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大宮3-4琉球(2019年3月2日)

今回足を運んだのは、NACK5スタジアム大宮で行われたJ2リーグ第2節、大宮アルディージャとFC琉球の試合です。

観戦前

今回の観戦の直接的な動機は、知人から「一度大宮の試合を観て感想を教えて欲しい」と言われた事なんですが、J3を優勝で昇格して、J2でも開幕戦でイキナリ勝利を掴んだ琉球って一体どんなチームなんだろうという興味と、知人から依頼を受けた後、予習としてDAZNで観た開幕戦の大宮に対する「な~んかイマイチだなあ」という感想の、「な~んか」をもう少し突き詰めて考えながら観ようかな、と。

前半

大宮は前節同様、左右両サイドから最前線のファンマに早めに入れる形。

対する琉球は前からシッカリ相手を追いかけて奪ったボールをカウンター気味に素早くシュートまで結び付ける形。

コレがさっそく形になったのが16分。中盤でのプレスから奪ったボールを、上里一将が素早く左足で縦パス。受けた中川風希が反転から菊地光将をかわしてドリブルで持ち上がり、山越康平と河面旺成とを十分に引き付けてから右のスペースにラストパス。エリア内で受けた田中恵太がダイレクトでゴール左に突き刺して琉球が先制。

お手本のようなショートカウンターでした。

対する大宮も直後の18分。右サイドで得たFKを大前元紀がゴール前に入れると、一人大きくファーサイドに回り込んだ山越康平が頭で折り返し、中央のファンマが右足アウトで合わせて1-1の同点。

カウンターのお手本には、セットプレーのお手本で対抗。

23分、左サイドでボールを持った大前元紀から斜めのパスを入れ、石川俊輝が反転でDFを振り切って縦に持ち出しラストパスを入れると、中央のファンマが左足でボレー。

31分、左サイドを持ち上がろうとした中村太亮のドリブルを止めた琉球が、そのまま右サイドでパスをつないで田中恵太がエリア内にノールックパス。風間宏希が深い位置からマイナス側に折り返すと、田中恵太がDFと交錯したこぼれ球を上門知樹が右足でシュート。

最後は山越康平が懸命に体を張りましたが、飛び出す動きとその後ろを使う動きの組み合わせで、風間宏希が飛び出して来た瞬間、エリア右にポッカリとスペースが生まれてました。

39分、左サイドから琉球のFK。大宮に跳ね返されたボールを徳元悠平が再び縦へ。ブロックしながらの反転で大山啓輔を振り切った上門知樹が左サイドをえぐってラストパスを送ると、ニアに詰めた中川風希が右足(もも?)でシュート。

スコアは1-1ながら時間の経過とともに琉球の良さが随所に見られるようになった前半でした。

後半

46分、中村太亮の左からのクロスを中央の大前元紀がヘディングシュート。

53分、上門知樹に一度預け、裏に走りこんで左サイドを突破した中川風希がそのままエリア内に侵入してGK笠原昴史と1対1に。

ココから試合が音を立てて動き始めます。

55分、左サイドでのパス交換から中央でボールを受けた田中恵太がミドルシュート。これがエリア内にいた中川風希の足元に入ると、ワンタッチで右に持ち出してもう一度中央へ。グラウンダーのボールを鈴木孝司がダイレクトで合わせて1-2。琉球が再度勝ち越します。

58分、右サイドでボールを受けた西岡大志が、縦パスを田中恵太に預けて前線に飛び出すと、エリア内でリターンパスを受けて中央にラストパス。ニアサイドの鈴木孝司が山越康平を背中でブロックして、ワントラップから右足一閃。ボールは山越康平と笠原昴史の股を抜けて1-3。琉球追加点。

60分、味方のクリアボールをセンターサークル付近で受けた中川風希がそのまま反転から中央をドリブル。相手3バックとの距離を図りながらすぐ左を追い越してきた上門知樹の前にボールを流すと、ワンフェイントから縦へと持ち出して左足でシュートを放ち1-4。さらに突き放します。

62分に小島幹敏、64分に富山貴光、78分に酒井宣福と、交代枠を全て使って何とか琉球ゴールに迫ろうとする大宮ですが、人が変わっても左右からファンマに放り込む戦い方にあまり変化は見られず。

試合がようやく動いたのは85分、菊地光将が縦にくさびを入れると、受けた富山貴光は右サイドへと展開してゴール前へ。渡部大輔が左足に持ち替えて中央にクロスを入れると、エリア内でボールを収めた富山貴光が徳元悠平ともつれ合って転倒。さらにこぼれ球を拾った大山啓輔と増谷幸祐がもつれた所で審判の笛が鳴り、PKの判定。

そのPKを富山貴光が豪快に蹴り込んで2-4。

さらに92分、最終ラインから河面旺成が縦に蹴り込んだボールを富山貴光が胸で落として大山啓輔が左に展開すると、酒井宣福がダイレクトで中央へ。

ファーサイドまで流れた所を大外から走り込んだ渡部大輔が蹴り込み3-4。とうとう試合は一点差に。

94分、笠原昴史の前線へのフィードを富山貴光が頭で落とすと、右サイドで受けた小島幹敏がさらに縦パス。大山啓輔のリターンパスを再び小島幹敏が持ち上がってラストパスを入れると、ゴールエリアまで入り込んだ富山貴光が右足でシュート。

しかし、この至近距離からの決定機なシュートをGKカルバハルがセーブ。

さらにこのプレーで得たCKで、大宮はGK笠原昴史まで前線に上げて最後の勝負。大山啓輔が右からボールを入れると、DFに競り勝った山越康平がゴール正面から叩きつけるヘディングシュート。

しかし、このシュートもカルバハルに弾き出されて万事休す。

試合はこのまま3-4で終了しました。

感想など

3-4。結果を観れば一点差です。大宮がなりふり構わぬ攻勢をかけて2点を奪い、さらにその後決定的なチャンスを2度掴んだと考えると、接戦だったという見方が出来なくもないですが、結果として勝ってるのは琉球ですし、残り5分までは完全に琉球の試合だったと言えるでしょう。

大宮サイドから観てて気になったのは、4点を奪われた守備よりも、むしろ結果的には3点奪った攻撃のほうです。

対する琉球の攻撃が素晴らしかったので、余計に浮き彫りになった面もありますが、大宮の攻撃には相手DFを「動かす」「揺らす」効果がないな、と。言い換えるとスペースを「作る動き」と「使う動き」がほぼ全く見られず、相手DFラインの前でずっと攻撃をしてる印象でした。

中央で待ち構える(当然DFからはマークされる)ファンマに、左右の比較的浅い位置から長いボールを放り込む。187cmの身長とフィジカルが相手DFの脅威になる事は間違いないですが、守備陣がファンマとボールを同一視野で捉えられる状況でいくらボールを放り込んでも、なかなか得点の確率は上がらないのではないでしょうか。左右から中央へ。ボールのベクトルが「横」しか見られないのは非常に気になりました。

対する琉球の攻撃には、チーム全体からサイドと裏を狙う意図が非常によく見て取れました。

象徴的だったのが3点目。
右サイドで西岡大志がボールを持つと中村太亮が寄せて来る
⇒ボールをさらに斜め前方(外側)にいる田中恵太へ
⇒河面旺成が大外までスライドして対応

この時点で、中央で鈴木孝司と中川風希をマークする山越康平、菊地光将と河面旺成との間に大きなスペースが出来る。

そのスペース目がけて西岡大志がスピードを上げて後ろから飛び込む
⇒西岡大志が走り込む先に田中恵太がタイミングよくボールを流し込む
⇒エリアに入った西岡大志が追走する中村太亮よりも先に中央へラストパス
⇒中央で山越康平との駆け引きを制した鈴木孝司がニアに一瞬早く入り込みワントラップからシュート。

ピッチの幅を目いっぱい使って大宮のアウトサイドや3バックの選手を引っ張り出して、その選手が動いた事で出来たスペースに、後ろから別の選手が飛び込む。引き出す動きと飛び込む動きの組み合わせが実に見事でした。

大宮の攻撃に欠けていたのはまさにココだと思います。

サイドでボールを持ったらエリアの手前からでも中央に入れるのではなく、そこからもう一工夫してサイドをもう一段えぐる。相手のDFラインを縦横に揺さぶってスペースや死角を組織的に生み出す。

実際、今日の大宮の得点にしても1点目を生んだ山越康平の頭での折り返しと、4点目を生んだ酒井宣福のクロスは、ともに敵陣深い位置からのもの。こういう攻撃をもっと早い時間帯からもっと数多く作り出す事が出来れば、アーリークロス一辺倒の攻撃よりも迫力と破壊力が圧倒的に増すはず。

昨シーズンJ2得点王の大前元紀が2試合でシュート3本。コレは明らかに異常です。彼の頭の上をクロスボールが飛び交うだけの攻撃ではなかなか持ち味は発揮できないでしょう。もっと相手のDFラインに揺さぶりをかける攻撃が出来れば、必然的に彼のシュートチャンスも増えるはず。

まだ今シーズン始まって2試合目ですが、大宮にとっては大至急で取り組むべき課題だと感じました。高木琢也監督の手腕に期待します。


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