ポジショナルプレーとは、配置プレーである


前回はアーセナル対マンチェスター・シティについて分析をした。初の有料を試みたが、予想以上に購入していただき大変感謝している。

マガジン「サッカーの学び舎」第4弾となる今回はポジショナルプレーについて書きたいと思う。

大学生である私の現在地から読み解くポジショナルプレーとは?是非温かい目で読んでいただきたい。

◾️目次
◽️ポジショナルプレーとは
◽️配置を解く
◽️相互作用を解く
◽️流れを解く
◽️おわりに


◻️ポジショナルプレーとは

ポジショナルプレーを今更説明する必要はないかもしれないが、再度確認したい。

ポジショナルプレーとは概念である。概念とは、気づかないだけで「いつの間にか」行っていることだ。そしてポジショナルプレーとは、「いつの間にか」ではなく、意図的に優位性を獲得し、勝利を掴みとるものだ。そしてその優位性は「質的優位性」「量的優位性」「位置的優位性」がある。優位性については以下で詳しく説明する。

これを深く読み解くのが今回のnoteである。

さて、タイトルである「ポジショナルプレーとは、配置プレーである」というのはファンマ・リージョの言葉だ。この「配置」というのがポジショナルプレーにおける肝だと考えている。

次章は、その配置について解いていく。



◻️配置を解く

そもそもポジショナルプレーとは、チェスから生まれたものだ。

今回はそのチェスと類似している将棋を参考にしよう。将棋には囲いというものがある。囲いは、玉を守ることだ。その囲いにはいくつかの型がある。例えば、穴熊・美濃囲い・矢倉...挙げるとかなりなものがある。それらをどのように使い分けるか?それは相手の飛車を中心とする配置によって判断する。もちろん人それぞれに好みの囲いがあるのは周知だが、相手の配置を踏まえた上で自分の駒の配置を決めるのだ。

それはサッカーに置き換えるとどうなるだろうか?簡単に言うと、相手が1-4-3-3なら1-5-4-1にしよう。と決めることに似ている。

もっと掘り下げよう。

サッカーにおける配置とは5W+1Hで決めるべきだと考えている。
つまり、「いつ」「誰を」「どこに」配置するかを明確にし、選手に「何を」「どのように」プレーするべきかを与えることだ。
「いつ」「誰が」「どこに」それを助けてくれるのが、3ゾーン(ディフェンディングゾーン・ミドルゾーン・ファイナルゾーン)と5レーンである。ボールがどこにあるときに、誰がどこにいつポジションをとるのか・相手がどこにいるときに、誰がどこにいつポジションをとるのか。例えばミドルゾーンでボールを味方DFが持っているときに相手のプレスラインは2人だから、センターレーンとハーフスペースに1人ずつ配置しようなど。
相手・味方・ボール・スペース・ゴールの位置によって「いつ」「どこで」「誰が」を明確にする。

そして配置した上でその選手が「何を」「どのように」プレーするべきか役割を与える必要がある。例えばWGが高い位置でボールを持ったら、CFはポケットに走るなど。

チームとして各選手の配置を決定し、配置された選手がどのようなプレーをするかを明確にする。それがポジショナルプレーにおける配置論だと考える。すると選手は「なぜ」そのポジションをとり、そのプレーをしたのか答えられるようになる。サッカーは意思決定を繰り返すスポーツである。その意思決定を原則(いつ、どこで、誰が、何を、どのように)に基づいて行うことで初めて「なぜ」を満たすことができるのだ。

以上が配置の5W+1Hだ。しかし、その配置を決める前にまずしなければならないことがある。それは「知る」ことだ。孫子の兵法の中にこんな言葉がある。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
「相手をよく知り、自分をよく知れば百戦しても負けることはない」と言うことだ。この言葉の通り、監督はまず自チームを知る必要がある。

将棋の話に戻ろう。将棋の囲いや攻め手を考えるときに、駒の役割を隠されたらどうなるだろうか?飛車や金、玉がどれかも分からない。そんな状態で優れた囲いや攻めができるだろうか。答えはNOだ。そのようにサッカーでも自チームの誰が飛車で、金なのかをより詳しく知る必要がある。それらを知った上で相手の駒を分析するのだ。相手強みはどこか。弱みをはどこか。そして相手の配置の特徴は何か。そこで初めて自チームの配置が決まる。

これまでを振り返ると、配置によって自チームの選手を最大限に活かしつつ、相手の強みを打ち消し弱みを突くことが分かるはずだ。

しかし、たとえ配置を完璧に仕上げたとしても試合に勝てるわけではない。私はこれをジャンケン理論と言っている。良い配置とは、簡単に言うと相手のパーに対し、チョキを出すようなものだ。それができれば、勝てる確率は上がる。しかし、それをしても勝てないケースがサッカーにおいて存在する。例えば日本の地域リーグのチームがバルセロナと戦ったとしよう。バルセロナの配置を確実に分析し、それに応じて配置を当てはめたとしても恐らく勝てないだろう。それはサッカー選手としてのレベルに圧倒的な差がありすぎらからだ。つまり、サッカーではパーに対しチョキを出しても勝てないことがある。しかし、反対に配置によって強いチームを倒すこともできる。なぜなら配置を極めればパーに対し、チョキを出せるのだから。

以上が私の配置論だ。



◽️優位性を解く

配置によって自チームの選手を最大限に活かしつつ、相手の強みを打ち消し弱みを突くことを狙いとするのは前章で述べた。それを端的に言うなら、優位性を獲得することだ。この優位性について1つずつ解いていく。

①位置的優位性

位置的優位性について触れるには、まず人間の死角について語る必要がある。人間の視野は目より上に60度、下に70度。そして右と左にそれぞれ100度とされる。

この視野外がいわゆる死角となる。簡単に言うと背中だ。あなたがこうして文章を読んでいる時、背中側では何が起こっているか分からない。人は死角という弱点を常に持ち合わせている。それを踏まえて位置的優位性を読み解く。

攻撃において、位置的優位とは相手の守備ラインを越える位置、もしくは相手の守備の矢印を多く受ける位置でボールを受けることによって①自らが優位になるケースと②味方が優位になるケースがあると考える。

相手の守備の矢印とは何か?それは視野内にいるOFを守備側の選手が意識することだ。人は視野内の敵を意識してしまうものだと考える。よって視野内にいるOFに対する意識を守備の矢印とする。
それを踏まえて事例をみていく。これは位置的優位が確立されていない例だ。

相手の守備の矢印は1つ。そして守備ラインは越えていない。そのため、自分も味方優位には立っていない。位置的優位は獲得できていない例だ。次はどうだろうか。

相手の守備の矢印は2つ。そして相手の守備ラインを1つ越えている。これは、自らのポジショニングによって相手に脅威を与えていることになる。そして、相手の矢印を2つ引き付けているため、味方WGに対する守備の意識を薄めていることにもなる。よって味方が優位になるだろう。そして次はどうだろうか。

これは相手の矢印を1つも受けていない。しかし、相手の守備ラインを2つも越えている。そのため、味方WGを優位にさせることはなくても自分自身はこのピッチ上で最も相手の脅威=位置的優位を獲得したと言っていいだろう。

位置的優位を一概に定義するのは難しい。大衆的な定義をするよりも、私の解釈としての位置的優位を示した。そして位置的優位には、選手の状態も含む。その状態を示す1つが、身体の向きだ。ゴールが中央にあるため、身体の中央=へそがゴールに向いているほど攻撃的な身体の向きと私は定義している。下の例を見てみよう。

ボールを受けたときにへそがパサーの方に向いている。この場合、ゴールに向かったプレーを判断することは難しい。しかし、へそがゴールに向くとそれが可能になる。

相手により脅威を与えることができる。そして脅威を与えるということは、相手の守備の矢印も自然と向かせることができる。その結果、味方を優位に立たせることも可能となる。

ここまでを位置的優位の説明とする。

②質的優位性と量的優位性

つぎに質的優位性と量的優位性を解く。が、その前にランチェスター戦略からヒントを得たい。ランチェスター戦略とは、弱者が強者に勝つための戦略として有名であるがこの戦略の原則として質と量がある。相手との戦力が全くの同等としたとき、量つまり兵士が多い方が勝つ。そしてそれは局地での戦いでの話だ。サッカーでいうなら、ボールサイドのことである。一方広域ではどうだろうか。その場合、より優れた武器を持った兵士=質が重視される。武器の質によって勝敗が決まるのが、質の特徴である。これらを参考に当てはめる。
質的優位性とは選手の質そのものだ。足が速い・身長が高い・一対一に強いといった質を活かす広域=スペースが必要だ。
そして量的優位性とは、兵力が同等の時で局地での戦いに活かせる。つまり、ボールサイドの局面で相手より多い人数を用意すれば優位に立てるというものだ。

以上が優位性の考えだ。そしてどの優位性を獲得するかが監督として重要となる。なぜならリソースは限られているからだ。人・スペース・時間・ボールには限りがある。それらをどこに投資して、優位に立つかが肝要だ。



◽️相互作用を解く

先程の章では優位性について説明したが、優位性には組み合わせることができる側面がある。というよりも相互作用している側面があるのだ。それを各チームの例を見て理解していく。

①質的優位性×位置的優位性

マンチェスターシティを参考にしてこの優位性の関係をみていこう。以下がシティがよくする配置だ。

①シルバへのパスが通る②シルバがサネにパスをする③サネがドリブルで突破する
この一連の流れはまさに位置的優位性と質的優位性の組み合わせだ。上述したように、シルバのポジショニングは守備の矢印を向かせるだけでなく、守備ラインを超えた優位な位置にいる。そこでボールを受けることで相手SBとCB両方を意識させる=喰いつかせることができる。するとWGのサネの質的優位性をより活かすことができる。サネに対し遅れて対応するDF陣は、もうサネを捕まえることはできない。この例からも分かるように位置的優位性と質的優位性は相性がいい。

②量的優位性×位置的優位性

これはサッリ・ナポリを例にしよう。サッリナポリは主に左サイドにオーバーロード=量的優位性をつくていた。

①いつものように左サイドに密集し、ボールを動かす②ボールを受けた選手は人数で勝っているため、プレスを受けない。そして壁パスを受ける③壁パスによって相手CBが喰いつく。その瞬間に背後へバックドアを仕掛ける。この③は相手の守備ラインを2つ越えてボールを受けるため、より脅威=位置的優位性を獲得したこととなる。サッリナポリの事例を見ると量的優位性と位置的優位性も相互に作用していることが分かる。

③量的優位性×質的優位性

これまで相互作用する事例を2つ挙げたがここであげる量的優位性×質的優位性は相性があまり良くないと考えている。それをサッリチェルシーから読み解こう。
サッリチェルシーの特徴としてボールサイドに比較的多くの人数を集める特徴がある。だが、オーバーロードをするサイドは特に決まっていない。そこでこんなシーンがよくある。アザールがボールサイドまで寄ってきて、受けたと同時に相手の守備組織へドリブルを仕掛けるものだ。

数的優位により、相手も味方も集めている。その限られたスペースの中でアザールが仕掛けるシーンが多々あるのだ。しかし、上述したように質的優位性にはそれを活かせるだけの広域=スペースが必要だ。ロケットランチャーで近距離の早撃ち対決をしてもピストルには勝てない。質には質を活かせる状況をセッティングしなければいけない。しかし、その状況が整っていない状況でアザールというロケットランチャーを突っ込ませるのはあまりにも無謀だ。
このように自分で自分の首を絞める現象は将棋でも起こる。将棋でいう質的優位性とは、飛車と角であることは言うまでもない。それらをどう活かすが重要である。しかし、以下の赤で囲われた盤面を見て欲しい。

自らの駒で飛車と角を移動できなくさせてしまっている。しかしこの赤枠では量を満たしている。量的優位性で上回っていても質的優位性を失わせている可能性があるのだ。

このような現象がサッカーで起こってしまう。サッリチェルシーと将棋から、量的優位性に質的優位性は相性が悪いと私は考えた。


以上がそれぞれの優位性の組み合わせに関する考察だ。優位性が相互作用する配置をポジショナルプレーでは構築する必要があることが分かる。



◽️流れを解く

最後の章に突入する。ポジショナルプレーにおけるミクロとマクロについてフットボリスタの記事で触れていた。

https://www.footballista.jp/column/57857

サッカーには将棋と同じように、主戦場が存在する。そしてサッカーにおいて、それはボールがあるエリアとなる。その主戦場をどう制するかによって盤面全体に影響を及ぼす。全く将棋と同じだ。

そして主戦場はいわばそこの勝敗で戦況が大きく変わる場だ。ということは、主戦場を切り抜けるための配置をしなくてはならない。盤面=ピッチという戦場がある。人には11人という限りがある。それを踏まえて、どの選手をどのくらい主戦場に配置し、それ以外の戦場に他の選手を配置するかで戦況は大きく変わるのだ。

そしてサッカーでは主戦場が常に変わる。何故ならボールがあるところが主戦場だからだ。よって主戦場を切り抜けることをせずに、他の戦場に場を移すこともあるのだ。しかし、点を取るためにはどこかで抜け出す必要がある。そのためには、優位性が必要なのだ。そしてその主戦場を切り抜けると、他の戦場も優位となる。何故なら、敵は破られた主戦場を補う必要があるからだ。補わなければ王=ゴールがやられてしまう。補うと、違う戦場が手薄になり優位性が生まれる。以下が一例である。

主戦場①を抜け出すために、位置的優位性によってWGの質的優位性を引き出した。その結果、主戦場を突破することができた。そのWGはボールを運び主戦場を移す。すると他の戦場=逆サイドのSBはその主戦場を補うために中央へ駆けつけるだろう。その瞬間、他の戦場=逆サイドのWGはフリーとなる。そして、ゴール前でボールをもらいフィニッシュすることができる。

このように主戦場は移り変わり、どこかで主戦場を切り抜けるための勝負が起こる。その勝負によって、他の戦場に影響を及ばずのだ。

この影響というのはどこまで及ぼしているかは分からない。まさにバタフライ効果だ。蝶の羽ばたきがどこかのハリケーンを引き起こす。そのようにボールのコントロール1つが主戦場を切り抜けることに影響を与え、その影響が他の戦場に影響を与えている可能性があるのだ。それは数字で表すことはできない。まさにカオス(部分の総和は全体以上。1+1は?)だ。

しかしサッカーには攻撃方向とピッチ、そして4局面などフラクタル(部分の総和は全体である。1+1は2)な側面もある。

配置もフラクタルに含まれるのかもしれない。いや配置による相互作用はカオスだ。

「サッカーとはカオスであり、フラクタルである」というビトール・フラーデ教授(戦術的ピリオダイゼーションの生みの親)の言葉は正しいと私は思う。



◽️おわりに

いかがだったろうか。ポジショナルプレーの全ては配置から始まる。そしてその配置は「知る」ことから始まるのだ。優位性はそれから起こる。

これは現時点での私の考えだ。まだまだ指導者人生を通して変わりゆくに違いない。しかし、その都度整理していく必要はある。

皆さんの新たな学びとなったら幸いだ。

これからもサッカーの新たな学びを提供するために、自分自身が学び続けたいと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました。


●書き手
小谷野拓夢
https://mobile.twitter.com/foot_koyahiro


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