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【フォレスト出版チャンネル#102】出版の裏側|原稿依頼から原稿入手までの苦悩(前篇)

このnoteは2021年4月6日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

原稿依頼には2パターンある

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日は【出版の裏側】シリーズとして「原稿依頼から原稿入手までの苦悩」というテーマで、編集部の森上さん、寺崎さんとお話していきます。森上さん、寺崎さんよろしくお願いいたします。

森上・寺崎:よろしくお願いします。

今井:今日は原稿依頼から原稿入手までという、なかなか私たち読者には見えてこないテーマなので、とても興味津々なんですけれども、こちらは企画が通った後の話と考えてもよろしいでしょうか?

森上:まあ、そうですね。一応、ざっとご説明すると原稿依頼には大きく二つあって、企画が通ってからの話なんですが、一つが企画書作りの段階から著者と一緒にやっているパターン、もう一つが企画書をとりあえず編集者が社内で通しちゃって、それを著者に持って行って執筆依頼をするという、その二つのパターンですね。寺崎さん、二つのパターンですよね?

寺崎:そうですね。大きく分けるとその二つですね。

森上:寺崎さんはどっちの方が多いですか?

寺崎:二番目の方が多いかな。

森上:確かに寺崎さんはそのパターンが多いか。結構テーマから探すパターンが多いんだっけ?

寺崎:そうなんですよ。まれに1つ目のパターンもあります。

森上:僕は、どちらか言うと一番目のパターンが多くてですね。結構著者ありきのところがあったりするので、著者と先に会って色々と話を聞いて企画書作っちゃうってパターンが多くて。先に連絡取って、色々と構成を立てて企画書を一緒に作るパターンで。僕は一番の方が多いかも。

今井:そうすると編集者によってパターンに違いが出てくるっていう感じなんですか?

森上:そうですね。寺崎さん、そうだよね?

寺崎:うん。二番は原稿が取りにくい著者とか、かなり依頼が殺到していると予想される著者さんとか、そういった方の場合はとにかく社内的に企画を通してしまって正式なものにして、著者に正式に依頼するというパターンに当てはまることが多いかもしれない。

森上:うん。確かにそれはすごく多いですよね。著者さんが色々原稿を抱えていてなかなか入り込めないというパターンだよね。だから変な話、何も言わずに最初に依頼して、依頼したはいいけど社内で企画が通らなかったら逆に困っちゃう場合だよね。

寺崎:そうなんですよね。せっかくいい著者さんが取れたのに企画が通らなかったっていうのが一番残念なんで。

森上:そうだよね。そのリスクはやっぱり避けたいよね。そうなると二番のパターンになるのか。でも僕は比較的一番の方が多いかな。

著者と企画書を作り上げていくパターン

今井:ちなみに一番のパターンと二番のパターンは具体的にどんなことをしていく感じなんですか?

森上:そうですね。じゃあ、一番は僕の方で、二番は寺崎さんの方で解説しますね。まず一番の企画作り段階から著者と一緒にやっていくものなんですけど、この場合はもう最初から企画書を作る段階から著者を巻き込んでいるので、「企画が通りました。刊行決定です」ってなったらすぐ連絡入れちゃいますね。で、今後の進め方をミーティングしましょうということで、ミーティングの機会を設けちゃいます。その時にまずご本人が執筆するか、それともライターさんが執筆するかっていうのを著者さんと詰めていきます。それを決めた後には構成案ですよね。目次。どういう項目でいこうかといったものを章立て含めて構成案を検討して、それが決まった時点で今度はサンプル原稿を書いてもらうというかたちになってきます。それはライターさんなのか、著者さん本人が書くのかでパターンが違ってくるので、後で具体的に説明しますが、そのパターンがあると。脱稿の目標日を一応コミットします。それが伸びちゃう場合っていうのは結構あったりするんですけど。で、刊行の目標日も決めていくと。大体ざっくりこのようなパターンで著者さんと詰めていくというのが、一番の場合の原稿依頼という感じですね。

今井:ありがとうございます。そうすると企画を通す前にはそこまで構成案とかはやらずに企画が通ってから細かいところを詰めていくという感じなんですか?

森上:そうですね。最初からある程度は細かくしますけど、色々と会議の中でアドバイスがあったりするので企画書の構成案のままでいければいいですけど、そうじゃないパターンがあったりするので、もう一度詰めていくっていうことが多いかもしれないですね。よりブラッシュアップするという言い方なのかな。企画書をより更にブラッシュアップする、そういうパターンが多いかもしれないです。寺崎さん、2番の場合はどう?

とにもかくにも著者をまずは押さえる

寺崎:そうですね。企画書は担当編集者の妄想。この著者にこんな内容で書いてもらったら絶対売れるに違いないというのを作る。個人的にはこれを作る時が一番楽しいんですけど。それを通して企画を著者に提案する、と。ただよく考えたらこれ、1と2の中間が一番多いかも。まず著者に声かけて、「こういう企画を考えているんだけど、まだ担当レベルの企画段階だけど進めていいか」みたいなことを連絡して、最終的に通ってからいつも企画書は見せています。

森上:なるほどね。そのパターン確かにあるね。僕もあるわ、言われてみれば。

寺崎:やっぱり他社に取られたくない著者っているじゃない。

森上:わかる、わかる。

寺崎:だから思い立ったらその日に依頼するという。何回か遅れをとって他社とか他の編集者に取られたという経験をしているので、とりあえず思い立ったら連絡っていうのは心がけている。

森上:そうだよね。著者をまず捕まえちゃうっていうのはありだよね。「この人だ!」っていう時はね。それはあるかもしれない。でも、テーマから人を探す時って結構慎重になるでしょ?そうなると2番のパターンなんじゃない?

寺崎:でも、このテーマでこの人なら絶対いけるって思ったら、著者を先に抑えるかな。

森上:そうだよね。著者さん抑えないとその企画成り立たないからね。本当に人気でいわゆる大物の著者さん、うちはどちらかというと新人の著者さんのパターンが多いけど、たまに大物の著者の場合、思いの丈をぶつけて口説くみたいなことをやりますよね?

寺崎:そうだね。

手紙と電話で原稿依頼していた時代

森上:寺崎さん、手紙とか書いたことあります?ぼくはありますけど。

寺崎:僕も手紙はたまに使いますよ。ところで森上さん、新卒で出版社に入社したでしょ?俺はアルバイトで編プロだったんだけど、その時ってメールあった?

森上:いやぁ、ないですよ。

寺崎:ないよね。

森上:だって僕一番最初はワープロですよ。パソコンじゃなかったですもん。

寺崎:そうか。フロッピーディスクでしょ。

森上:そうですよ。

今井:懐かしいですね。

森上:そうなんですよ。MS-DOSって言ってテキストデータを落として文字指定と色指定っていうのをそれぞれ指定して入稿してましたからね。

寺崎:DTPがなかったですからね。僕はメールが一応あったんだけど全員共有のメール一個。

森上:そうだ。1998年~2000年ぐらいだよね。

寺崎:そうそう。1997年かな。

森上:そっか。98年、99年あたりはメールは個人のものはなかったよね。

寺崎:そう。だから電話で原稿依頼もするじゃないですか。

森上:やりましたね(笑)。

寺崎:当時は携帯もないから、電話で捕まえるのって至難の技だったんですよ。だから電話で著者を捕まえたら絶対にこれを言わなきゃっていうのをメモしてたでしょ。

森上:したよ。そうじゃないと一回のチャンスがアウトですからね。言い忘れたなんてなったら。そういう意味ではあの時はすごく慎重でしたよね。一回の重みってすごかったですよね。

寺崎:そう。一回著者が捕まったらもう「よっしゃ!」って感じでね。

森上:そうだった。今の方がその辺りをちょっと疎かにしてるって言ったら語弊があるけど、緊迫感が違ったよね。

寺崎:手紙を送って届いた頃に電話するんだよね。

森上:そうなんだよ。2、3日後とか。

寺崎:俺も誰に教わったかわからないけど、「一枚の手紙は失礼だ」って教わって2枚以上いつも書いてた。

森上:でも、基本的に2枚以上になっちゃうよね。ご本人の過去の著書のこととかにまず触れたりするわけじゃん。それで感想を述べながらこちらがどれだけ想っているかとか、考えている企画のことについてバーッと書くわけじゃん。2枚はいっちゃうよね。あと、僕が手紙以外にやったのは講演会とかセミナー。

寺崎:行ってたんでしょ、現場に。

森上:そう(笑)。現場に行っちゃうパターン。

寺崎:そしたら名刺交換できるし、居場所がわかるもんね。

森上:そうそうそう。例えばサイン会とか。自分が担当している著者さんがサイン会やってて、自分が近くにいたら「サインください」って言ったのが他社の編集者だったりとか。そういうパターンも未だにありますよね。

著者を口説き落とす必勝パターンとは?

今井:ちなみに口説き方みたいなものはあったりするんですか?こういうポイントを攻めると口説き落としやすいとか。

森上:どうなんだろう。やっぱりありそうでないかな。基本的に絶対にやっておかなきゃいけないのは、その方の著書が過去にあればチェックしておくとか。それはみんなやってるんじゃないかな。寺崎さんはどうですか?

寺崎:そうね。あえてその著者の本に付箋をいっぱい貼りまくって、打ち合わせの席で手元に置く。

森上:(笑)

寺崎:こんなに読んでますみたいな。

森上:アピールするっていうね。これ大袈裟かもしれないけど、文芸編集者なんて特にそうなんでしょうけど、半分恋愛みたいなもんですよね。恋愛で惚れた相手に気持ちを伝えると言うか。

寺崎:そうだね。それはすごくいい表現だね。そういう意味では成功必勝パターンはない。ご縁があるかないかですね。

森上:そう。やっぱり相性っていうのもありますしね。

今井:そうなんですね。

森上:あとどうしてもしがらみになっちゃうのが会社の看板で行くじゃないですか?その会社に対するイメージとかそういうのにこだわる方も中にはいらっしゃるので、そこで相性が合わないと言うか、そこがダメだったというパターンもゼロではないですよね。

寺崎:そうですね。

森上:そこはもう個人レベルではどうしょうもないというのはありますね。そんなところでしょうかね。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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