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李克強氏の死去に中国史を想う

新華社李克強中国前首相死去
🇨🇳の新華社より

本日朝、突然のビックニュースが舞い込んできた。李克強中国前首相が死去したのである。
あまりの突然の死に驚き、仕事でのミーティング中だったが、内容が全く頭に入らなかった。(笑



場所は、上海郊外浦東地区の高級ゲストハウス、「東郊賓館」。
テニスやバトミントンコート、プール、ボーリング場などを備えたリゾートホテル。李克強氏は体育会系とまではいかなくても身体を動かすのは好きだったようで、いかにも氏が好きそうなホテルっぽく感じる。
氏は木曜日にここに入り、水泳中に突如心臓にトラブルが発生、心臓発作で死去という。

暗殺など、陰謀説の方が話題として「面白い」ので、SNSでは、しばらくこういった陰謀説が主流になるだろう。しかし私はそれには組しない。あくまで興味は現実を持って判断すべきである。

李克強氏は、中国の共産党幹部の中でも、合理的でイデオロギーにこだわらない現実主義者であった。
外から見ると「話がわかる人」で英語もペラペラ、国際感覚も豊富であった。一言で言ってしまえば、「めちゃ有能」である。
しかし、それがほぼ国外を出たこともなく外国語も話せない習近平総書記にとっては、「めっちゃ嫌な奴」として映ったに違いない。
昔の王朝風に表現すれば、習近平が貴族か宦官出身に対し、李克強は己の頭でのしあがってきた科挙組のホープといったところ。今の中国に「皇帝」はいないが、中国の権力闘争の構図は変わらない。

おそらくは、中国あるあるの権力闘争に敗れたことによる、これまた中国史あるあるの「憤死」と思われるが、これで1つの歴史の話を思い出した。

始皇帝の秦が滅びた後、中原の世界は項羽と劉邦で天下を分けた。結果的には、劉邦が天下を取ったのは語るまでもないが、もう一方の項羽の参謀に范増と言う人物がいた。
彼は敵から非常に恐れられた知恵袋だったが、最終的には主君に愛想を尽かし、骸骨を乞うた。自らナンバーツーの椅子を蹴りったのである。
自ら辞めたと、辞めさせられたの違いはあるけれど、同じナンバーツーとしてトップから信頼されず、自分のポリシーをことごとく否定された境遇は、なかなかに似ている。

范増その後、背中にコブができそれが破裂し死去したというのが『史記』での記述だが、歴史的にはこれも憤死となっている。

ただ医学的には、背中にこぶができるのは糖尿病の末期症状あるあるで、おそらく史記の記述が本当であれば、范増は糖尿病で死んだと思われる。
平安時代の藤原道長も同様の症状が出て死亡していることがわかっており、「記録に残る日本最古の糖尿病患者」となっている。

そして范増は、もしかして「歴史的記録に残る世界最古の糖尿病患者」かもしれない…

今回の李氏の死は、習近平政権にとってどういう影響をもたらすだろうか。少なくても、共産党幹部の中でも「話がわかる人」の一鶴を失った。
もう1人、西の横綱である劉鶴前副首相がいるが、彼が粛清されたら「本物」である。

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