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サッカーの試合中継で使われるデータの読み解き方【入門編】

サッカーの試合中継でハーフタイムや試合後にいろいろなデータが映し出されることが多くなってきている。しかし、実況者や解説者がそのデータについて言及する時間は限られており、視聴者がそのデータについてあまり深く理解できていないケースが多いのではないだろうか。

そこで、もっと多くの人にサッカーに関わるデータへの興味・理解を深めてもらうために、試合中継でよく映し出されるデータを対象にして、その読み解き方の1つの解釈をまとめてみることにした。

試合のデータのイメージ


シュート数は多いほうがいいの?

サッカーはより多くの得点を奪ったチームが勝利するゲームである。そして、その得点を奪うためのプレーこそがシュートである。だとすると、シュートをより多く打ったほうが勝利に近付くのだろうか。

ディフェンスの選手たちがゴール前を守り、GK(ゴールキーパー)が手を使ってゴールを守る。その状況下において、シュートは数多く打てばそのうち入る、といった簡単なものではない。そもそも、シュートを打つ位置やディフェンスの状況によって、シュートの入りやすさは大きく変わるものである。

よって、一概にシュート数の多さが得点の多さや勝利に結びつくわけではないと言える。

では、どのくらい得点に近付いたのかをシュート数から判断することはできないのだろうか。

シュート数に関連するデータとして「枠内シュート数」というものがある。

「枠内シュート」とは、ゴールの枠内に飛んだシュートのことである。
ゴールに届く途中でディフェンスの選手にブロックされたシュートは枠内シュートに含まない(データの取得元によって定義に差はあり、ブロックされたシュートを枠内シュートに含める場合もある)。

枠内シュートの定義(範囲)


「シュート数」と「枠内シュート数」という2つのデータについて考えたときに確実に言えることは、シュート数に対する枠内シュートの割合は多い方がいいということである。それは、シュートが枠に飛ばなければ基本的に得点は生まれないからである。シュートを20本打って枠内シュートが0本より、シュート1本でそれが枠内シュートであるほうが、得点に近付いたという考え方もできるだろう。

シュート数のデータを見るときは、「枠内シュート数」にもっと注目してみよう。

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パス本数が多くパス成功率が高いほうが勝利しやすいの?

一見わかりやすいように思えるパスのデータ。パス本数の多いチームが試合を優勢に進めている(主導権を握っている)と考える人は多いのではないだろうか。それは合っている場合もあるし、合っていない場合もある。

一般的にパスは、自陣でのパスほど成功しやすく、敵陣(特にゴール近く)でのパスほど失敗しやすい。

エリアごとのパスの成功のしやすさ
(イメージ)


自陣でパスを回している時間帯が多いほど、パス本数は多くなり、パス成功率は高くなりやすい。相手ゴールに近付こうとするパスや決定的なチャンスを作ろうとするパスを多く狙うほど、パス成功率は低くなり、結果として攻守が入れ替わりやすいためにパス本数も少なくなる。

もともとパスをつなぐ傾向にあるチームが相手の守備を揺さぶるために自陣でパスを回す時間が長くなったとき、結果としてパス本数が増え、パス成功率が高くなるのはある程度意図したものである。

しかし、縦に早い攻撃でゴールに近付こうとするチームが相手の守備に苦戦して自陣でパスを回さざるを得なくなったとき、パス本数が増えてパス成功率が高くなることは、そのチームにとって良いこととは言えないだろう。

パス本数の多さやパス成功率の高さは、必ずしも良いとは評価できないということである。


実際に、過去4シーズンのJ1の試合のパス成功率とパス本数のデータからその傾向を確かめてみる。

過去4シーズンでパス成功率が最も低かった2017年第31節の柏レイソルは、パス成功率がわずか37.3%ながらも2-2の引き分けで勝点1を獲得。パス成功率がこれだけ低くても、2ゴールを奪って引き分けに持ち込むこともあるということである。


さらにパス本数を見ても、過去4シーズンでパス本数が最も少なかった2015年2ndステージ第3節の松本は、パス本数がわずか157本ながらも2-0で勝利している。

一方、パス本数が最多となった2017年第8節の川崎フロンターレは、2ゴールを奪いながらも引き分けに終わっている。

パス成功率が高かったり、パス本数が多かったりするほうが勝利に近付くわけではないということがわかるだろう。


さらに、パス本数の多さに比例する「ボール支配率」のデータでも傾向を確かめてみる。

ボール支配率と勝敗の関係を見てみると、なんとボール支配率の低いチームの勝利数が多くなったのである。このデータからも、パス本数の多さやボール支配率の高さが必ずしも勝利に結びつくわけではないことがわかるはずである。

ただし、これが世界のサッカーに普遍的に当てはまるとは言い切れないだろう。リーグに所属する各チームのプレースタイルによって成績の割合が変化すると考えられる。例えば、過去のJ1の傾向として、ボール保持よりも速攻を志向するチームのほうが多くて質が高かった場合、そのことがこの数字につながるはずである。

いずれにしても、パス成功率の高さ・低さ、パス本数の多さ・少なさ、ボール支配率の高さ・低さが勝敗に結びつくわけではないと言える。


一方で、これらのデータはチームの志向するプレースタイルを読み解くためのヒントになる。

2019シーズンのJ1各チームのパス本数のばらつきを見ると、チームごとに傾向が異なることがよくわかる。

川崎F、名古屋、横浜FM、神戸らはパス本数が多くてボール保持を志向するチームであり、湘南、松本らはパス本数が少なく速攻を志向するチームであると推測できるだろう。これらは多くのJリーグファンのイメージ通りかもしれない。

また、パス本数のばらつきに注目してみると、川崎F、名古屋、神戸、大分、G大阪、C大阪、浦和らは最多と最少の差が大きく、試合によって戦い方を変えているのではという推測ができる。逆に、磐田、FC東京、松本らは最多と最少の差が小さく、どの試合でも戦い方をあまり変えないのでは(自分たちの志向するスタイルをやり切ることを重視する)という推測もできるはずだ。当然ながら対戦相手の戦い方やチーム状況(起用可能メンバーやコンディション)も影響するが、17試合分のデータには一定の傾向が表れると考えてよいだろう。

さらに、ばらつき具合を細かく見ると、C大阪は2試合のみ大きく数値が離れており、その試合のみ戦い方を変えたのでは?という推測もできるだろう。

応援しているチームのパス本数の平均やばらつきを知っておけば、パス本数のデータからその試合でのチームの調子や戦い方を推測する、といった楽しみ方もできるのではないだろうか。

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走行距離から何がわかる?その目安とは?

「走行距離」とは、総移動距離(km)のことである。
“走行”という言葉が使われているが、走っている距離だけではなく、歩いてる距離も含めた試合中のすべての移動距離を示すデータである。

過去4シーズンの走行距離のデータを見ると、チーム合計の平均は112.1kmとなり、1選手あたりで約10.2kmとなる。

1選手あたり10kmを超えるかどうかは1つの目安となり、11kmや12kmになると走行距離が多いと言えるだろう。

選手個人で考えると、GKは基本的に自陣のペナルティーエリア内やその近辺にいるため、他のポジションの選手に比べて走行距離は確実に少なくなる。逆にボランチの選手やサイドの選手は攻守に関わってピッチを上下動することで走行距離が多くなりやすい。

チーム全体で考えると、ポジションチェンジを多用したり、「全員攻撃、全員守備」のようなダイナミックなスタイルを志向する場合はチームとしての走行距離が多くなりやすく、ポジションや立ち位置を守ることを重視するチームは走行距離があまり多くならない傾向となる。

走行距離もまた、チームの志向するプレースタイルを読み解くヒントになるデータと言えるだろう。


スプリント数から何がわかる?その目安とは?

「スプリント数」とは、1秒以上24km/h以上で走行した回数のことである(Jリーグの場合。リーグやデータ取得元によって定義は異なる)。

スプリント数が多いほうがより多くプレーに関与しているとも考えられ、チーム合計でのスプリント数が多いほうが勝利しやすいとも考えられる。実際にはどうだろうか。


過去4シーズンで最少のスプリント数であった2015年2ndステージ第3節の甲府は2-0で勝利している一方、最多のスプリント数であった2016年1stステージ第4節の湘南は0-2で負けており、スプリント数の多さが勝利に結びつくとは言えないことがわかる。

また、1選手あたり20回を超えるかどうかは1つの目安となり、30回以上になるとスプリント数が多いと言えるだろう。

選手個人で考えると、ディフェンスラインの裏のスペースを積極的に狙うようなタイプのFWの選手や攻守に上下動するサイドバックの選手のスプリント数が多くなりやすい。

また、試合内容としては、攻守の切り替えが多い、言い換えると両チームが交互に攻め合う様な展開であればあるほど試合全体のスプリント数は多くなりやすいと言える。

どれだけダイナミックなプレーをしているかの指標としてスプリント数を見てみるとおもしろいのではないだろうか。

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データと実感をすり合わせてみよう

リアルタイムでのデータの取得や集計・分析の技術の進歩により、今後はデータでより一層いろいろなことが表現され、データがさらに身近なものになっていく可能性が高い。

データは事実を表すものであるが、さまざまな要素や条件が絡み合うサッカーにおいては1つのデータから複数の解釈ができることが多い。

試合を見たときの実感とデータをすり合わせることで、自分なりのデータの解釈の仕方ができあがっていくことだろう。

データという観点からもサッカーを楽しめるようになると、サッカーの面白さがより一層増すのではないだろうか。

(記事内のデータ:Stats Stadiumのデータより引用)


筆者:polestar

1998年W杯での中田英寿の活躍に魅了されてサッカー観戦好きに。現在はアーセナルと川崎フロンターレをメインとし、プレミアリーグとJリーグをチェックしている。2017年始めからブログを続けており、最近ではデータ分析やインフォグラフィックへの関心を深めている。フットボリスタ・ラボのデータ部にて活動中。
【Twitter】polestar
【blog】Love football 〜I Love Pass&Move〜

※本記事はフットボリスタ・ラボとデータスタジアム社運営のウェブサイト「Football LAB」の連動記事です。
Football LAB
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