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ゲームモデルに基づいたPDCAサイクルについて①

みなさんこんにちは。少しだけお馴染みになりつつある?わっきー(@kumaWacky)です_(:3」z)_
今回は1月13日に行われました、和歌山県高校サッカー新人戦(2回戦)における、粉河高校サッカー部の実践報告をお届けします。

【要約】
・ゲームモデルに基づいた試合に向けての準備
・試合における実践とその評価
・抽出した成果と課題について

今回は「①」ということで、実際の成果や課題の落とし込みについては後日「②」としてまとめたいと思います。まず、新チーム始動(2018年12月~)に際して作成したゲームモデルがこちらです(以前から一部改定)。

12月には練習試合を何度か経験しつつ、練習を通して落とし込んできたゲームモデルに基づくプレーについて、トライ&エラーを積み重ねてきました。その上で、新人戦初戦となる1月13日に向けて整理作成したゲームモデルがこちらです。

では、新人戦初戦に向けた粉河高校サッカー部の取り組みを振り返っていきたいと思います。
※守備の局面にある「枝D理論」という言葉、ご存知でない方は是非検索してみてください。なお、ここに書かれた①・②等は理論内の共通用語です。

【試合に向けての準備】

①(11月の取り組み)
新チームの実質的な始動は、選手権大会が終わった11月初頭になります。この時点ではまだ月末にリーグ戦の入れ替え戦が控えており、3年生も何人かは練習に参加していました。また、入れ替え戦の結果次第で長期的なプランが変わり得たため、具体的な新チーム用ゲームモデルを構想しつつも、この試合用にゲームモデルを作成し、それに基づいた練習メニューを組み立てました。
特記しておく点としては、選手たちのサッカー理解度を向上させるために「ミニゲーム時に自分たちで簡易版ゲームモデルを作成する」取り組みを始めたことが挙げられます。8vs8+GKのハーフコートゲームにおいて、以下のようなボードを用いてチームごとにゲームモデルを作成し、共有します。そして実践→話し合い→再び実践と繰り返します。まさにPDCAサイクルですが、目に見えてゲームの質が向上していきました。プレーだけでなく、選手たちのコミュニケーションの質も大きく改善され、改めて「言語化」の大切さを感じました。

②(12月の取り組み)
入れ替え戦の結果、県リーグ1部残留を決め、チームとしての長期的なプランが大枠で決まりました。また、新チームの本格的な始動に向け、12月は重要な期間になると位置付けていました。その1つ目が「枝D」の導入です。詳細は割愛しますが、自チームの大きな課題と感じていたのが「守備」の部分であり、また自チームのスタイル上「攻撃的な守備」の実現を目指していましたが、なかなか答えを見出せずにいました。そこで出会ったのがこの理論で、12月の半ばに講習に来て頂きつつ、その流れで新チーム初の練習試合にも同行して頂きました。選手たちは懸命に取り組んでくれ、試合でも思っていた以上の成果を掴むことができました。ただ、選手によっては「今までの感覚」とは異なる判断、振る舞いが求められることもあり、継続的に積み重ねるには丁寧な取り組みが必要だと感じました。そのこともあって、12月はこの守備理論を実用レベルに押し上げるための練習を軸に設定し、練習試合においても同様に取り組むこととしました。また、前月から進めていた理解度の向上に向けた取り組みの成果もあって、年末に行われた県サッカーフェスティバルではチーム全体で成長の手応えを共有できたと思います。

③(1月の取り組み)
年末年始のオフが明け、1月3日に初蹴りを実施した後の5日から活動を本格的に開始しました。新人戦までの長くない時間の中、軸としては「守備理論の確認」「攻撃時の基礎構造(ゲート)」「スローインの設計図」を設定しました。守備については、プレス組織の確認、ポジショニングの確認、試合で得たエラー発生への対応の確認を行いました。攻撃についてはゲート(相手選手の間)の使い方についての確認を行いました。スローインについては、選手たちの混乱を避けるため、「自陣での設計図」と「相手陣内での設計図」のみに分類し、特に相手陣内での設計図については投げ分けの練習、動きの練習、実際のプレーとしての流れの確認等を行いました。もちろんその他細々と取り組みましたが、特にゲームモデルに関わる部分としてはそのような形で準備をしました。

【試合における実践と評価】

さて、いよいよ試合当日を迎えました。非常に良い天気に恵まれ、絶好のサッカー日和でした。選手たちも程よくリラックスしていました。アップ開始前、作戦ボードを囲んで最終確認を行いました。ポイントとしたのは「プレスの役割の確認」のみです。このプレスは、「受け身」ではできません。いかに自分たちが積極的に主導権を奪いに行けるか、ここが一番重要という位置付けでした。攻撃をしていようとも、「攻めさせられている」のはしんどいよね?という部分にも繋がっています。
とは言え、新チーム初の公式戦。ましてやトーナメントです。余計な重圧はかけずに来ましたが、それでも気負いや不安、プレッシャーを感じるなという方が無理な相談だとも思います。

そして迎えたキックオフ。立ち上がりは悪くなかったです。相手のプレスがライン形式なのでゲートを通過し前進も出来ていました。相手のボールを組織的に奪うことも出来ていました。ところが、開始しばらく経った辺りでショートパスのズレが続き(スペースor足元のズレ)、テンポアップの噛み合わせが悪くなり始めました。それにより「判断の共有」が損なわれ始め、「受け身」スイッチが静かに押されたように思います。結果、相手への圧力が弱まり、相手の前進を許します。そこで、CBに「相手が前のめったから、シンプルに裏へ」と伝えたところ、程なくその形で先制しました。こちらとしては、ここから少し楽になって圧力を高めていけると想定したのですが、選手たちはなかなか思い切れなかったようで、結局は圧力を届かせられないまま相手の前進を許し続けてしまいました。その流れの中、相手のフリーキックを一度は弾き返したものの、引ききってしまったスペースでセカンドボールをシュートされ失点。前半を1-1で折り返しました。
ハーフタイムには選手たちから「圧力が届いていない」という声が聞かれました。こちらからは、「プレスの開始ラインを高くする」「それに合わせて全体の重心も上げる」「攻撃時の中盤を経由する形へのチャレンジ(ゲート受け・サポートの連動)」を伝えました。後半立ち上がりは修正ができ、押し込む場面も増えました。しかし、1stプレスを通過された後、ボールへの意識が強まり過ぎて組織的な守備が徹底できなくなって来ました。結果、再び相手の前進を許し、前半途中に似た展開となりました。そして同じような形で追加点を挙げたものの、プレスにエラーを抱え続けて受け身となり、最後まで主導権を握って戦えたとは言えない試合となりました。
なお、スローインについては決定機を作り出せた場面もあり、全体的に手応えありだったと評価しています。

【抽出した成果と課題】

なによりも、選手たち自身が試合の中で起きていることについて、ゲームモデルやそもそもの原則に基づいてコミュニケーションを取り続けていたことが一番の成果と思います。ましてや、公式戦とは言えいくつかのチャレンジを行いながらの試合でした。上手く行かないとしても、なんとか解決しようと取り組めたこと、その結果として試合の中で改善できたこと、そして何より勝利できたこと。得たものは少なくなかったと思います。
ただ、ゲームモデルの軸として設定していた「プレス」については多くの課題が残りました。ポジショニング、開始位置、強度、そして流動する場面における適用、ほぼ全体にわたって課題がありました。とは言え、ここまでの練習試合を通して、これらの課題を克服出来ていたことも事実です。ここからは、いかにして色々な試合、色々な局面でその実行の質を上げることが出来るか、かと思います。
また、攻撃時にも「攻め急ぎ」とそれに付随して「ポジショニングエラー」が多く見られました。ここもまた今後に向けて整理し、改善していきたいと思います。

【これから】

まず、選手たちにはスプライザを用いて試合の動画を共有済みで、オフ明けのミーティングにて全体で分析を行うため、「試合で感じたチームとしての成果」「試合で感じたチームとしての課題」をそれぞれ1つ以上考え、それが見られる場面をピックアップしてくることを宿題にしました。その場で出されるであろうポイントを全体で共有し、来月頭に行われる新人戦3回戦に向けた取り組みへと接続したいと思います。ミーティング以降の様子については「その②」として後日発信させて頂きます。

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