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オーストラリアの企業運営体制ー事業体について

オーストラリアでビジネスを始める際、決める必要があるものの一つに企業運営体制があります。運営上必要なコンプライアンスと報告義務や株主体制などによって、下記のような特定の事業体を採用します。

法人の考え方

人ではなく、法律によって「人」として定められているものを指します。人や財産から成立する組織に権利能力が与えられたものを法人としてここでは述べます。

法人ではなく、個人事業主など、人に権利能力を求められる事業体については下記をご参照ください。

会社(法人)

一般的に会社というとこの会社法人を指します。また、外国企業がオーストラリア市場に進出する際に最もよく利用される事業形態であります。完全所有または部分所有の非公開会社は、海外の親会社がオーストラリアで事業を行うために設立されることが多いです。

法人設立

法人設立と言っても、新規に教科書通りに会社を設立する、もしくは、シェルカンパニー( まだ取引きが発生していない会社) を買収することで、オーストラリアで会社を設立することもできます。
法人は、オーストラリア証券投資委員会(ASIC )に登録することで設立され、固有の9 桁のオーストラリア会社番号(Australian Company Number-ACN)が発行されます。
会 社 法2001 年版(Corporations Act 2001)(Cth)(Corporations Act)には、以下のような会社の形態が提示されています。

• 無限責任株式会社 (unlimited with share capital )
• 有限責任株式会社 (limited by shares)
• 有限責任保証会社 (limited by guarantee)、または
• 無債権債務会社 (no liability)(ただし、これは企業の唯一の目的が鉱業または鉱業に関連するものである場合にのみ適用される。)

有限責任株式会社がオーストラリアで最も一般的な事業体の形態で、非公開会社または公開会社(上場企業)のいずれかになります。それでは、非公開会社と公開会社の違いについて説明します。

非公開会社

非公開会社は小規模ビジネス、民間ベンチャー企業や公開会社の子会社として利用されることが多く、コンプライアンスコストを少なく設立する事が出来ます。大規模な非公開会社とみなされる場合、その事業は、監査済みの財務諸表を毎年 Australian Securities & Investments Commission (ASIC) に提出することが義務付けられていたり、外国企業によって支配されている小規模の非公開会社も、監査済みの財務諸表の提出が必要な場合があるが、一定の免除措置の適用が可能である。


• 一定の基準により、大規模非公開会社または小規模非公開会社に分類される。
• 株主に有限責任を負わせ、会社の解散時に株主が被る損害は、株式の支払額と未払い額(存在する場合)に限定される。
• 従業員以外の株主は50 名までとする。
• 限られた状況(例えば、既存の株主や従業員からの資金調達をするケース)を除き、事業発起書やその他の開示書類の提出を必要とするような資金調達活動をオーストラリアで行うことはできない。
• オーストラリア在住の取締役を最低1 名設けなければならないが、秘書役を置く必要はない。秘書役を置く場合、その秘書役はオーストラリア居住者でなければならない。
• 有限責任会社である場合は、 社名に「Proprietary Limited」、「Pty Limited」または「Pty Ltd」の文字が入っていなければならない。
非公開会社は、以下の3つの基準のうち2つを満たす場合
(2019 年7 月1 日以降適用)、大規模非公開会社としてみなされる。
• 当該会社および当該会社が支配する事業体の当該会計年度の連結収益が5,000 万豪ドル以上であること。
• 当該会社および当該会社が支配する事業体の会計年度末の連結総資産額が2,500 万豪ドル以上であること。
• 当該会社および当該会社が支配する事業体の会計年度末における従業員数が100 名以上であること。

上記の3つの基準のうち、2つを満たさない場合、その非公開会社は小規模非公開会社とみなされます。大規模非公開会社であることの重要性は、その企業が、財務内容の開示と会計監査を必要とする年次財務報告義務の対象となることです。外国企業に支配されている小規模非公開会社も、監査済財務諸表の作成と提出を求められることがありますが、一定の免除措置があります。

公開会社

公開株式会社はASXで株を売りだすなど公開資金調達活動を行うことができるます。その反面、非公開会社と異なり、遵守するべきルールが増えます。

• 投資資金を必要とする大規模なベンチャー企業によく利用される。
• 構成員/ 株主の数は無制限である。
• 最低3 名の取締役を設け、そのうち2 名以上はオーストラリア居住者でなければならない。
• 最低1 名の秘書役を設け、オーストラリア居住者でなければならない。
• 有価証券の募集のために事業発起書を発行することができる(適用法令に従う)。
• ASX への上場ができる。
• 有限責任公開会社の場合は、社名の末尾に「Limited」または「Ltd」を付ける必要がある。

ユニット・トラスト(信託)

ユニット・トラストは、トラスト収益と資本を投資家に分配する受託者(法人または会社)から成るビジネス構造です。「ユニット」は、投資家に収益と資本の両方に対する衡平法上の権利を付与し、私募ユニット・トラストでは、通常、トラスト証書と投資主契約の条項に従って、投資主がトラストを管理することにも可能になります。
ユニット・トラストは、一般的にオーストラリアの税法上、フロー・スルー・エンティティとして扱われ、トラストの純益は、投資家の手に渡り、トラスト収益に対する権利に基づき課税されることになります。一部のトラストは、「トレーディング・トラスト」と呼ばれ、会社として課税される場合があります。

オーストラリア支店

外国企業は、オーストラリア支店を通じてオーストラリアで事業を行うことができます。支店は実質的に本店の延長であり、本店が支店を支配することに変わりはないです。
オーストラリア支店を設立するには、外国企業は ASICに登録し、オーストラリアで登録事務所を維持する必要があります。登録された外国企業は、必ず現地代理人を置かなければならなす、現地代理人は、その企業が果たさなければならないあらゆる義務に責任を持ち、違反や罰則の責任を負う可能性が出てきます。また、支店は、外国企業の年次財務報告書をASIC に提出し、その他適用される ASIC の報告義務に従わなければ なりません。

駐在員事務所

外国企業がオーストラリアで事業を行うつもりがない場合は、駐在員事務所を設立することができるます。宣伝活動など事業遂行に相当しないものに限定されるため注意が必要です。会社法でいうと、単に銀行口座を維持することや、特定の単発の取引を行うことなどを指します。

外国企業がオーストラリアに事業所を持つ場合、オーストラリアで事業を行っているとみなされ、駐在員事務所が事業遂行に該当する活動を行おうとする場合は、オーストラリア支店を登録する必要がある。恒設(Permanent Establishment: PE)など様々な観点から専門家の意見を聞いてから判断してください。

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