが、全部一気にやるというよりも、地域がそれぞれの課題やビジョンに沿って、取捨選択していくのだろう。
全国に令和5年9月時点で、282団体登録され、予備軍として候補DMOが57団体あるらしい。

沖縄県内・北部地域でのDMO議論

沖縄県内には、県域での広域連携DMOとして沖縄観光コンベンションビューローをはじめ、地域連携DMOとして八重山ビジターズビューロー、北谷ツーリズムデザイン・ラボ、 沖縄市観光物産振興協会、座間味村観光協会などが登録されている。
候補DMOとしては、那覇市観光協会、久米島版DMO推進協議会、浦添市観光協会、宮古島観光協会などが手を挙げている。
沖縄県北部地域でも、世界自然遺産地域に指定された国頭村・大宜味村・東村の観光連絡協議会等でDMO設立の動きがあるようだ。
そして、北部地域の12市町村が連携して取り組む動きで、北部版のDMOの議論が進んでいる。進んでいると言っても、2015年に始まった制度で、制度にすぐに飛びついた地域と、これからの地域では事情が変わってきている。この8年の間に、インバウンドの需要が急激に高まったが、日本全国で感染症Covit19の影響で冷や水を浴び、特に観光産業は大きな打撃を受けた。その間で先行したDMOの上手くいった部分とそうでない部分が、明らかになっている。一周遅れで二回り目のDMO設置の動きは総じて鈍い。

DMCならいいのか

DMOの課題の多くは、組織の財源の問題である。行政と民間が連携して組織運営に当たるのだが、ソフト施策に関しては成果が直接的にDMOに反映されるものと、地域の事業者にメリットが生まれる施策とあるので、稼ぐ組織を目指していても、簡単には行かないのが現状である。
DMOでなく、DMCならと、CはCompanyなのだが、稼ぐ柱をもてば、ビジネスモデルがあれば自立していけるというわけだ。組織の中にバス会社や船会社等の観光客の足回りを担う部門が入っていれば、サービス創出によって輸送部門の利用者が増えて、その売り上げの一部が組織の運営にあてるという形である。
北部地域でそれがうまくいくのかは、これからの議論であろう。行政組織は(民間もだが)財政的な余裕があるわけではないので、新たな組織への財源的な支援は、慎重になる。
DMCならいいのかという仮説は、会社で稼ぐなら、稼いでいるだろうし、行政と共同で組織を作るところへのエネルギーを考えると、なかなか積極的には取り組めないだろう。

主体性の無さ

じゃあ、誰がやろうと旗を振っているのか。実態はよくわからない、誰もいないかもしれないという状態に近づいている。

民間主導なのか行政主導なのか

DMOが日本で動きだして、DMO設置のメリットは観光庁の様々な制度にエントリーしやすいということが挙げられるが、公募型の補助金頼みの運営では安定した組織作りが難しい。
そこで、地元の行政からの委託金や補助金等の財政的なサポートがあって、職員の人件費をはじめ、組織運営に必要な経費の部分をどう負担するかということが大きな課題である。
民間主導でできるなら、それが一番望ましいが、田舎にいけばいくほど、事業者の規模も小さく、新しいことへの先行投資的なことが起きにくい状況である。どうしても行政の立ち回りが期待されるが、行政にも余裕が無いというのは前述したとおりである。
結果、どっちも積極的になれていないのが現状である。

「そもそも」に戻る

ここまで来ると、そもそも、これって必要なのか。誰が責任もってやるんだっけ?誰が言い出したんだっけ?と3年も4年も議論していると、担当者が替わって、そもそもの所があいまいになり、DMO設置するというお題目だけが残り(引継ぎされ)、設立に向けた盛り上がりも、細かな制度的な詰め、とくに財源と組織体制について、議論が後回しになって、先送りされてきた。そうこうしているうちに、社会情勢の変化もあり、状況が変わっても、一度決まったことは変更できないのだろうか。
総論賛成、各論でいつまでもごちゃごちゃ議論しているし、民間も行政もレールの上で議論はしているが、決断できない状況にあるのだろう。

小さくても稼ぐ

DMO的な機能は必要なので、いきなりすべての地域を巻き込んでいくことはタイミング的にもエネルギー的にも難しいので、小さい地域からブランディングやマーケティング、人材育成のシステム提案などやっていきたいと、個人的には考えている。

地域経営である以上、稼いで回す

沖縄の体質であり、特に北部地域の現状であるのだが、補助金への依存度が高く、マインドとして自ら稼ぐという話になりにくい。できない理由はいくらでもあるからだ。
しかし、長期的に考えて、お客様に支持されるサービスや商品を提供して、喜んでお金を使っていただくことを目指し、どう売っていくかはその次じゃないだろうか。売り方も大切だが、地域資源をしっかり活かし、地元の人が自ら汗をかき、リスクを取りビジネスとして成立させることが最優先であると考える。

組織論でなく、ビジネスマインドとモデル

DMOを作る、作らないの議論は、個人的には結論が出ているので、どのような形で進むにしろ、ビジネスとして成立させる自分のモデルが先で、DMOがあれば協力していけばいいだけ。別物である。あくまでDMOという組織論は手段であって、作ることが目的化しては、その後危うい。
当事者はわかっているけど、一度始めたプロジェクトに損切りができないのか、やるならリスクを取って、情熱込めてやる人を中に取り込まないと、永遠に議論している状態が続きそう。そのうち忘れるのか、うやむやになるのか、しっかりやるぞと巻き返すのか見届けたい。

熱量高く始めてみる

自分の住んでいる地域であるし、これまで多少なりとも関わってきたので、傍観者にはなりたくないので、自分なりの意見を言う場面があればこれからも言っていくが、自分なりのかせぐことを始める。
仲間がいないとできないことも多いいで、進めながら緩くつながっていけばいいと考えている。
具体的なことは、これからだがサービスの開発と営業、データを使った仕組みづくり・その基盤づくりを提案していく。

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