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おばあちゃんの悩み

ウチの家は、昔呉服屋を営んでいたこともあって、お袋は和裁から洋裁まで何でもこなします。
なのでコロナが蔓延した時も、お手製マスクをパパッと作って助けてくれました。
それに、妹からも頼まれた分があったようで、手慰み代りに毎日何枚か量産(笑)してました。


お手製マスク

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そのうちの1枚がこの写真です。
どこから引っ張り出してきたのか分かりませんが、ピエールカルダンのハンカチをマスクに改造してました(笑)。
先日、ネットでマスク用のゴム紐を購入して渡したところ、お手製のマスクを何枚か友達に渡したそうです。
そのマスクがまた別の人の手に渡ったそうなのですが、いたく気に入られたそうで、10枚作って欲しいと依頼を受けたそうです。

でまぁ、ここからがウチのおばあちゃん(お袋)の悩みなのですが、10枚と聞いて、連絡してきた方に

「ちょっと時間がかかるから待ってもらってね」

と言ったそうです。
それは良かったのですが、それをマスクを依頼された方に伝えると、

「あれだけの品質なので、お金を払います。いくらになりますか?」

と返されたそうです。
ウチのお袋は、典型的日本人ですから、

「そんなの手慰みなので、お金なんてもらえない。タダでいいわよ」

と返事したら、相手の方から、

タダでもらうなんてできない。あのマスクはお金を払わなければもらえない

と言われたらしいのです。
で、ウチのお袋としては、どうしたものかと悩んでいたのだそうです。


手製マスクのコスト計算

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話を聞いて「なるほどね」と思いました。
コピーライターをしているからこそ分かったのですが、価値があるからこそ人はお金(対価)を払うことをいとわない。
でもこの理屈を、多くの日本人は理解していません。
自分が当たり前に作れる技術を持っているものに関しては特にそうです。

でも、相手が価値を感じているものを、無理にタダで押し付けるのは、相手にとっても失礼に当たります。
そこで、お手製マスクのコスト計算をして見せたのです。

まず材料費として
 ※ ハンカチ(家で寝てたものを再生しているのでほぼタダ)
 ※ マスク用ゴム紐:1メートル10円
マスクに使うゴム紐は、1つにつき1メートルも必要ありませんが、計算を簡単にするためにこのようにしました。

次にそのマスクを作るためのコストですが、
 ※ 手間賃(制作コスト)
は、今の最低賃金が大体1,000円前後になっていることをあげて、1時間あたり手間賃として1,000円かかるとしました。

それ以外の雑費としては、
 ※ ハンカチの洗濯代
 ※ ミシンの電気代
などの諸経費が僅かながらにかかります。
ただ、これらの経費は微々たるものなので、一応0円でカウントしませんでした。
でも、こうした雑費がかかることは理解したようです。

で、全部を合計すると、マスクを1枚作るのに1時間ほどかかるので、大体1,000円になることが分かったのです。


ここから先はどう決めるか?

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「お袋のお手製マスクは、1枚1,000円の価値がある。
 あとは、それをどう判断するか。
 手慰みで作ってるものだから、手間賃を半分にするもよしだし、
 1枚1,000円もらっても別に問題ない。
 要は、このコストの説明ができるようになっていれば良い。
 聞かれた時に、こういうコストがかかってるから、この値段にしたと説明
 できる」

と言ったら、納得したようでした。


コスト意識を身に付ける

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ウチのお袋だけでなく、私がやったマスクのコスト計算のようなお金に関する計算が、日本人はめちゃくちゃ不得手です。
正当な労働に対して、正当な対価が支払われないのであれば、WIN-WINの関係ではないのです。
でも、
「お金のことをとやかく言うと、がめついと思われる」
といった抵抗感があるからか、日本人はそういう交渉をあまりしません。
これは、ライティングをしていると知識として入ってくるのですが、日本人がお金の勉強をしなさすぎているのが原因です。

もっともっと日本人は、お金の話をすべきです。
Microsoftのビル・ゲイツ氏にしろ、Appleのスティーブ・ジョブズ氏にしろ、会社を大きくする時は、先に投資で資金を稼いで、それから事業を展開しています。
そうした『投資』の技術を持っているのと、持っていないのとでは、大きく人生が変わることを、多くの日本人が理解していません。

実際、海外に生産拠点を移している多くの企業が、最初に想定したほどは儲かっていません。
これは、様々な条件が重なり合っているからですが、一番の問題は、そこに潜むコストをしっかりと計算していないことだと思うのです。
アフターコロナと色々騒いでいるようですが、どこを見てもそうした隠れ潜んでいるコストに目を向けているところは、ほとんどありません。

お袋のマスクのコストを計算していて、アフターコロナの話になるとは、とも思いますが、コロナショックを経験したからこそ、その前と今のコスト計算を、日本人全てがやってみるべきではないでしょうか(笑)。

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