ゲームモデルに基づいたPDCAサイクルについて②

みなさんこんにちは。相も変わらずわっきー(@kumaWacky)でございます。
今回は、以前お届けしました粉河高校サッカー部の新人戦に向けての取り組みの続きとなります。まさにトライ&エラーという感じとなりましたので、強い気持ちでご覧いただけたらと思います。

【要約】
・2回戦勝利後の成果と課題の抽出および次戦への取り組みへの接続
・3回戦に向けた準備
・3回戦を振り返って

今回も、チームの戦い方の土台となるゲームモデルは以前に作成したこちらになります。

そして、3回戦に向けても2回戦に向けて整理作成した以下のゲームモデルを軸としました。

【2回戦から成果と課題を抽出する】

その上で、自分たちが何にチャレンジし、何が出来て何が出来なかったのか、またその理由はというあたりをポイントとし、ミーティングを行いました。

動画共有・分析ソフトのSPLYZAを活用し、グループで試合を振り返りながらポイントの抽出を行い、各グループから発表をして共有しました。
成果としては「後半はプレスの圧力が届いた・それに伴いラインを上げコンパクトな配置を保つことが出来た・中盤で縦パスを起点に相手陣内への侵入が成功した・相手の配置を見て得点に繋ぐことができた・スローインに手応えを感じた」などが挙げられました。
課題としては「プレスの開始位置が不明瞭だった・1stプレスで逃げられた後の対応が後手に回りすぎた・ボールから遠い選手が棒立ちになる場面が見られた・前半は特に中盤の距離感が良くなかった・前半は組織が間延びして連携が薄くなりがちだった」などが挙げられました。
そして、その理由としては主に「プレスにしても攻撃にしても、設計図の共有にエラーが起きていた」ことが確認できました。また、こちらからは攻撃時の「攻め急ぎ」によって不用意にボールを失う場面が多かったことを伝えました。ボールを保持している時の自分たち、相手、その状況に応じた攻撃の選択をきちんと判断できるように、ゲームモデルに記載された内容を確認しました。

和歌山県の新人戦は、現在の運営方法では1月の10日前後に1~2回戦を行い、その後ベスト8シードチームと併せて16チームによる組み合わせ抽選が行われます。その結果、本校は強豪の初芝橋本高校との対戦となりました。先の選手権大会では決勝戦で延長の末PK戦で和歌山北高校に敗れはしたものの、常に高い力を備えたチームです。トーナメントで対戦する多くのチームが守備を固め、カウンターでなんとかチャンスメイクをという戦い方を選ぶ傾向にありましたが、我々は真っ向勝負を挑むこととしました。目の前のこの試合も当然大切ですが、我々が目指すのはその先です。この試合を自分たちの成長に繋いでいくためには、チャレンジを忘れずに戦おうと決意しました。

【3回戦に向けた準備】

①プレスの設計図の見直し
12月半ばに「枝D」講習会を受け、個人としてチームとしての守備意識の改革を進めてきました。指導をする側としましても、選手たち目線の感覚としましても、間違いなく守備の底上げは実現しています。特に、選手たちは練習でも練習試合でも具体的な成果と課題を共有し合いながら、少しでもその完成に近付くように取り組んでくれました。
一方で、2回戦の振り返りにもあったように、狙いを持って取り組むが故に自分たちのエラーにも気付いているという状況でした。そのあたりを整理しながら練習が出来るようにメニューを作成しました。特にポイントとしたのが、「1stDFの選手による誘導&プレスの質」です。枝Dの守備理論に則れば、トライアングル構造によるユニットプレスという形が発生するのですが、サッカーのフィールドの広さ、人数、変化する状況の中で「いつ・どこで」この構造にはめ込むのかが大きな課題となっていました。なので、まずは順番に整理する意味でのポイント設定を行いました。
以下は「誘導」をテーマに行った練習です。

GKからの配球で開始、攻撃側は必ず3カ所のうちいずれかのゲートにボールを通過させて(ドリブル・パス)相手陣内へ侵入、そのまま対岸のライン突破を目指します。
守備側は配球時は自陣内からスタートし、配球後すぐに相手陣内へと侵入してプレスを開始します。この時、自分たちの1stプランとして「中央ゲートもしくはサイドゲートのいずれかを通過させるように誘導すること」を共有しておきます。そして、そのプランを実行するための配置・誘導等を行うことを最初の目的とします。
当然、様々な要因によってプラン変更を迫られることとなります。その場合も、必ずコミュニケーションを取りながら確認しつつ修正を加えていきます。ボールを奪う位置は最初はゲート通過後の守備側自陣内と設定していましたが、プレスをかけ始めると相手陣内で奪える場面が多かったため、相手陣内で奪うことも可としました(枝D的には1stDFが積極的に奪う役割ではないので、その辺りは調整して行いました)。
また、守備側がボールを奪った場合は5秒以内にシュートを打つことを条件ともしました。ボールを奪って終わり、ではなく、守備プランの軸には「ボールを残して相手を素早く刺す」ことを設定しているためです。


1回の時間は2分と設定し、何度かの攻守の切り替わりやリセットの場面が発生するように微調整しました。
よく発生していたエラーとしては、1stDFのプレスが単騎突撃となってしまい、後ろの組織との連動が失われて前進を許すというものが一つ。さらに、プレッシングが前のめりになりすぎて、裏抜けを狙う相手に対して裏のケアが疎かになってしまう場面が見られた(ボールの横移動に対して対応する時に、自身が空けていくスペースの管理が共有されないことも含む)ことが一つ。
球際に人が密集してしまった時に、周囲の選手が止まって眺めてしまっていることが見られたのが一つ。その辺りの調整も行いつつ、何度かは練習でこのメニューに取り組みました。

1月13日の新人戦の後、修学旅行も挟んでの2週間弱の積み重ねを経て、1月27日に近大附属新宮高校との練習試合に臨みました。プレスの話に絞るなら、この時の内容を元にして、翌日作成して選手たちに渡した資料が以下になります。

実際に発生していた現象を紐解きつつ、想定される現象に対してのこちらの選択肢を共有することを目指しました(これが初芝橋本戦において叩き潰されることはまだ知らない・・)。
とはいえ、まだまだ完成には及ばない段階でもありましたが、少なくとも自分たちのすべきことの共有は出来たと思います。


②攻撃時の連携について
2回戦で見られた、「中盤の距離感のエラー」や「攻め急ぎ」の部分に関しては、ユニットによる連携の見直しという形で調整を加えることとしました。そのために設定した練習メニューが以下になります。

サーバーからの配球によって2対2+1の形で対岸を目指します。ボール保持側は、開始時にライン上にいる+1の選手も加わります。このうち相手陣内に侵入できるのは2人のみで、必ず1人は残るようにします。相手陣内に侵入後は対岸の+1の選手に縦パスを通して落としのパスを受け取りライン突破を行う(パスを出した選手でなくても可)か、自らドリブルでライン突破を目指します。ライン突破成功後か、ボールを奪われた場合は攻守が交代となり、同様に継続します。時間設定は1分程度で行い、プレー前の狙いの共有、プレー中のコミュニケーション、プレー後の振り返りという形で十分な時間を使いつつ取り組みました。
ポイントとしたのは、攻撃時における「タイミングの共有」です。いつ・どこで相手の守備ラインを突破するのか、という部分を焦点化しました。全体の配置やボールの持ち方等によって生み出され、消えていく選択肢に意識を持たせつつ、徐々に良いイメージが共有されていく様子が見てとれました(この時、併せて守備の圧力を引き上げておくべきだったと後悔することになるとはまだ気付いていない・・)。


③初芝橋本高校への対策として
さて、自分たちの現状(ゲームモデル+2回戦での成果と課題)を土台とした準備は上記のように進めていきながら、対戦相手である初芝橋本高校への具体的な対策を並行して組み立て始めました。残念なことに、11月に行われた選手権大会予選の決勝戦以降、初芝橋本高校のトップチームの試合を観る機会はありませんでした。そこで、それまでの試合で抽出していた情報を元にして、大まかな相手の設計図を想定しました。
土台となる配置はいわゆる4-4-2のフラット、前線からのチェイシング&プレッシングを徹底し、縦に速いサッカーを徹底してくる、という感じです。その上で、「個」の能力が高い選手もいますので、その選手がどのポジションで出場してどのようなタスクを実行してくるのか、辺りまでは整理できたと思います。
最初に取りかかったのが、ビルドアップの設計でした。相手の配置から考えられる構造的な噛み合わせを想定し、こちらの配置を調整する形でルート設計をしつつ、優先順位の整理も併せて行いました(具体的に何をしたのかはここでは触れませんが気になる方はお問い合わせください笑)。そして次に、相手陣内に侵入していく形の整理とその時の最終ライン突破の方法についてポイントを共有しました(この内容についても同様です。お問い合わせください笑)。さらに、一つの軸として取り組んできたプレスの設計図についても確認を行いました。最後に、「個」の能力が高い選手に対する具体的な対応策を伝えました。

【3回戦を振り返って】

2019年2月2日、その日がやって参りました。前日の会場練習、朝からの戦術確認、当日のアップの状況、そしてなにより選手たちの表情を見る限り、良い準備ができたなと手応えを感じていました。
そしてキックオフ。マイボールでスタートし、まずは相手陣内への侵入を目指します。堅さも見られましたが、それ以上に自分たちのやるべきことをやろうという気持ちがプレーにも出ていたように思います。
ところが・・・徐々に選手たちが一つの思いに絡め取られ始めます。「相手の圧力が想定以上に強い」。それはピッチサイドで見ているこちらにも、また、ライブ配信を通じて分析を担当してくれていた森君(フットボリスタラボメンバー・粉河高校サッカー部専属アナリスト:@super_kotatsuにてTwitterでも活動中)にも同様に感じられました。開始10分程度までは、相手の圧力に押され気味ではありながらも要所要所で押し返してはいましたが、自陣ペナルティエリア前辺りでこぼれ球をクリアミス(逆足で大振り&空振り)し、そのこぼれ球をゴール前に供給されてシュート。何度かブロックをしつつも最後には押し込まれ先制を許します。
そこまでも、相手の圧力に押される形での判断ミス、技術ミスが増え始めていたので、このまま行くと一気に崩れかねないと思い「情報共有」をしっかり行うことを呼びかけました。まずは落ち着きを取り戻しつつ、判断をお互いに助け合うことでミスの連鎖に陥ることを回避しようと思ったからです。この時点では、仕組みとしての有意な修正点はまだ見出せていませんでした。そして直後、2失点目を喫することとなります。ゲームモデルとしては我々は中央突破を軸としていますが、初芝橋本高校の中央の圧力が高いため、ワイドレーンを使って前進するプランに変更しました(失点直後に選手たちが判断しました)。
そして相手陣内へと侵入に成功し、縦へと仕掛けることでスローインを獲得するという我々のプラン通りの展開となりました。こちらとすれば、スローインのセットを行うことで一気にアドバンテージを得ることを選択すると思っていましたが、準備していたものではない普通のスローインを実行してインターセプトを許します。そこから一気に加速されカウンターの形になり、あえなく2失点目を喫します。
この時、キーパーが裏抜けした相手にチャレンジ出来なかったのか確認をしましたが、そもそものポジショニングが想定より低い位置だったことに気付いていませんでした。そして、スローインにおけるチャレンジの放棄。この時すでに、我々はプレーのあらゆる局面に対する判断を相手の想定以上の圧力によって鈍らされ始めていたのでした。
結局これといった対策も打てないままに、ミスを誘発され続け、そこにつけ込まれ続けて前半を0-4で折り返しました。ハーフタイムでは中盤の経由を排し、ウィングの選手にボールを預け、それを中盤の選手が前進しながら受け取っていく形に変更すること、また、相手へのプレスがキーパーからの質の高いロングフィードによって無効化されていたことから、可能な限りプレスを届かせていこうということを確認しました。しましたが、伝えながらそれは実現困難なプランであることも分かっていました。
相手のプレスはこちらのセンターバックにも容赦なく届きます。現状ではそこから有効なロングフィードは難しいであろうこと、相手陣内深くまで侵入してプレスを敢行する場面が前半途中から発生しなくなっていたこととも併せ、その状況を解決する原則レベルの具体策で無いことは分かっていました。言い換えるなら、「相手の想定以上の圧力を覆す力が現状の自分たちには無い」ということでした。
後半戦、それでも選手たちは相手の圧力を回避しようと抗い続けました。しかし、悉く相手の圧力の網に捕まり続け、失点を重ねて最終的には10失点という結果となりました。振り返るなら、相手への圧力のかけ方にしても、相手の圧力を回避しながらのビルドアップの設計にしても、その根底から押し流す強い圧力に対してはここまで無意味に押しつぶされて終了ということでしかないのかな・・とさすがに思いました。
試合終了後すぐに次の試合の審判があったので、選手たちと話すことなく準備を急ぎました。審判をしながら感じたことは「正直この圧力でなら全く違う結果になったのだろうな・・」でした。審判が終わり、選手たちの元へ向かいました。常に選手たちには「試合に負けたらオレのせいだと思ったらいいよ」と伝えてきましたし、今回の大敗を受けて選手たちが「あんたを信じたのが間違いだったわ」なんて思っているかもな・・・などと不安だったのですが、選手たちはどうやらそんな雰囲気ではなさそうでした。
選手たちには、「上を目指して戦うのなら、これが求められる圧力なんだよ」ということを相手が教えてくれたねと、まず声をかけました。また、「大きく言うと何もさせてもらえなかった。けど、だからといって本当に何も出来なかった訳では無いよ」と、そしてそれは振り返りの中で抽出し、きちんと次へと繋いでいけるようにまた共有していきましょうという話を伝えました。泣きそうなのを必死で我慢していたのは内緒にしておいてください笑。

【これからへ】

試合のビデオを振り返ると、本当に「あと一つ」の壁を越えきれなかったのだなと思いました(それを最後まで越えさせてくれなかった初芝橋本高校の選手たちはさすがでした)。選手たちと話していても、ネガティブな言葉は非常に少なかった印象です。
とはいえ、精神論だけで乗り越えていけるものでもないので、具体的なポイントを選手たちと共有するためにオフ明けすぐにミーティングを行いました。選手たちには試合のビデオは当日の夜には共有しておき、こちらとしてはポイントの抽出をアナリストの森君と相談しながら行いました。その中で見えてきたのが、「プレスの設計図の大幅修正点」「プレス回避における具体的な技術ミス」についてでした。具体的な話はまた後日「その後の取り組み」として記事にしていきたいと思いますが、2月中にあと3回の練習試合を予定していて、さらに3月には県リーグが開幕します。ここからの取り組みがまたその後の選手たちやチームの成長に大きなプラスとなるように頑張りたいと思いますので、変わらぬご支援頂けたらありがたいです。今後とも、粉河高校サッカー部をよろしくお願いいたします。

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