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サッカーにおけるプレー原則とは?ウェールズFAのUEFA Bライセンス授業で習った事


■はじめに


チームの仕事や大学の授業等で忙しく、前回の記事から1ヶ月も経ってしまいました。申し訳ございません。今回は前回の記事の終わりに言及した、プレー原則について綴っていきたいと思います。UEFAとFAW公認の資料を参考に、ウェールズの現場で使用されているものをシェアしていきます。


■この記事のLearning Objectives

この記事を読み終えた後は

・小国ウェールズでは何故プレー原則が必要なのか?

・ウェールズサッカー協会流のプレー原則の定め方、分類の仕方

・ウェールズサッカー界における主原則準原則とは?

の3つが理解出来ると思います。

欧州サッカー界で選手育成に関して最先端をいくウェールズ。今回も彼らの興味深い知見をシェアできればなと思っています!

■ウェールズがプレー原則を導入したきっかけ



UEFAライセンスの授業で講師は、プレー原則という概念を導入したきっかけを以下のように説明していました。

”ウェールズにいる若い選手たちは、それぞれのクラブで定められた異なるプレー哲学の元、プレーしなければなりません。さらに、Reginal Squads(地域トレセン)やNational Squads from U12 through to U21(世代別代表、U-12からU-21まで)に選ばれたほとんどの選手はウェールズ国外の大会にてプレーすることになり、異なるスタイルや戦術に触れる事になります。これらの育成年代での多様な環境により、Welsh wayのプレー哲学に基づいたプレー原則を決める事は重要です。そしてこのプレー原則は、チームのフォーメーションや戦術など左右される事なく常に採用し、頭に入れておかなければなりません。ユース選手からファーストチームの選手へのトランジション(Transition)は最も難しいチャレンジであり、これは選手育成の成功の1つの基準ともなります。そのユースからシニアへの移り変わりを達成する為にも、プレー原則を定める事は大切ですし、地元のグラスルーツから地域クラブ、エリートユースそしてファーストチーム同士のリンケージが鍵を握るでしょう”


Welsh Football Trustの最高経営責任者のNeil Wardは英紙Telegraphに対しこんな事を述べています。

”我々は独自のやり方”Welsh way"による下から上までシームレスな方針と道があるんだ”

されにWard氏は同紙に対してこんな事も述べている。

”ウェールズという小国のサイズが我々の弱点。だがそれは長所とも言える。クラブのエートスを作り上げ成長することができる。我々が達成してきたものは我々が作り上げたものによる。デフォルトでもコピーでもない。頭角を現してきている若い選手のクオリティーを見ていると、我々の将来は明るい”


シームレスな方針や道と言っていましたが、育成年代での一貫性のある方針と年齢を重ねても脱落しないような道を下から上まで作ることは大切なんだと改めて気づかされます。その道というものは生涯同じチームでプレーするということではありません。違う組織へ移る時や学年が変わる時の移行(トランジション)の際に脱落しないような環境づくりです。日本ですと中学から高校の間の移り変わりに苦労するなんて話をよく東京都サッカー協会主催のカンファレンスなどで伺ったことがあります。個人的には、田嶋さんが仰っていた”Japan's way"には賛成です。賛成というか、キャッチーなフレーズと取り敢えずやろうとしている事は悪くない事だと思っています。ただし、そのJapan's wayに何か一貫性のあるゲームモデルプレー原則を一回纏めて決めてみると良いと思いますし、それらを行わないと折角のJapan's wayの中身がアンビギュアスになってしまいますし、それ自体の意味が無くなってしまいます。すぐにはその成果は出ませんので、約10年は我慢しながら同じ方針でやる事が大切です。途中で明らかに違うと思ったら変更することも可能なので試行錯誤しながら出来ることだと思います。

既に、ある国内随一のサッカーライターさんが何度も強調してらっしゃいますが、小国のアイスランド、ベルギーそしてウェールズが何故選手育成に成功しているのか。彼らが取り組んでいる事や、言葉で発している事からヒントが沢山転がっていると思います。リソースが少ない中で効率的に育成を行うには、一貫性がありオーガナイズされた独自の育成環境が必要になってくると信じています。独自の育成環境というのは、コピー&ペイストではなく我々日本人の特徴だったり、国内の環境だったり、歴史だったり、、色々なことを熟考して日本オリジナルで1番合ったやり方というものが存在すると思うからです。

それでは、ウェールズサッカー協会が定めたプレー原則について見ていきましょう。


■ウェールズサッカー協会が定めたプレー原則


ウェールズサッカー協会はメインとなるプレー原則

❶サイドチェンジ

❷数的優位を作る

❸ライン突破

❹ファイナルサード

の4項目に定めています。これらは主原則と呼ぶ事ができます。そしてこれらの4項目を

①フィールドプレーヤー(攻撃)

②ゴールキーパー(攻撃)

③フィールドプレーヤー(守備)

④ゴールキーパー(守備)

にそれぞれ当てはめていきます。

主原則を上記のそれぞれのポジション(選手)局面に当てはめていくと、今度は”この選手が特定の局面の時に主原則を元に◯◯するようにする”というさらに細分化された準原則を定める必要があります。

私の文章力が酷すぎる為、文だけで理解するのはかなり難しいと思いますので、、(笑)

それでは写真を使って見ていきましょう。

⑴フィールドプレーヤー(攻撃) ←ポジションor選手と(局面)

まず❶のサイドチェンジ(主原則)に関しては

ピッチを大きく使う。サイドチェンジのスピード。サイドでのローテーションを意識する。(準原則)

上の3項目に分かれて書かれているものが準原則になります。準原則は上記のように、さらに細分化されて尚且つ具体的に書かれています。

なのでウェールズの選手はサイドチェンジの際に、ピッチを大きく使い、サイドチェンジの際にパスのスピードを速くすることと、サイドでローテーションの動きをする事を理解しています。なぜかというと、協会が具体的なプレー原則を掲示しているからです。

プレー原則を決めると、今度は我々指導者のコーチングの際にも役に立ちます。練習の際に常にキーポイントとして抑えられます。

例えば、練習中にサイドチェンジに関しての修正が必要な場合は先ずプレイヤー達に我々のサイドチェンジにおける原則は何だったかを問う事ができます。場合によっては追加の情報やコーチングも加わりますが、基本的にはそれを元に修正を行う事ができます。

それでは、これからは私からのコメントは無しでウェールズサッカー協会が定めたプレー原則を客観的にみていきましょう。常にクリティカルに(批判的に)記事を読んでみましょう。


❷の数的優位を作るに関しては

数的優位な状況の中でフリーな選手を探す。サイドで2v1 3v2を作る。ピッチ中央で4v3を作る。

❸のライン突破に関しては

ピッチ中央でライン突破(サイドではなく、出来るだけ中央でライン突破を目指すニュアンス)。ライン周辺でプレーする。裏を狙う。

❹のファイナルサードに関しては

幅と深さ。Zone14でのプレー。コンビネーションプレー。ラストパスの精度。フィニッシュのクオリティー。

⑵ゴールキーパー(攻撃)

GK(攻撃)の❶サイドチェンジに関しては

パスのスピード。サイドバックからサイドバックへ。サポートの位置。

❷数的優位を作るに関しては

フィールドプレーヤーと同じく、数的優位の中でフリーの選手を見つける。5v2 5v3の状況を作る。サポートの位置。

❸ライン突破に関しては

パスのスピード。サイドバックからサイドバック。ピッチ中央の間を通す。裏を狙う。

❹ファイナルサードに関しては

常に裏を狙う。カウンターアタック – ディストリビューション(配球)のスピード。

⑶フィールドプレーヤー(守備)

フィールドプレーヤー(守備)の❶サイドチェンジに関しては

相手を追いやる(きる)方向。狭く。一番遠くに位置する相手(逆サイドの選手)は放っておく。サイドチェンジをさせるな。

❷数的優位を作るに関しては

早くプレスをかけるかピッチ中央を侵入されるのを防ぐ。一番遠くに位置する相手は放っておく。

❸ライン突破に関しては

狭く守る。縦パスを防ぐ。外に相手を追いやる。裏のスペースを守る。

❹ファイナルサードに関しては

ピッチ中央を守る。外に相手を追いやる。クロスをさせない、クロスボールを守る。各ユニットのラインを綺麗に。

⑷ゴールキーパー(守備)

GK(守備)の❶サイドチェンジの関しては

常にボールから目を離さない。味方選手のボール非保持の際のポジション修正を確実にさせる。外に相手を追いやる。守備陣形は狭くなっているか。

❷数的優位を作るに関しては

ボール保持者に対応している味方。コミュニケーション(ボール保持者にプレッシャーをかける為)。ゴールから離れた場所に追いやる。リカバリーランの為に遅らせる。

❸ライン突破に関しては

スターティングポジションは高めに。高い位置でプレー。常に1対1の準備。必要な時には簡単にクリア(リスクの少ないプレー選択)。

❹ファイナルサードに関しては

シュートを打たせない、止める(BOX内外どちらとも)。クロスに対応する。1対1に対応する。狭く守らせる。相手を外に追い出す。


■おわりに

いかがだったでしょうか?この記事ではあくまでウェールズサッカー協会が定めたプレー原則についてです。4種類から成る主原則に加えて、さらに細分化された準原則各ポジション局面ごとに整理されています。

ウェールズの知見は独特で面白かったかもしれません。

しかし、ウェールズサッカー協会はトランジションの局面については一切触れていなかったので、それについてのプレー原則を定めるのも良いかと思います。

但し、プレー原則もそうですが細分化しまくれば、、書きまくれば、、良いものではありません。使い物にならなかったら意味がないので量は程々に。現場に落とし込める又は覚えられる程度に定めるべきだと思います。

沢山の日本人スポーツ指導者にこの記事が届いて欲しいので、SNSやブログ等で拡散して下さると非常に助かります。

今回も最後まで読んで下さった読者の皆様、有難うございました!



著者:平野 将弘 (Masahiro Hirano)

Cardiff City FC U-23の分析担当コーチ。ウェールズサッカー協会のUEFA Bライセンス取得中。ウェールズサッカー協会で分析のインターン経験。大学でサッカーコーチングを勉強中。96年生まれ。

Twitter - @manabufooty 

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平野 将弘

プレミアリーグ所属 Cardiff City FCのサッカーコーチ。ウェールズサッカー協会のUEFA Bライセンス取得中。ウェールズサッカー協会で分析のインターン経験。英大学でサッカーコーチングを勉強中。96年生。Twitter - @manabufooty

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