フェルスタッペン、サインツを封じ切る——F1カナダGP決勝

優勝したフェルスタッペンと、追いすがるサインツ

F1カナダGP決勝は、セーフティーカー明けの終盤戦に首位のフェルスタッペンとサインツが1秒以内の接近戦となったものの、フェルスタッペンが封じ切って今季6勝目を挙げた。

ジル・ヴィルヌーヴサーキットは2つの連続したDRS区間がある。①コース後半のヘアピンからシケインに至るコース最長のストレート、②ホームストレートの1コーナー手前まで、だ。このうち②についてはよほどタイム差がないと追い抜きが難しく、①の区間でサインツがどれだけフェルスタッペンに追いついてシケインで追い抜きを仕掛けられるかが勝負だった。

ここでフェルスタッペンは自分の直線での速さと、サインツのDRSでのゲインを天秤にかけたうえで、「最初のDRS区間の開始時点でコンマ8秒程度のギャップがあれば、ストレート後のシケインでは抜かれない」と見切って抑え切ったと感じた。 それがわかっているから、変なウィービングやブロックの動きはなく、最速を走れるラインをひたすらトレースしているように映った。

フェルスタッペンは無線トラブルもあった中での見事な防戦だった。F1通算25勝のフェルスタッペンと、未勝利のサインツとの経験の差が出たように思えた。

サインツはコース前半の中速区間でトラクションを綺麗にかけるために格闘しているのがオンボードカメラでも伝わってきたが、抜いて勝つためにはもう一押し足りないように感じた。追い抜きにかかる周回と、バッテリーチャージにかける周回でメリハリをつけた方が良かったかもしれない。しかしながら、1周でもチャージラップを入れるとフェルスタッペンに引き離されるため、毎周追い回す以外にやりようがなかったとも思える。

SC中に履くタイヤもハードしか選択肢がなく、ミディアムで追い上げることができないのも痛かった。 チームメイトのルクレールとて、アルピーヌを抜いてからはメルセデスにすら迫れなかったわけで、フェラーリのレースペースではフェルスタッペンに追いすがるのが精一杯だったかもしれない。

2番手スタートのアロンソは頑張ったが残念。 エンジントラブルの発生で7位(レース後ペナルティにより9位に降格)がやっとの結果だった。

これでフェルスタッペンがチャンピオンシップで2勝分の差をつけて独走態勢に入った。オーストラリアでリタイアし、ルクレールに40ポイント以上の大差をつけられたときにはこのような結果になるとは思いもしなかった。こんなに強いシーズンなのに前年末で撤退してプロモーションに一切使えないホンダは本当に残念だ。

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