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私たちが福島の魚を売る理由と、縁がつないだ仕入先開拓

はじめまして、都内に9店舗を展開している魚屋「sakana bacca(サカナバッカ)」を運営しています、kino-Pです。

8月24日に福島県でALPS処理水の海洋放出が開始されました。
その日以降、TVや新聞など多くのマスメディアからの取材依頼があり、風評払拭のお手伝いができればと精一杯対応しています。

今回は私たちフーディソンがなぜ福島の魚を販売し応援するのか、そこに至るまでの前日譚についてお話ししたいと思います。


福島を応援したい、けど…。

本格的に福島の魚の販売を始めたのは2019年7月でした。
それまでも全国各地の自治体から依頼を受けて、サカナバッカや飲食店向け鮮魚仕入ECサイト「魚ポチ(うおポチ)」で首都圏の消費者や飲食店に向けたPR販売を行っていました。
そんな中、2018年夏頃に福島県庁の担当者さんから連絡があり、「試験操業を始めたけど流通量が震災前の2割弱までしか回復していないので、流通拡大に協力してほしい」と。

正直なところ、このときは「とうとう来たか」という気持ちでした。なぜならば、当時は私たちも消費者も今よりも放射性物質についての正しい知識が少なく、福島の魚に対するネガティブな声も多かったので、フーディソンが福島の魚を取り扱うことが、どんな影響になるのか未知数でした。もし、風評が私たちの扱う商品に向いたら、会社そのものがなくなってしまうんじゃないかとまで考えて悩みました。

一方で、私達は「生鮮流通に新しい循環を」というビジョンを掲げており、持続可能な水産業を目指していく上で、震災後の風評被害で復興が遅れている福島の水産業から目を背けてはいけないという思いもありました。

【視察 1日目】 いざ福島へ! 検査場視察

そこで、まずは自分たちの目で福島の検査体制を見てから判断することにしました。
また、当時は福島の魚があまり豊洲市場にも来ておらず、いざ販売しようにも安定的に仕入れる方法がなかったので、産地の仕入先開拓も同時に行うために、私とバイヤー2名でJR特急ひたちに乗り込みました。
この時点では産地事業者のことは、ほとんど知らない状態で向かったので、今思うとかなり無謀だったなと思います。

小名浜魚市場

まず到着したのはいわき市にある小名浜魚市場です。
小名浜魚市場には県内に2つある検査場のうちの1つがあり、そこを視察させてもらいました。
初めて見る放射性物質の検査でしたが、担当者さんは私たちからの質問にも丁寧に答えてくださり、福島県は国の基準よりも厳しい基準にしていること、間違っても基準値を超えた魚が出荷されることはないことを理解し、安全性が確認できました。

検査場内部

【視察 2日目】  いわきから相馬へ

翌日の早朝からいわき市内の漁港で競りを見つつ、仕入先を探したものの、残念ながら私たちの希望の量を手配してもらえる仕入先はいわきでは見つけられませんでした。
そこで、出張前に唯一仕入れさせてもらえるんじゃないかという情報をもらっていた仕入先候補がいる相馬市の卸売市場に移動。しかし、そこでも人手不足を理由に取引にはつながらず。震災後何年も漁業が止まっていた影響で水産に関わる人が大幅に減っている状況でした。

仕入先が見つからない中でいよいよ東京に帰らなければならない時間が迫ってきていました。そのとき、バイヤーが「まだ相馬原釜がある。今日はもう競りは終わってるけど明日の朝行って仕入先を見つけるしかない」と。
急きょ延泊することにして「明日必ず見つける」と覚悟を決めた瞬間でした。

【視察 3日目】  ラストチャンスの相馬原釜でまさかの

相馬原釜地方卸売市場

そして翌朝7時、相馬原釜地方卸売市場。
漁船から水揚げされる魚、隣の浜からトラックで運ばれてくる魚が次々と競り場に並んでいきます。
漁協職員や仲買人も続々と集まってくる。「この人たちの中に仕入先がきっといるはず」と思いながら競りの開始を待っていると、「あれ?こっちも見に来たの?」と明るく声をかけてくる人が。
この人こそ、フーディソンの仕入先の飯塚商店さんの先代社長の飯塚さん。
実は昨日相馬の別の卸売市場に行ったときにちょうど仕入れに来ていた飯塚さんと挨拶をしていました。
飯塚さん「仕入先探しはどうですか?」
私「なんとか見つけようと思ってるのですが」
飯塚さん「昨日息子(現社長)に東京から仕入先を探しに来ている人たちに会ったって話したら興味あるみたいだったけど、今日は仙台の展示会に出ているからいないんだよね」

!!!

息子さんの情報を聞いた我々は、その日の午後には仙台に向かい、現社長の飯塚哲生さんに会うことができました。飯塚さんと東京に魚を送ってもらう約束を取り付けなんとかフェアの開催が可能になりました。
今思い返してみても「あのとき先代社長に会っていなければどうなっていたんだろう」と人との縁と偶然が生んだ取引開始でした。飯塚商店さんとは今も取引が続いています。
こんな綱渡りの出張はもうしたくありませんが、今となってはスリリングで良い思い出です。

飯塚商店 飯塚哲生さん

これからも福島と

2019年7月には初めて相馬原釜から魚が届き魚ポチでのテスト販売を開始。10月には無事に「福島常磐ものフェア」を魚ポチで初開催することができました。後日、小売店舗のサカナバッカでも福島の商品を取り扱いたいと思い、サカナバッカの店長全員を福島に連れていき、検査体制や競りを視察してもらいました。現地を視察することで正しい知識を得、産地の人と触れ合うことで応援したいという気持ちも醸成することができ、フェアの後も魚ポチとサカナバッカで販売を続けることにつながりました。

2023年9月の「発見!ふくしまフェア」で福島関連のフェアは第7回を迎えます。
今後も、福島で出会った多くの産地の方々の復興に対する思いと福島の魚のおいしさを、私たちが発信していくことで復興のお手伝いをしていきたいと思います。

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