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ゲームモデルに基づくPDCAサイクルについて③-2

みなさんこんにちは。今回はあまり間をあけずに登場しましたわっきー(@kumaWacky)です。

前回の記事は、和歌山県1部リーグ開幕に向けた準備~開幕戦までの内容でした。予定では第4節までの流れをまとめて記事にするはずだったのですが、あれよあれよと長くなってしまいまして、途中で区切りを付けて「その①」「その②」という形を取ることとしました。

と言うわけで、今回は第2節~第4節にかけての取り組みとマッチレポートを中心にお届けしたいと思います。

前回最後の予告通り

■[第2節]潜んでいた落とし穴
■[第3節]和歌山工業高校にリベンジ成る
■[第4節]中1日で前回王者はツラいよ

の3本立てでいきましょう。

[第2節]潜んでいた落とし穴

開幕戦の近大和歌山戦は、大きく表現すれば「手応えアリ」でした。試合自体は敗戦しましたし、せっかくの決定機も決められず無得点でしたので、決して「良かった」という訳ではありません。
しかし、90分の各所に「成果」と呼べるものが確実に見られました。ただ、実はこの時点ですでに落とし穴は開き始めていたようです。思いの外の好感触に、次節へ向けての準備に少なからず油断が発生していたように思います。
それは試合開始後しばらくして顕在化してきました。立ち上がりから中盤を軸として押し上げ続け、相手ゴールへ迫る場面が続きました。しかし、対戦相手の田辺高校は今までの対戦において毎回苦しめられた相手でもありました。田辺高校は守備に粘りがあり、特に「中盤を封鎖して主導権を握らせないとい」う対応に我々は苦しめられてきましたが、そこへの対策を怠ってしまっていたことに徐々に気付き始めました。案の定、中盤の選手たちが相手の配置や圧力に戸惑い始め、ビルドアップを失敗してショートカウンターを受ける場面が増え始めました。ベンチからはオープンスペースを使うように指示を飛ばし続けますが、上手く修正できないままに同様のミスから失点をしてしまいます。焦ってしまった選手たちは、なおのことミスを続発する悪循環にはまり込み、苦しみながら前半を終えて戻ってきました。

ハーフタイムには相手が中央を封鎖しているので、ボールの流れの逆側ハーフスペースが空くため、ここへ横パスを供給して前進することを提案しました。また、相手の網の前で時間を消費しないように、サポート選手へのバックパスを交えて安全な時間帯を生み出しつつ、落ち着いて駆け引きをすることも伝えました。

後半が始まり、何も変わっていないことに驚きました。おそらく選手たちも言葉の上では分かってくれていたようですが、その方法をいかにして実行するのかという部分が抜け落ちてしまっているようでした。相手が封鎖している前まで進み意識を引き付けるまではいいのですが、結局そのまま網に向かって突撃を繰り返すことが続きました。そうこうしているうちに前半同様、ビルドアップの失敗からカウンターを受け追加点を許します。こうなってしまうと選手たちは焦るばかりで、ベンチから指示を伝えても一向に改善される気配が見られませんでした。それでも選手たちは意地を見せ、なんとかロングカウンターから1点を返すも、1-2にて敗れる結果となりました。

試合終了後、選手たちの空気は重苦しく、何をしていたのか分からなかったという感想が多く聞こえました。そこで、もう一度ビルドアップの設計図から見直すことを伝え、次節へと向かうことにしました。

[第3節]和歌山工業高校にリベンジ成る

ゲームモデルとして中央突破を軸としていますが、それは決して中央突破に固執するという意味ではありません。しかし、ある意味で選手たちにとってはそこがプライドの置き所のようにもなっていたと思います。それゆえに、駆け引きにおいて中央突破へのこだわりが必要以上に強まると、相手の対応次第では第2節のような自縄自縛にも似た結果になることを痛感しました。

そこで、あくまでも「中央を自分たちの軸とするため」に、中央にこだわらない形についても丁寧に整理をする必要が生まれました。とは言え、次戦まで中4日という日程と入試関係のスケジュールとの重なりもあり、満足のいく練習はできませんでした。ビルドアップについては「配置における基本ルール」のみを伝え、イメージの整理に努めました。

試合前日にはスポーツトレーナーの奥村正樹君(@Masa19901)がチームを訪れ、「止まる」動作に関する実践をしてくれました。結果として、ビルドアップに関してよりも身体の扱い方に意識が向いた状態で試合に臨む形になったように思います。
これが奏功したのか、選手たちは試合にしっかり集中し、立ち上がりから五分以上の戦いぶりを見せてくれました。3バックの相手に対し、ボールを奪取した早い段階でサイドのスペースを突く狙いや、中盤の数的同数や不利な状況にも落ち着いてボールを前進させつつチャンスを伺うことが共有されていたと思います。相手も力のあるチームですので、再三こちらのゴールが脅かされる場面もありましたが、スコアレスのまま前半を終了し選手たちが戻ってきました。

お互いにボールを保持すると流れを掴み相手ゴールへ迫るというシーソーゲームの様相だったので、ハーフタイムではオーバーペースに陥らないように落ち着いて駆け引きをしていこうということ、そのためには攻め急がずにサポートの位置をしっかり守り、意味のある情報量を増やして判断をお互いに助け合うこと、そしてなにより相手陣内でのプレス圧を上げ、ゴールを奪いに行くことを確認しました。

後半開始後しばらく、前半よりは少し落ち着ついた展開が続きました。そして20分を過ぎた頃、相手陣内でこちらの圧力の網にかかったボールをしっかり回収し、相手が整いきる前に最前線へ供給、ワンコントロールからミドル一閃の値千金のゴールが生まれました。
とは言えまだ時間は半分残されていますし、相手も意地があります。受け身にならないようにしつつも、選手たちのコンディションをしっかり観察し、足が止まり始めた選手を交代させながらバランスを保ちました。相手はサイドからの侵入を繰り返していましたので、サイドでの対応と中央の戻り・準備に対して声をかけ続け、一丸となって戦いました。

そして試合終了。先月の練習試合で1-6で敗れた相手に1-0で勝利を収めることが出来ました。

[第4節]中1日で前回王者はツラいよ

そして中1日という日程にて、前年度王者である和歌山北高校との対戦となりました。これは本来なら2月半ばに開幕戦として行われる予定だったもので、新人戦の日程との関係で予備日である3月23日に移動してきたカードです。田辺高校との対戦から数えても8日で3ゲーム。2節~3節が中4日、3節~4節が中1日という厳しい日程のうえに対戦相手が対戦相手ということで、前半は出来るだけ引いて耐えるプランを作成しました。基本フォーメーションを[4-5-1]とし、中盤をショートパスで切り崩させないようにケアしつつ、組織的な守備からカウンターを狙う形としました。

立ち上がりから選手たちもしっかり集中出来ており、相手を要所で封じていましたが、コーナーキックのクリア時に味方同士が交錯。結果的にオウンゴールにて先制点を献上してしまいました。ここで気持ちが少し落ちて受け身に転じてしまったところに、相手も揺さぶりをかけてきます。バックラインからの正確無比なロングフィードによって後手に回らされる場面が増え、対応が遅れてしまううちに失点が重なりました。

ハーフタイムでは選手たちから「ロングフィードに対抗するために前線から圧力をかける」提案がなされ、並びを4-1-2-3に変更して戦うことを確認しました。(ちなみにこの時、私は「フィード役にパスを供給している選手」をターゲットにする提案をしましたが、選手たちは「フィード役の選手そのものをターゲットにする」という意見だったので、選手たちの意見を採用してみることにしました。)

後半、圧力は届き始めるのですが、やはり相手がそれを上回ります。こちらが仕掛ける場面も作りつつ、それでもジワジワと首を絞められるように攻められ続けました。前半よりは拮抗した内容ではありましたが、結局後半を0-2で終え、最終的に0-5での敗戦となりました。コンディション的な厳しさもありつつ、それでも戦い方としては前向きな評価が出来る内容だったと思います。

ここまでを振り返って

新チームが本格的に始動した12月以降、ゲームモデルを土台としたチーム運用に取り組み、そのほぼ全ての活動をこうして記事化して来ました。そしてその間、来る日も来る日もゲームモデルについて試行錯誤を積み重ねて来ました。結果的に、ゲームモデル作成についての書籍の執筆をさせていただくこととなったり、フットボリスタの本誌にインタビューが掲載されたりと、雲の上を歩くような不思議な感覚の日々を過ごすこととなりました。

そのような日々の中で確信したことがあります。それは「やはりゲームモデルをまずは作ってみるべきだ」ということです。

世の中の進歩速度は想像を超えるものです。次々と新たな知見が提示され、何が正しいのか、どれが良いのかと悩んでいるうちに次々と新たなものが溢れてきます。何かしないといけない、とは思っているけど実際何をしたらいいのか分からないという方も多くおられると思いますし、それは誰もがぶつかる壁だと思います。
ゲームモデルは残念ながら万能ではありませんし、魔法でもありません。中には「ゲームモデルなんかなくても出来るでしょ?」という方もおられるでしょう。それもきっと間違いではありませんが、こう考えてみて下さい

「ゲームモデルを作らなくてもマイナスはない。だけど、作れば必ず何かしらのプラスがある。」

そのプラスの中身はそれぞれに異なると思いますが、プラスは確実にあります。これは間違いないです。この辺りはまた書籍の方でもお伝えしたいと思います(7月頃発売予定です)。

そしてもう一つ、これは私自身が陥ってしまった落とし穴です。これについても書籍で紹介しますが、ゲームモデルが万能ではないという部分にも繋がっているお話です。ひょっとすると皆さんは、私や粉河高校サッカー部の活動に触れる中で、「さぞかし良いチームなんだろうな」と思われているのではないでしょうか?

良いチームであることは間違いないのですが、先日のリーグ戦にてチームは崩壊しました。0-20という惨憺たる結果を伴ってです。これは簡単に言うと、ゲームモデル以前に「チームとは」というそもそもの土台を揺るがせてはならない、ということだったと言えるでしょう。詳細はここでは控えますが、私自身大きな見落としをしていたようでした。その後チームは持ち直しましたが、すごく考えさせられる出来事でもありました。

以上、ここまでを振り返ってのお話をお届けしました。次回は新入生を迎え、総体予選に臨むその流れを中心にお伝えする予定です(^-^)今後とも粉河高校サッカー部をよろしくお願いします!

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