「ポジショナルプレーvsストーミング」論争に林舞輝が挑む。欧州サッカーの最新概念を「言語化」する


インタビュー・文 浅野賀一(footballista編集長)
編集協力 都築 悠(フットボリスタ・ラボ)

◇サッカーという“ゲーム”の5つの攻略法
◇風間サッカーはポジショナルプレー
◇モウリーニョはなぜ輝きを失ったのか?
◇ポジショナルプレーの弱点。「時間的優位」をめぐる攻防
◇「スペースの三次元化」=ビーチサッカー
◇秩序vsカオスは代理戦争。思考時間の短縮とは何か?

林 舞輝(@Hayashi_BFC

1994年12月11日生まれ。23歳。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチーム(U-22)のアシスタントコーチを務め、主に対戦相手の分析・対策を担当した。モウリーニョが責任者・講師を務めるリスボン大学とポルトガルサッカー協会主催の指導者養成コース「HIGH PERFORMANCE FOOTBALL COACHING」に合格。


■サッカーという“ゲーム”の5つの攻略法


―― 今回インタビューさせてもらうテーマは「ポジショナルプレーvsストーミング」というfootballista62号の特集に絡めたものです。

それで、どうして今回あらためて林さんに話を聞きたいと考えたかというと、最初に片野さんにこの2つの対立構図について雑誌の中で言及していただいて、それに対してweb界隈でポジショナルプレーとストーミングというものが本当に対立する概念なのか? 要はポジショナルプレーは戦略レベルの話で、ストーミングは戦術レベルの話なのではないか、という反論というか認識の齟齬がありまして……。なのでぜひ、林さんの意見を聞きたいと思いました
「その2つを対立概念として語れるかどうかなんですけど、僕はできると思います。簡単に言っちゃうと、ポジショナルプレーというのは『スペースの支配』、ストーミングというのは『時間の支配』です。これが面白いのは、『秩序vsカオス』とか『ポゼッションvsトランジション』とか『技術vsフィジカル』とか、『ビルドアップvsハイプレス』もそうかもしれないですけど、これは僕にとっては『スペースの支配vs時間の支配』という対立概念の代理戦争のようなものだと認識しています」

―― 両方とも戦略レベルの話ということですか?
「戦略と呼べるかはともかく、少なくとも僕は同じ次元の話だと考えます。難しいのはリバプールもポジショナルプレーをするし、チェルシーもストーミングをしているということなんです。1か0かの話ではなく、結局そのチームであり監督がどこに重きを置くかに過ぎない。だからポジショナルプレーをしているからストーミングをしていないわけではないし、ストーミングをしているからポジショナルプレーをしていないわけでもない。次にはっきりさせたいのは『ポジショナルプレーもストーミングも戦術ではないし、ゲームモデルでもない』ということです。これを取り違えてしまうから話がこんがらがったり噛み合わなくなるのかなと」

―― それでは何でしょう?
「ポイントは、サッカーを“ゲーム”として捉えることです。まずここから始める必要があります。それで、サッカーをゲームというふうに捉えた時に、ポジショナルプレーとストーミングというのは、『サッカーというゲームの攻略法』の話をしていると考えていただけるとわかりやすいと思います。ところで浅野さん、マリオやります? スーパーマリオブラザーズとか」

―― テレビゲームのですか? ええ、やりますよ。
「あれで喩えて考えると、『ステージクリアに時間がかかってもいいからより多くのコインを取って最終的なポイントを稼ぐ』か『コインを取るよりもとにかく速くステージをクリアしてポイントを稼ぐ』か、という話なんですよ。どちらが良い悪いとか、正しい間違いとかではないし、これは何をもって“面白いゲーム/面白いサッカー”と考えるかという話でもあります。コインを稼ぎまくることに美学を感じるプレーヤーもいれば、ものすごい速さでステージクリアをすることにゲームの楽しさを見出すプレーヤーもいるわけじゃないですか。これと同じで、ポジショナルプレーもストーミングもサッカーというゲームの攻略法というのが僕の見解です。
 もう一つ、サッカーにおいて僕が言った『攻略』はイコール『勝ち』ではないんです。『勝ち』と『攻略』は違います。勝ちを目指すのは当たり前。その上で、『どう勝つか』という話です」

――「勝つための方法論」ではなく、あくまでも「何がカッコいいと感じるか?」という美学のようなものですか?
「勝つための方法論でもあり、美学でもあると思います。要は最強のチームが優勝するとは限らないのと同じように、もう一回W杯をやってもフランスが優勝するとは限らないのと同じように、僕が言う『攻略』というのはイコール『勝ち』ではない。攻略しても負ける時はある。でも、サッカーというゲームを攻略したいと考える時に、一体全体サッカーの何を攻略すればいいのか? というのが次に考えなければいけないことですよね。実はサッカーってすごくシンプルにできていて、攻略しなきゃいけないものは5つしかないんです。それは ①自分 ②相手 ③ボール ④スペース ⑤時間。これしかないんです、サッカーって。ゴールを決めてゴールを守る、というサッカーの本質を攻略するための対象は5つしかない」

―― なるほど。スペースを攻略するのがポジショナルプレーで、時間を攻略するのがストーミングである、と。
「この5つの中で普遍性があるのは、③ボール ④スペース ⑤時間 の3つです。①自分=自チームの戦力は変わるし、②相手=敵チームの戦力も試合ごとに変わるんですけど、ボールが突然ラグビーボールになることはないし、ピッチが突然大きくなったり小さくなったりすることもないし、試合時間が突然『今日は5時間でやります』となることもないわけです。なので、普遍的なスペースの支配にアプローチするという意味ではポジショナルプレーは理に適っているし、同じく時間の支配にすべてを懸けるストーミングも理に適っている。加えて言うと、ボールを自由に扱えるタレントというのも、いつの時代も普遍的に優位性を持つわけです」

■風間サッカーはポジショナルプレー


―― 林さんの整理の仕方で概念的には凄くすっきりしました。次はもう少し具体的なところに踏み込んでいきたいのですが、林さんはポジショナルプレーとストーミングをどう定義しますか?
「ポジショナルプレーというのは、

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