虹がかかる空に

こんな終わり方は嫌でした。

あまりに突然の別れに気持ちの整理がつかないので、あなたとの思い出を言葉に変えて残しておこうと思います。

~シャチとの出会い〜


あなたとの事を書く為には、先ずお母さんの事から書かなければなりませんね。

あなたのお母さんは店の近くをウロウロしてた野良猫でした。

黒と白のツートンカラーの美しい毛並み。シュッとしたスリムな体型で、長い尻尾に靴下を履いて、人に媚びない態度は、可愛げが無いというよりは、凛とした佇まいで気品がある猫でした。

毛色と品がある佇まいからシャチと名付けたその猫が、たま~に店に遊びに来てくれた時にはエサをあげて、その様子を眺めているだけの毎日。

そんな毎日がしばらく続きましたが、遊びに来てくれる頻度は、たま〜に遊びに来てくれるだけだったのが週一になり、週二になり、いつしか毎日の様に遊びに来てくれる様になりました。

かと言って媚びる訳でもなく、相変わらず一定の距離は保ってましたけど、少しづつ警戒心が薄らいでいるのかなって思える様になった頃、近所の猫好きのおばさんから

『あ~、この子はね、去年近くの印刷屋の人が捨てた猫だよ』

と不意に聞かされました。

そっか…シャチは小さい時に人に裏切られたから人が嫌いなんだね。

小さな身体で必死に生きてきたんだね。

ごめんね……

そう思いながら、シャチに対する感情が愛情に変わっていくのに呼応する様に、シャチの距離感も徐々に近くなっていき、機嫌が良い時は身体を触らせてくれるようになりました。

そんなある日、シャチをふと見ると、なんだかお腹がふっくらとしているような……

これはあれかな…!?

妊娠してるよね…!?

その疑念が確信に変わった頃、一度だけ…たった一度だけですが、子猫を連れて挨拶に来てくれました。

あれだけ人が嫌いだったシャチが初めて人を信用してくれたんです。

めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えています。

勿論触る事は出来ないし、ほんの10分もしないうちに連れていっちゃいましたけど、シャチなりの御礼だったのかな?


子猫が産まれてからは前にも増してエサを食べる様になり、ホルモンの関係なのか前よりもずっと懐くようになりましたけど、エサを食べたらすぐに帰っちゃうので、嬉しいような寂しい様な…


子猫達の住処は、2~3日おきに変えてるみたいで、近くのガソリンスタンドのタイヤ置き場やら、近くのマンションの階段の奥まった所や、店と隣のマンションの共有地の隙間やら色々な所を住処にしてました。

それでもまあ、エサだけはしょっちゅう食べに来てたので安心はしてたんだけど…


~シャチとの別れ〜


いつもの様に開店準備の為に店の扉を開けようとした時に、隣のガソリンスタンドのバイトの子が『あの野良猫、朝ウチの前で倒れてて、さっき保健所が連れていきましたよ。』

耳を疑いたくなる様な言葉が容赦なく身体を突き刺しました。

あれだけ素早しっこくて賢いシャチが車に轢かれるなんて…

子育てて疲れてたのに必死でエサを探してたんだね。

なんでもっと頼ってくれなかったんだよ…

悲しみが幾十もの矢となり降り注いできて冷静な判断が出来なくなっていましたが、ふと我に帰り、

あ…子猫達…

子猫達を保護しなくては……

そこからはシャチを失った喪失感を忘れさるように必死で捜索しました。

仕事もそこそこに、ガソリンスタンドの子と一緒にめぼしい所は全て捜索して、近所をかけずり回りながらの情報収集。

すると夕方になる頃に、ようやく有力情報が見つかります。

近くの居酒屋さんの室外機や冷凍ストッカー等を置いている2畳程の小さな物置場所に居着いてるようだと。

居酒屋さんに伺って話を聞くと、確かにそこに居るようで店長さんも困ってる様子でした。

事情を話して保護する為に物置場所に入る鍵と許可を貰い、捕獲作戦を試みますが子猫とはいえ野生の猫は、素早っこくて中々捕獲出来ません。

子猫達も命をとられまいと必死だからキャッチ出来ても引っ掻くわ噛むわで、何度も指を噛まれながらようやく捕獲しました。

しかし捕まえたは良いものの野生が強過ぎるせいで引き取り先は見つからず、人づてに聞いた動物保護センターに電話で確認をしても保護とは名ばかりの殺処分センターで話になりません。

万策尽きて、とりあえず店の横の共有スペースに一時期保護してたんですが、どれだけ囲いをしても猫だから結局逃げちゃって、元の居酒屋さんの物置場所に帰っちゃうんです。

居酒屋さんの店長も半分諦め気味で『もう大きくなったら勝手に出ていくだろうから好きにして良いよ』

そう言ってくれたので、大きくなるまでは私がエサを毎日届けてました。

シャチの忘れ形見なのだから大人になるまでは見届ける使命があると自分に言い聞かせながら……


~孤独〜


物置場所は金網に囲まれていて、鍵がないと中には入れないのですが、金網の隙間から手を伸ばせばなんとかエサをあげれました。

その時は冬で3匹の子猫達は室外機の下で身体を寄せ合い暖をとっています。

私が近寄るとピューっと逃げちゃうんですが、エサだけ置いて、遠くから様子を伺うと物陰からコソ〜っと出てきてエサを食べてます。

よしよしこれで一安心だ。

何とか冬を乗り越えてね。

3匹の子猫達にとって試練の冬がようやく終わりを告げて、ようやく春が訪れようとした頃には子猫達は物置場所からちょっとづつテリトリーを増やして周りを探索するようになってました。

そんな時に、またしても聞きたくなかったあの言葉が再び身体を突き刺すのです。

いつもの様にエサをあげに行くと居酒屋さんの従業員の子が『3匹のうちの2匹が車に轢かれたみたいですよ』

ようやく自立出来ようかという時に…

まだ半年も生きてないのに…

それが野良猫の運命というにはあまりに残酷な現実を目の当たりにして打ちひしがれました。

唯一残った一匹は身体が小さく臆病なメスで、物置場所から怖くて出れなかったから生き延びる事が出来たんですね。

たった一匹で残されて、お母さんと兄弟の帰りを寂しそうに待っていた猫。

その瞳は常に孤独と戦っている様でした。


寂しさからか、人に依存する様になっていった子猫は、にゃーにゃー来たよ~と呼べば室外機の陰からฅ(´ω` ฅ)ニャーと嬉しそうに顔を出してきます。

金網があるから、指先でしか触れる事は出来ないですが指で耳をこちょこちょっとすると嬉しそうに小首を曲げてきます。

にゃーにゃー帰るよ〜っと言って、その場所を離れようとすると悲しそうにずっと見ていました…


試練の冬が過ぎ、別れの春を乗り越えて、ようやく夏の足音が聞こえ始めた雨の季節。

いつの間にか、にゃーにゃーと名前がついていたその猫は物置場所から忽然と姿を消していました。

ようやく自立する事が出来たのは嬉しいのですが、こっちは不安でなりません。

にゃーにゃーは自力で生きていけるのだろうか…

そんな不安にさいなまれつつ1週間が過ぎた頃…

路地裏の30m位先を、白い靴下を履いた尻尾の長い猫が歩いています。

思わず『にゃーにゃー‼️にゃーにゃー‼️』

と叫ぶと、その猫はこっちを振り向いた途端に、お母さん譲りの長い尻尾をピコンッと立てて駆け寄って来るじゃないですか。

私の周りをグルグルグルグル回りながら、にゃーん、にゃーん鳴いています。

🐱ようやく見つけたよ。

🐱ずっと探してたんだからね。

そう言っているかの様に、ずっと にゃーん、にゃーん、と鳴いていました。

それから にゃーにゃーは、店に居着くようになり、営業時間内はほぼずっと一緒に過ごすようになりました。

人が大好きな にゃーにゃーは一度も怒った事がなく、勝手口の所に座っては通行人に愛想を振りまき、気が向いたら店の中に入ってきたり、近くの駐車場で走り回ったりと、悠々自適に過ごしてましたが、店の営業時間が終わると、流石に店の中に閉じ込める訳にはいかないので、『にゃーにゃーまた明日ね』

って外に出すのですが、いつも渋い顔をしています。

そして朝、開店準備の為に店に着き勝手口を開けると目の前にはにゃーにゃーが座って待ってます。

にゃーんと嬉しそうに鳴きながら勝手口をまたぐ、にゃーにゃー。

また、にゃーにゃーとの一日がスタートする訳です。

とにかく人懐っこい猫なので貰ってくれるって話もあったのですが、同じ人に2回もドタキャンされてしまいイラッとする事もあり、それならばと私の家で飼う事も考えたのですが、家では大きい猫を飼っているのと、試しにと息子とにゃーにゃーを何度か会わせたのですが乱暴に扱うから可哀想で見てられません。

にゃーにゃー嫌がってるから止めなって言っても全然止めないし、尻尾を掴んでグイッて引っ張るのがどうにも…

それと一番の理由は野良猫で自由に外を走り回ってる猫を室内猫にしてしまうのは可哀想じゃないのだろうか…

店で自由に外を走り回り、みんなから可愛がられた方が幸せなんじゃないかなって考えるようになりました。

にゃーにゃーがいる生活が日常になり、当たり前の毎日が、当たり前に過ぎていく毎日。

そんな当たり前の幸せな日常でした。

〜決意~


にゃーにゃーにとって二度目の夏が過ぎ、三度目の冬が近づく秋の頃には、にゃーにゃーへの愛情はかつてないものになっていきました。

もう無くてはならない程大きな存在になっていたんですね。

もう極寒の冬に野ざらしなんて出来ない。

店が閉まった後も何とかにゃーにゃーを店内におけないものか?

そう考えた私は、その為の環境作りにとりかかります。

クリアするべき問題は3つ。

①寝床

②トイレ

③イタズラ

寝床は、お気に入りのカゴがあったので嫁さんから作って貰った毛糸のマフラーを敷いてあげるとすぐに気に入ってくれて、今までした事がないモミモミ運動をしていました。

お母さんを思い出してるのかな?

トイレは野良猫だから苦労するかなと思ってましたが、一度マットの上にしたウ〇コを、にゃーにゃー用に用意したトイレに置いておくだけで、自分のトイレと認識してくれました。

後はイタズラです。

いない間に暴れ回って、店の備品をぐちゃぐちゃにするんじゃないかと心配でしたが、こればっかりは試してみないと分からないので覚悟を決めて、にゃーにゃーを店に置いたまま戸締まりして帰りました。

翌朝ヒヤヒヤしながら扉を開けると…

にゃーと喜びながら駆け寄ってくるにゃーにゃー。

店の様子は昨日のまま何も変わらない状態で、トイレもキチンとしてました。

なんてお利口さんな猫なんだ…

こうして、にゃーにゃーは野良猫から店で放し飼いにしてる猫になったんですね。

ホントに従順な猫で、爪を切る時も大人しくしてるし、裏の流し台で身体を洗ってあげる時も全く鳴きもしないで気持ち良さそうにしていました。

店の営業時間中はお気に入りのカゴの中で寝てるか、勝手口で近所の人に遊んで貰い、営業時間が終わるといつもの様に店内をパトロールして、お気に入りの椅子の上でゴロゴロ。


気が向いたら向かいに座ってスマホをいじくってる私のジーパンをガリガリしたり、足元でゴロンゴロンして玉をとったりして遊んでました。

私が帰る時に抱っこしてナデナデして『にゃーにゃーまた明日ね』

ってバイバイして、翌朝店に着いて扉を開けると、にゃーと駆け寄ってきて始まる毎日。

そんな毎日が続いてました。

〜天使の誕生〜


年が明けて、平成の終わりが近付く頃にゃーにゃーは生命を授かります。

営業時間中は外への出入りは自由にさせていたので、父親はどの猫か分からなかったのですが3月2日の土曜日の昼、営業時間中にいつものお気に入りのカゴの中で突然の出産が始まったのです。

おおマジか…と思いつつも普段通りに仕事をしつつ、にゃーにゃーを気にかけてると次から次に新しい生命が誕生していきました。

最初の出産から3時間位が過ぎた頃、4匹の天使が産声をあげていました。


まだ目も開いていない4匹の天使たちは、スクスクと成長し、10日が過ぎた頃には目も開いてカゴから飛び出さんばかりにジャレあっています。

にゃーにゃーの存在を知っているお客さんだけにこっそり教えてあげると、100%の確率で全員メロメロです。

人が大好きなにゃーにゃーは子猫が人に触られるのを気にも止めないで、顔をぺろぺろしてます。

でも、にゃーにゃーが大好きな人が子猫を愛でている時だけは、近くに寄ってきて『私も撫でてよ〜』

とスリスリしてきます。

なんて可愛いんだろう…

そんな4匹の天使達は、にゃーにゃーにそっくりで、みんな可愛いので飼い主を募集したら一日で決まってしまいました。

にゃーにゃーにそっくりな4番目に生まれた天使は私が連れて帰ろうと思ったんですが、どうしても飼いたいと頼まれたので快くお譲りしました。

私にはにゃーにゃーが居ますからね。

どうぞ大切にしてあげて下さいね。


にゃーにゃー、貴女の子供達はみんな幸せに暮らしてますよ。

1番目の天使と3番目の天使は猫好きの夫婦がつがいで引き取ってくれて毎日ジャレあって楽しくしてますよ。

2番目の天使は猫好きのおじさんが引き取ってインスタで人気者になってますよ。

4番目の天使は、去年母親を亡くしたおじさんの家で、母親の仏壇がある部屋で元気一杯走り回ってますよ~。

母親を亡くして、親族が寄る事も無くなりおごそかに時が流れていた部屋は、毎日の様に甥っ子や姪っ子が遊びにきて賑やかで楽しい時間が流れる部屋になったようです。

お母さんも喜んでると思いますって嬉しそうに話していまし

4匹の天使達が新しい飼い主さん達に貰われていって、またいつもの日常が戻ってきました。

相変わらずの毎日。

でも幸せな毎日。

でもそんな幸せな毎日は長くは続きませんでした。


~絶望~


もう死ぬまで面倒見ると決めて、子離れが済んだ後に去勢手術をしました。

最初はちょっと痛そうにしてましたけど、2週間程度で落ち着き、手術跡の保護テープが綺麗に剥がれた翌日の5/17日の夜でした。

いつもの様に、朝の挨拶をして、店の営業時間中は外に遊びにいったり、カゴの中

で寝ている当たり前の日常。

でも営業時間が終わっても、にゃーにゃーの姿がありません。

一日の終わりを告げ、一日の始まりが訪れたその刹那に一つの小さな生命が終わりを迎えようとしていたのです…


不安になって店を飛び出した私の目には、4車線の大きな道路の真ん中に横たわる黒い小さな塊が飛び込んできました。

最初は良く分からなかったんですが、目を凝らして良く見ると、どうも生き物のようです。

まさか!?

いや違う、そんな訳ない。

そんなの絶対に嫌だ!

と祈る様な気持ちで駆け寄ると、そこには絶望が待ち受けていたのです。

白い靴下と長い尻尾…シャチ譲りの美しい毛並みは間違えようがありませんでした。

頭の中は真っ白で、記憶は断片的なのですが、恐らく即死で苦しまずに逝けたんだと思います。

もうこれ以上にゃーにゃーを傷付ける事は許されないので、私は脇を車が走り抜けていく道路の真ん中で、にゃーにゃーを守る様に立ちすくんでいました。

痛かったね。

ごめんね。

バカ。バカ猫だよお前は。

言葉を発する事が出来ずに、心の中で何度も何度も叱責と慈愛を繰り返しながら、これ以上壊れてしまわない様に、出来る限り丁寧に優しく新聞紙で にゃーにゃーを包み、抱きかかる様に大事に大事に公園まで運びました。

新聞紙越しに伝わるぬくもりが、そこに確かな生命が存在した事を伝えてくれます。

そのぬくもりが段々弱くなっている事も……

公園に着き、優しくにゃーにゃーを下ろし、誰にも荒らされない様になるべく目立たない場所に穴を掘りました。

スコップがないからヘラで地面を削りながら、手を真っ黒にして無我夢中で掘りました。

にゃーにゃーがなるべく背伸び出来る様に、トレードマークの長い尻尾が邪魔にならないように、出来るだけ大きな穴を掘りました。

ホントは良くない事なのは分かってます。

公園に埋めちゃいけないって。

でもペット葬儀を出来る様な状態では無かったし、保健所なんか有り得ないし、なるべく近くに居て欲しかったんです。

人が大好きなにゃーにゃーだったから、いつも賑やかな場所に居て欲しかったんです。

ごめんなさい。

それを罪だと言うのなら甘んじて罰を受けるのでどうか許して下さい。

私を助けて下さい……


それから店に戻りひとしきり落ち着いた後にツイートをしたのですが、ふと後ろを振り返り、にゃーにゃーがいつも座っていたあの椅子を見た瞬間に張り詰めていた感情が爆発して涙が止まらなくなりました。

もうバイバイのハグも出来ない…

また明日ね‼️って言う相手もいない…

その事実を受け止める事が自分には出来なくてどうしようもないぐらい泣きました。

どれくらい泣いていたか、自分が何をしているのか分からないままに、フラフラっと立ち上がり、ゆっくり慎重に慎重に家に帰りました。

なんとか家に辿りついた後に雨が降り始め、明け方まで続いたその雨は、にゃーにゃーが事故にあった痕跡を何も無かったかの様に洗い流してくれました。

翌朝目が覚め、昨日の事は夢だったんじゃないか?

お願いだから夢であって欲しいと願いつつもTwitterを開くと、皆さんからの暖かい励ましのリプに涙が溢れ、昨日の事が夢じゃなかったんだと理解すると、また涙が止まらなくなりました。

無理やり身体を起こし、感情も涙も全て洗い流して、気持ちを切り替えて仕事場に向かうのですが、原チャリを運転しながらも、また涙が止まらないのです。

店の扉を開けるのが怖くて仕方なかったのですが、そこは気持ちを切り替えて何事も無かったかの様に営業をして…

とはいかなくて、にゃーにゃーがいつも居る場所を何度も何度も眺めては、ため息をついていました。

客足が落ち着いたので、にゃーにゃーが眠っている公園に足を運び、昨夜の雨で地面が掘り起こされて無い事を確認して、なるべく目立たないように木の枝をかけて、店の花壇から一本だけ抜いてきた花をお供えして、また仕事に戻ります。

翌日は日曜日で、出来る限り家族と触れ合い、息子の遊び相手をして、にゃーにゃーの事を考えないようにしてたのですが、ふとした時に嫁さんや息子が事故で亡くなったらどうしようという気持ちが頭をよぎり、また涙が…

もう涙腺がおかしくなってしまったのでしょうか。

にゃーにゃーが亡くなってから三日目の5月20日の朝、ようやく落ち着いたのか、いつも通りに準備をして仕事に向かいます。


〜虹の橋~


この日は昼過ぎから季節外れの豪雨で客足もまばら…

私は時間を見つけては、このノートを開きにゃーにゃーとの思い出を言葉におこしていきます。

夕方過ぎに豪雨が去り、ようやく雨も上がったかと裏口から出て空を見上げるとそこには今まで見た事もない程大きくて綺麗な虹の橋が姿を見せています。

私は急いで屋上に駆け上がり、その景色を目に焼き付けました。

虹の橋という話を聞いた事がありますか?

大事にしてたペットを亡くした人の為に語られている神秘的な場所で、天国に繋がる道の手前に虹の橋と言う場所があり、亡くなったペット達は虹の橋のたもとの草原を楽しそうに走り回っているそうです。

怪我をした子も、老衰で亡くなった子も一番元気だった時の姿で走り回っているんです。

そして大切にしてくれた飼い主がいつか迎えに来た時に、一緒に天国へ向かうっていう話です。

ただ虹の橋の入口付近には雨の地域があり、そこは冷たい雨が降り続いてます。

その雨は飼い主さんの涙で、飼い主さんが泣き止まないとペット達は草原に行けないのです。


私はそんな話を思い出しながら、ただただ虹を眺めてました。

そっか…私がいつまでも泣いてたから、にゃーにゃー困ってたんだね。

私が元気になれば、シャチや兄弟達と楽しそうに走り回れるんだね。

家族と一緒にじゃれ合いながら元気に走り回ってるにゃーにゃー。

そんな姿を想像してたら自然と笑顔になってました。

絵空事なのかも知れないけど、こういうのも悪くない。

もう泣くのは止めにしますね。

にゃーにゃーが困るから。

にゃーにゃーは幸せでしたか?

私は、貴女がいなくなってから後悔ばかりしています。

もっと遊んであければ良かったとか、もっと美味しい物を食べさせてあげたかったとか、子供達を引き離してごめんねとか…

貴女の子供達は今も沢山の人達に囲まれて、みんなに笑顔を届けてますよ。

貴女から沢山の笑顔を貰ったのに、私は何も返せないままさよならしてしまいましたね。

こんな泣き虫でどうしようもない飼い主だったけど、いつか虹の橋のたもとで貴女を見かけた時は『にゃーにゃー‼️にゃーにゃー‼️』

と呼びますね。

貴女は振り返り、長い尻尾をピコンッと立てて駆け寄ってくれますか?

一緒に虹の橋を渡ってくれますか?


その答えはいつか分かりますね。

その時を楽しみにしていますね。

いつか…きっと……

その時までバイバイです。

貴女と過ごした2年間は一生忘れる事が無い宝物の様な2年間だったよ。

ありがとね、にゃーにゃー。