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築地と私。第2話

正門をくぐり、魚河岸を歩く。

海水で湿った床から潮の匂いが上がる。

ジッ、ジリッ。

新鮮な生きたアナゴの骨を弾く音。

ドスン。ビッ。

長い鮪包丁で解体する光景。

ダンベや樽には、生きた貝が至る所にいる。

その様を見るうちに、流通する魚から季節を感じる事が出来るだろう。

ここが築地。

日本はおろか、世界中から日本人の腹を満たす為に魚が集まる。

当時、

水産物で一日当たり2000トン。

金額にして18億。

7社の荷受が日本は元より、世界中から魚を集め、800の仲卸が買付を行う世界一の魚市場だ。

場内は至る所に店舗があり、迷路のような作りになっている。

商売のやり方も、同じ物は一つもない。

場内を歩くうちに、気付けば私の靴は海水まみれだった。

次回から長靴は必須だな。

社長に言われるがままに、場内中央の荷受を目指す。

今日は大事な取引先の挨拶だ。

早速、指定された場所に辿り着くと

部長自ら

「よく来たな?噂の新人か。朝ごはんでも食べよう。」

丁度朝ごはんの時間だったので、食券を貰い、食堂で朝ごはんを頂いた。

「沢山食べろよ?塩辛は好きなだけ取れよ。魚屋だからな。」

「はい。」

荷受の朝は早い。

夜中の一時から仕事が始まり、セリを終え、朝ごはんを食べた後に取引先を周り、昼頃に退社という流れであり

丁度一息、と言うのがこの朝食の時間だ。

見渡すと、同業者が朝食を食べながら仕事の打ち合わせをしている様子に気付く。

「そのうち分かると思うんだが。。正直、国内だけでは魚が集まらない。本当に魚が獲れてないんだ。昔からだが、、日本は世界中から魚を集めている。市場法も変わり、今は昔のような商売では儲からないからなぁ」

「市場法ですか?」

「ああ、知らないか?そりゃそうだな。おい?!S!こいつにこれから仕事教えてやってくれ!」

レスラーの様な恰幅の良い体格に、帽子に輝くセリ人のバッジ。ホタテの貝柱をガムがわりに噛んでいる姿は只者ではない。

見るからに魚河岸の商売人の出立だ。

「お?!こいつがあの社長の所の新人かぁ。喜んで!社長には義理がありますから。」

「宜しくお願いします。」

「よし、そうしたら明日、、セリ見に来な?魚河岸の商売を教えてやるよ。」

このS氏との出会いが、今後の私の商売において衝撃な出会いになるとは、まだ知る由もなかった。

次回に続く。

#築地市場 #ブログ #フォージグリーンライト #forgefood








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