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祝『独学大全』出版記念 読書猿さんについて知っていることを私なりに伝えます。

先月末、とうとう『独学大全』(読書猿、ダイヤモンド社)が出版されました。800ページ近く、税込み3000円以上ながら、発売日に重版が決まるほどメチャクチャ売れているようで、私もうれしいです。
twitterで担当編集者さんが読書猿さんにアプローチをしていたのを見たのは『アイデア大全』出版直後。それから時間がかなり経ってヤキモキしたこともありましたが、その甲斐あってモンスター級の仕上がりになったことに感無量です。

というのも、弊社で『アイデア大全』『問題解決大全』を担当させていただいたご縁があるからです。

編集者としての実績が残念な私としては、読書猿さんをデビューさせたことがほとんど唯一の誇りとなっています。謎の多い人物ですが、その中でも担当したからこそ知っている真実をいくつかお伝えしましょう。

●なぜフォレスト出版からデビューしたのか?

これ、けっこう疑問に思っている人が多いはずです。
フォレスト出版は、世間一般からはライトなビジネス書、自己啓発書の出版社というイメージがあるからです。
したがって、「ええっ!? よりによってフォレストから~?」という声は多かったはずです。
もうこれは、たまたま私がダメ元で声をかけさせていただき、それに読書猿さんがノッてくれたから、というほかありません。
ただ、そもそも「なぜフォレスト出版から?」という疑問よりも、私としては「なぜ、どこの出版社もそれまで声をかけなかったのか?」(実際にある小さい出版社さんと進んでいた話があったそうですが)のほうが不思議でなりません。すでにゼロ年代から、ブログ界隈ではその博識ぶりが有名だったからです。
厚顔無恥にもアプローチを試みた、当時の自分を褒めてやりたいです。

●なぜ読書猿がビジネス書の棚からデビューしたのか?

これは「フォレスト出版」だから、というのが正直なところです。
読書猿さんとはいえ、当時は新人。しかも正体不明。社内に読書猿さんを知っている人はおらず、デビューした際の売れ行きは未知数でした(著者本人も、本を出しても売れるとは思っていなかったそうです)。さらに、フォレスト出版はガチの人文棚では実績が乏しく、そこで勝負するのは厳しい。したがって、社内で企画を通すには、苦肉の策として、弊社の得意ジャンルであるビジネス書のカテゴリに寄せなければなりませんでした。
(さらにリスクヘッジ〈コストを抑える〉のため、本文のDTPやレイアウト、写真の切り抜きなど、ほぼすべて自分で行いました。編集者の安っぽい矜持と思われるでしょうが、誇示させてください。原稿以外にも肉薄してたんです)
そこで無理やり「人文書であり実用書(ビジネスにも使える)」というコンセプトを考えたのですが、意外にもこれが読書猿さんの個性を良い方向に発揮させることができたのではないかと、『アイデア大全』の最初のサンプル原稿を読んだときに感じました。
このたびの『独学大全』もダイヤモンド社さんというビジネス書を看板にした版元です。やはり元棚は「ビジネス」のようです。
ただ、読書猿さんの引き出しの多さは驚異的なので、ビジネスジャンルに囚われない本の挑戦を期待しています。

●なぜ読書猿を囲えないのか?

前述のように、読書猿さんは弊社から2冊本を出されていますが、出版社や編集者の心理として、ヒットメーカーはつい自分のところに囲いたくなるものです。ただ、フォレスト出版はその点はオープンで、他社さんから著者への問い合わせがあれば、著者に了解をとったうえでお繋ぎしています。狭い業界、持ちつ持たれつで行きましょうと。
こんなことを書くと、いかにも鷹揚とした、余裕ぶった口様に感じると思いますが、実際のところは、暴れまわる読書猿さんを囲いつづけるのは自分には手に負えない!というのが本音なんです。
今の自分では、読書猿さんを料理できるほどの教養もなければ、自信もない。
それは今回の『独学大全』を見て改めて実感しました。本書のような構成を考えるのは、自分には無理!と白旗を挙げます。もう正直に言いますよ、嫉妬ですよ!
ぜひ今後も、しかるべき出版社の、優秀な編集者のもとで、読書猿さんには粗製乱造モノの本とは一線を画す、ずっと本棚に残り続ける本を書いていただきたいと願っております。
そして、いつの日かまたご一緒に仕事ができる日が来れば!

(編集部 石黒)


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