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もうひとつのフォーミュラリー 第1巻  ~薬剤師向けの医薬品集は存在しない~


第1章 はじめに


▶病院薬剤師の5つの悩み

この度は拙著を手に取っていただき、ありがとうございます。

突然ですが質問です。

あなたの施設は下記のうち、どれかに当てはまりますか?

□ 「薬剤師不足」に喘いでいる
□ 「教育体制」が不十分である
□ 「業務改善」の余地が沢山ある
□ 「情報共有」が徹底していない
□ 「予算」が不足している

もし当てはまらない場合は、今すぐ読むのを止めていただいて結構です。

本稿はこれらに該当する医療施設の薬剤師向けに書かれています。

かく言う私の勤務先もそうでした。

深刻な「薬剤師不足」が何年間も続いた(というか現在も続いている)

「教育体制」が不十分なまま、若手を現場に投入せざるを得ない事態に

やがて課題が山積し、「業務改善」が急務となる

原因分析の結果、「情報共有」の必要性が浮上する

情報統合システムを導入しようにも、高額なため「予算」が足りない

この5つの悩み(薬剤師不足・教育体制・業務改善・情報共有・予算)を克服するための方策こそが、本書のテーマ「フォーミュラリー」なのです。


▶フォーミュラリーとは?~7つの機能~

近年「フォーミュラリー」という言葉をよく耳にするようになりました。

特に有名なのが、2015年頃より増原慶壮先生(元聖マリアンナ医科大学病院薬剤部長・現日本調剤取締役)が提唱されている「科学的根拠に経済性を踏まえて策定された医薬品の使用指針」としてのフォーミュラリーです。

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導入すれば近々診療報酬として評価されるという噂も漏れ聞きます。


ただ、何もこれだけがフォーミュラリーではありません。

フォーミュラリーは直訳すれば「医薬品集」。

下記のように、実に様々な意味合いがあるのです。

≪フォーミュラリーの7つの機能・側面≫
1.採用医薬品集(リスト):100%
2.臨床エビデンス(有効性・安全性)の評価・確認:76%
3.病院コストに対する薬剤費の影響の評価:85%
4.採用・中止の手続きのルール化(委員会・手順):93%
5.医薬品の使用手順書(標準化・適正使用) :63%
6.薬剤選択をサポートする情報(適正使用・チーム医療):45%
7.ジェネリック医薬品の使用促進:97%

※平成30年度第3回JASDIフォーラムより

ちなみに、付記したパーセントはJASDI(日本医薬品情報学会)会員施設に対して実施したアンケート結果に基づいています。

この本のタイトル「もうひとつのフォーミュラリー」とは、私がブログ・YouTube・Twitterで情報発信している「クラウド型医薬品集」のことです。


▶クラウド型医薬品集とは?~求められる3要件~

クラウド型医薬品集(以下「クラウド型」)は、文字通りクラウド上で制作した医薬品集のことで、医薬品情報サイトのリンクや専門書の引用で構成されています。

これは、「IT全盛」という時代背景を考慮すれば、(少なくともDI担当者ならば)ごく自然に思いつく発想です。

当院では、この「クラウド型」を2013年より導入しています。

≪当院のクラウド型医薬品集の概要≫
■ プラットフォーム:kintone(サイボウズ社)
■ 主なリンク元
 医薬品医療機器情報提供ホームページ
 製薬会社医療関係者向け情報サイト
 医薬品情報サイト(SAFE-DIClinical Cloudなど)
 透析患者に対する投薬ガイドライン(白鷺病院)など
■ 主な引用書籍
 錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック第8版(じほう)
 内服薬 経管投与ハンドブック第4版(じほう)
 実践 小児薬用量ガイド 第3版(じほう)
 注射薬調剤監査マニュアル 2021(エルゼビア・ジャパン)
■ アプリ呼称:Hospital Formulary(処方)・同(注射)
■ 収載品目数:(処方)2955品目(注射)1484品目
※品目数は2021.1.2現在(重複・削除済みデータ含む)。

「クラウド型」の特徴は、「信頼性・最新性・迅速性」です。

(信頼性)情報源は信頼性の高いサイトや書籍
(最新性)サイトは最新リンク、書籍は最新刊を利用
(迅速性)薬品名検索だけで迅速アクセス

翻って、皆さんが日々使用されている医薬品集は次のどれでしょうか?

□ 電子カルテ付属のDI検索機能(またはそれを利用して作成した医薬品集)
□ 書籍(今日の治療薬治療薬ハンドブックポケット医薬品集など)
□ JAPIC PIA(院内採用医薬品集作成システム)等で作成した医薬品集

2020年にフジテレビ系で放映されたドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」の舞台となった萬津総合病院の場合は下記の通りでした。

萬津総合病院薬剤部で確認できた書籍版医薬品集
・治療薬マニュアル:24冊
・今日の治療薬:3冊
・治療薬ハンドブック:2冊
・・・腎臓系薬剤師くらば(YouTuber)さんの調査より

しかし、これらはお世辞にも「最新性」が高いとは言えません。

身も蓋もないことを言えば、病棟薬剤業務実施加算に関する通知に照らせば、インターネットを使用していない時点でアウトなのです。

≪A244 病棟薬剤業務実施加算(通知)≫
(3) 病棟薬剤業務とは、次に掲げるものであること。
イ 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)によるなど、インターネットを通じて常に最新の医薬品緊急安全性情報、医薬品・医療機器等安全性情報、製造販売業者が作成する医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に関する情報、医薬品・医療機器等の回収等の医薬品情報の収集を行うとともに、重要な医薬品情報については、医療従事者へ周知していること。


▶薬剤師向けの医薬品集が存在しない理由

医療ニーズは多様化・専門化・複雑化の度合いを加速しており、必然的に実務上要求される医薬品情報もまた増加の一途をたどっています。

「添付文書だけでは薬剤師業務は成り立たない」

これは薬剤師ならばとっくに気づいている筈の事実ですが、奇妙なことに「薬剤師向け」の医薬品集はほとんど見当たりません

理由は簡単です。

巷に存在する医薬品集は、医師を想定して作られているからです。

多忙な医師は、添付文書情報が端的に確認できれば十分なのです。

しかし、薬剤師は違いますよね?

「薬剤師向け」が存在しないのならば、自分で作るしかありません。

そう、3つの要件(信頼性・最新性・迅速性)を満たした「薬剤師の薬剤師による薬剤師のための医薬品集」を作るのです。


【コラム】「クラウド型」のルーツ

「クラウド型」は、虎の門病院・林昌洋先生から伺ったお話がルーツです。

添付文書よりも踏み込んだドーズ・工程の管理を、院内独自のHospital Formularyをもって行い、「マクロ」のチーム医療を実践する。
※平成23年度第4回JASDIフォーラム・オープニングリマークスより

その時私は、Hospital Formulary(医薬品の使用指針)が病院薬剤師にとっての「必須アイテム」だと確信したのでした。

ただ、そのためには薬剤師向けの医薬品集が必要。

なぜなら、「指針」とは往々にして逸脱するもの。

それを「臨床判断」を以って軌道修正するのが薬剤師の役割。

なればこそ、「(臨床判断のエビデンスとなる)情報源」として「クラウド型」を制作する必要性を感じたのです。


▶自己紹介~病院薬剤師だまさんってどんな人?~

遅ればせながら、ここで少し自己紹介をしておこうと思います。

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私は今年(令和3年)でブログ歴16年となる病院薬剤師ブロガーです。

地方の県庁所在地にある中核病院に勤務しています。


そもそも病院薬剤師ブログ自体、希少な存在です。

試しに「病院薬剤師 ブログ」で検索してみてください。

検索結果

何と何と私のブログが上位表示されてしまいます!

理由はライバルが少ないから。

多忙な病院薬剤師にブログを書く暇なんかないのです(通常は)。

それでも私がブログにハマった理由。

それは、日常の中で得られた「学び」や「気づき」を手軽に気軽に情報発信できるブログに、すっかり魅了されてしまったから。

私にとってブログは、いわば「補助脳」。

今ではブログの執筆を通してでないと、まとまった思考ができない境地にまで達しました(笑)。

そんなブロガーの私が、2019年からYouTubeとTwitterも開始しました。

少しでも興味が湧きましたら、そちらも含め是非覗きに来てください。

【ブログ】※代表的なもの
病院薬剤師って素晴らしい!【病院薬剤師ブログ】
悩める薬局長のための薬剤師不足でも業務改善できるクラウド型院内医薬品集を制作するためのブログ
クラウド型医薬品集で変える薬剤師業務

【YouTube】
病院薬剤師って素晴らしい【YouTube編】

【Twitter】
病院薬剤師だまさん@クラウド型医薬品集


【第1章のまとめ】

・病院薬剤師の5つの悩みはフォーミュラリーで解決できる。
・フォーミュラリーには7つの機能・側面がある。
・「クラウド型」は3要件(信頼性・最新性・迅速性)を満たしている。
・薬剤師の薬剤師による薬剤師のための医薬品集を作ろう。
・病院薬剤師だまさんは「クラウド型」の情報発信を継続している。



第2章 DI業務「軽視」の怪


▶業務改善の鍵はDI業務だった!

突然ですが質問です。

あなたの施設(薬局・薬剤部・薬剤科)は、DI業務に力を入れていますか?

え?DI室ならあるよ?

・・・いえいえ、そんなことを言ってるのではありません。

今や「病棟薬剤業務」の時代。

病棟に限らず、各部門の薬剤師一人一人がDI業務を担っている筈です。

日本病院薬剤師会が公開している「薬剤師の病棟業務の進め方(Ver.1.2)」でも、DI業務を「病棟専任薬剤師の業務」として明確に位置付けています。

4.病棟専任薬剤師の業務
(2) 病棟薬剤業務(主に投薬前における患者に対する業務、医薬品の情報及び管理に関する業務、医療スタッフとのコミュニケーション)
③ 医薬品の情報収集と医師への情報提供等
・医薬品情報の収集と提供、資料作成、処方設計等を行う。とりわけ、PMDAメディナビに登録して、最新の情報を収集する。
・医薬品情報管理室の薬剤師と連携をとり、当該病棟での問題点等の情報を
共有するとともに、各病棟で業務を実施するにあたり必要な情報を収集する。
・当該病棟で使用される医薬品の安全性情報及び新薬、後発医薬品等に対す
る情報を医師等へ速やかに伝達する。

いや、そもそも薬剤師業務の中で、医薬品情報を必要としない業務を探す方が難しいのではないでしょうか?

タイトル

※ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰


繰り返します。

薬剤師一人一人がDI業務の担い手

薬剤師業務の変貌に伴い、DI業務もまた変化を求められています。

DI業務抜きに「業務改善」を行うことなど、ほぼ不可能なのです。


▶「不可欠」なのに軽視され続けるDI業務~偏向・忙殺・一辺倒~

DI業務の重要性は理解していただけたと思いますが、実際に医療現場で重視されているかと言えば、必ずしもそうではありません。

それを痛感したのが、先述のドラマ「アンサングシンデレラ 病院薬剤師の処方箋」でのDI担当者(荒神)の扱われ方でした。

手品をするかコーヒーを淹れるかでしたもんね(溜息)。

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いや、現場だけではありません。

当院では毎年実務実習生を受け入れているのですが、彼らは口を揃えてDI業務については「あまり教わっていない」と回答します。

結局、DI業務を重視しているのは行政のみ、ということになります。

■ 大学教育 ⇒ 医薬品情報の研究・創造に「偏向」
■ 医療現場 ⇒ 医薬品情報の収集・提供に「忙殺」
■ 医療行政 ⇒ 適正使用情報の周知徹底の「一辺倒」

ただ、行政が重視しているのはあくまで「適正使用情報」のみ。

PMDAメディナビに登録したところで、「かゆいところに手が届く」訳でなし、DIリテラシー不足の若手が苦戦する構造が出来上がっています。

DI業務の抜本的改革なくして、「業務改善」はとても覚束ないでしょう。


▶立ちはだかる「3つの壁」~時間・距離・技術~

ところが、いざDI業務の改革を進めようとすると、真っ先に突き当たる「壁」があります。

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それが「時間の壁」「距離の壁」です。


医療は24時間体制で回っています。

よって、薬に関する問い合わせもまた時を選んではくれません。

ところが、DI室で対応できるのは、1週間のうちでたった1/4に過ぎません。

1週間(24時間×7日=168時間)のうちDI室が対応可能なのは・・・
■ 稼動時間:40時間(=8時間×5日;平日日勤帯のみ)
■ 稼働率:23.8%(=40時間÷168時間×100)

これこそが「時間の壁」です。

なので、DI担当以外の薬剤師でも残り3/4に対応できる方策が必要です。


薬剤師は調剤室を飛び出し、様々な部門で活躍する時代となりました。

DI室に依存した既存の情報収集体制は、とうに限界を迎えています。

書籍や資料を見るためだけに、薬剤師たちは遠く離れたDI室を何度も訪問する訳にはいかないからです。

これが「距離の壁」です。

DI室を訪れずとも情報を入手できる方策が必要です。


「クラウド型」ならば、この「時間と距離の壁」が造作なく克服できます。

いわば、情報収集の「いつでも化」「どこでも化」

これに関しては、もはや説明は不要かと思います。


あともう一つ、乗り越えねばならない三つ目の「壁」があります。

「技術の壁」です。

これが克服できない限り、若手は情報収集に忙殺され、薬剤師の本分である医薬品情報の「評価」「判断」のスキルを伸ばすことができません。

このままでは、若手とベテランの差は一向に縮まらないでしょう。

何としても経験不足・DIリテラシー不足の若手への「手当て」が必要です。

20191228【ここヘン】第7回

そこで「医薬品集」という、古来より伝わる「知恵」を拝借したのです。


▶忍び寄る「第4の壁」~多様化~

「3つの壁」の話をしましたが、「壁」はそれだけではありません。

「多様化」もまた、薬剤師にとっての大きな「壁」になりつつあります。

※「多様化」は第21回日本医薬品情報学会のテーマにもなりました。

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これは、近年の薬剤師業務の細分化・専門化に起因します。

例えば抗がん剤一つ取ってみても、製剤(調製)担当者に要求される情報と、病棟(薬学的管理)担当者に要求される情報は、全く「異質」「別次元」のものであり代替は利きません。

すると、どういうことが起こってしまうか?

担当業務に無関係な情報は、どんどん「無関心」になっていきます。

片や担当業務に密接した情報は、「常識」同然となってしまいます。

無関心(=知る必要がない) vs 常識(=伝える必要がない)

かくして、部門間に「多様化の壁」(私は「バカの壁」と呼んでいます)が生まれ、情報共有しようという機運が損なわれてしまうのです。


ただ、マンパワーが潤沢にある施設ならばそれでもいいのかもしれません。

認定・専門薬剤師が屋台骨となり、各部門が「この道一本」でやっていけるからですが、薬剤師不足の施設ではそうはいきません。

何しろ一人一人の薬剤師が「異質」「別次元」の部門を「幾つも」掛け持ちしているのですから(涙)。

情報共有を抜きに業務の効率化もレベルアップも望める道理がないのです。


「クラウド型」では、この「多様化の壁」に対する手立ても講じています。

詳しくは後述します。


【第2章のまとめ】

・病棟薬剤業務の時代到来で、薬剤師一人一人がDI業務の担い手となった。
・大学・現場・行政の足並みが揃わないため、DI業務は軽視されがち。
・「3つの壁(時間・距離・技術)」を「クラウド型」で克服する。
・「クラウド型」は「第4の壁(多様化)」にも対応。



第3章 初公開!「クラウド型」の全容


▶薬品頁を180度スコープ

「クラウド型」の画面遷移は極めてシンプルです。

❶検索ボックスより薬品名検索
  ↓
❷検索結果より目的の薬品を選択
  ↓
❸薬品頁へ

そしてこれが薬品頁です。

薬品頁

薬品頁は、これまで断片的に紹介したことはあったのですが、今回初めて180度(上から下まで)スコープしてみることにします。

≪注意≫
・執筆時(2021.1.2)の情報であり、内容は随時更新されていきます。
・Hospital Formulary(処方)・同(注射)で項目は若干異なります。


▶マスタに関する情報(レコード№1~5)

レコード№1:★薬品名(展開名称)
レコード№2:★一般名称
レコード№3:★項目コード(院内コード)
レコード№4:★YJコード
レコード№5:厚労省コード

レコード№1~5

                  ※ハーフジゴキシンKY錠0.125より

№1・3・4は電子カルテの薬品マスタのデータ(★)を流用しています。

№2も以前は流用していましたが、統一性がないと後述の№16(同一成分薬)で関連レコードがヒットしなくなるのでPMDAリンクに寄せています。

№5は、一部にYJコードと不一致の品目が存在するため追加しました。

また厚労省コードは、PMDAやSAFE-DIの薬品リストからVLOOKUP関数でデータを引っ張ってくる際に重宝します。


▶発注に関する情報(レコード№6~10)

レコード№6:採用区分
レコード№7:採用・削除に関する経緯
​レコード№8:卸情報
レコード№9:流通管理品目
レコード№10:取り扱いに関する備考

レコード№6~10

                    ※エピペン注射液0.3mgより

№6~10は発注業務に関わるローカルデータです。

№6・7は「薬事委員会ベース」の採用区分を確認する必要から登録しましたが、採用区分別の品目数をカウントする際にも利用できます。

№8はSPDのリストを見れば済む話ですが、ここにもあると重宝します。

№9の流通管理品目とは、一定の要件を満たさなければ購入や使用ができない品目のことで、近年増加傾向にあるため追加しました。

愛媛大学医学部附属病院薬剤部が公開しているリストとリンクしています(リンクがあれば該当品目です)。№10はその備考です。


▶属性に関する情報(レコード№11~18)

レコード№11:投与区分
レコード№12:規制区分
レコード№13:規格単位
レコード№14:薬価
レコード№15:その他の属性
レコード№16:同一成分薬
レコード№17:薬効上の属性
レコード№18:出来高算定品目

レコード№11~18

                  ※テセントリク点滴静注840mgより

№11~14は説明不要でしょう(SAFE-DIクリッピングを利用しています)。

№15は以下の属性に該当すれば表示されます。

□ 最適使用推進ガイドライン
□ RMP(医薬品リスク管理計画)
□ 局方品
□ オーファンドラッグ指定
□ 基礎的医薬品
□ 使用医薬品

№16は№2(一般名称)と連動して関連レコードを表示させます。「後発品の薬品頁で足りない情報を先発品で調べてみる」なんてことも可能です。

№17は以下の属性に該当すれば表示されます。

□ 麻薬(投薬上限:14日分)
□ 麻薬(投薬上限:30日分)
□ 向精神薬(投薬上限:14日分)
□ 向精神薬(投薬上限:30日分)
□ 向精神薬(投薬上限:90日分)
□ 抗がん剤(危険度Ⅰ)
□ 抗がん剤(危険度Ⅱ)
□ 抗がん剤(危険度Ⅲ)
□ 抗がん剤(危険度Ⅳ)

№18の出来高算定品目は、Clinical Cloudで公開されているリストとリンクしています(リンクがあれば該当品目です)。


▶リスク管理に関する情報(レコード№19~24)

レコード№19:ハイリスク薬
レコード№20:腎機能「要確認」薬
レコード№21:定期検査「要実施」薬
レコード№22:相互作用「要確認」薬
レコード№23:周術期「要確認」薬
レコード№24:TDM対象薬

リスク管理に関する情報

             ※メソトレキセート点滴静注液200mgより

№19~24は薬学的管理上のフラグ(リンク・記載があれば該当品目です)。

それぞれ下記のサイトを参照しています。

レコード№19 ⇒ 診療報酬情報提供サービス
レコード№20 ⇒ 腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧改訂33版
レコード№21 ⇒ Clinical Cloud
レコード№22 ⇒ 「医療現場のための薬物相互作用リテラシー」(南山堂)
レコード№23 ⇒ 「周術期の薬学管理改訂2版」(南山堂)
レコード№24 ⇒ TDM対象薬 vol8, 2019(育薬フロンティアセンター)


【コラム】データベースとしての「クラウド型」

忘れがちなのが「クラウド型」はデータベースであるという点です。採用リストは採用リスト、Q&AデータはQ&Aデータ、卸データは卸データ。そんな風にデータをバラバラに管理するなんて勿体なさ過ぎます。どれも医薬品に紐付いている情報なのですから、薬品名毎に「クラウド型」としてまとめればいいのです。kintoneならば、AccessやFileMakerのようなクエリ設定も不要なので、直感的な操作で下記のようなデータ集計くらいならば一瞬です。「クラウド型」は管理業務でも十分威力を発揮します。

グラフ集計


▶製品に関する情報(レコード№25~27)

レコード№25:PMDAリンク
レコード№26:製品サイト
レコード№27:説明動画

レコード№19~21

                 ※レルベア200エリプタ30吸入用より

№25はPMDA(一般名別医薬品情報)への直リンク。

添付文書・インタビューフォーム・患者向け医薬品ガイド・くすりのしおり・RMP・重篤副作用疾患別対応マニュアル・安全性情報・承認情報(審査報告書など)が参照できます。

№26は製品サイトへの直リンク。

製品情報・適正使用情報・FAQ(よくある質問)・患者指導用資材などが参照できますが、特設サイト・説明動画・配合変化表・FAQといった汎用情報は別建てでリンクを貼っています。

№27は製品動画の配信があればリンクしています。


【コラム】製品サイトを利用しないのは勿体ない!

余談になりますが、製品サイトには有益な情報が沢山転がっているのに、「面倒くさい」という理由からあまり活用できていません。勿体ないと言わざるを得ません。だからこそ「クラウド型」に「近道」を作ったのです。

医薬品情報を収集・管理する際に、「過去の記録が整理できていない、分析できない」 「各製薬企業のHPやFAQを見に行く不便さ」 「他施設や現場での使用実態に関する情報の不足」等の煩わしさや不便さを感じたことはないでしょうか?

これは、岡山大学病院薬剤部が監修した国内初のAI搭載型医薬品情報提供支援システム「AI-PHARMA」のホームページでの問いかけです。やはり、製薬企業のHPやFAQの使い勝手の悪さは薬剤師共通の悩みのようですね。



▶同効薬に関する情報(レコード№28)

レコード№28

                   ※オルプロリクス静注用1000より

SAFE-DIやClinical Cloudで公開中の同効薬一覧表のリンクを貼付します。

同じ一覧表が貼付されている薬品は関連薬として直下に自動表示されます。

※「SAFE-DI枠」「Clinical Cloud枠」「予備枠」の3つを配置しています


▶用量に関する情報(レコード№29~31)

レコード№29:保存期腎不全患者および透析患者への投与方法
レコード№30:肝機能低下時の投与量
レコード№31:小児薬用量

レコード№29~31

                ※アシクロビル錠200mg「トーワ」より

№29~31はSpecial Populationの用量に関する情報です。

それぞれ下記のサイト・書籍を参照しています。

レコード№29 ⇒ 透析患者に対する投薬ガイドライン13th Edition
レコード№30 ⇒「肝機能低下時の薬剤使用ガイドブック」(じほう)
レコード№31 ⇒「実践 小児薬用量ガイド 第3版」(じほう)


▶生殖毒性に関する情報(レコード№32~34)

レコード№32:催奇形性に関する情報(薬剤危険度)
レコード№33:催奇形性に関する情報(情報量)
レコード№34:男性で避妊が必要との記載がある医療用医薬品

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                     ※テグレトール錠200mgより

№32・33は下記の書籍を参照しています。

実践妊娠と薬第2版」(じほう)

№34はリンクがあれば該当品目です。


▶服薬介助に関する情報(レコード№35~37)

レコード№35:服薬における実例
レコード№36:服薬介助・服薬指導のヒント
レコード№37:避けたほうがよいこと

レコード№35~37

            ※クラリシッド・ドライシロップ10%小児用より

内服薬限定の情報です。№35~37は下記の書籍を参照しています。

乳幼児・小児服薬介助ハンドブック第2版」(じほう)


▶製剤に関する情報(レコード№38~39)

レコード№38:粉砕・脱カプセルの可否
レコード№39:簡易懸濁法の可否

レコード№38~39

             ※ランソプラゾールOD錠30mg「サワイ」より

内服薬限定の情報です。№38・39は下記の書籍を参照しています。

レコード№38 ⇒「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック第8版」(じほう)
レコード№39 ⇒「内服薬 経管投与ハンドブック第4版」(じほう)


▶配合変化に関する情報(レコード№40~41)

レコード№40:Dropboxフォルダ内ファイルリスト
レコード№41:配合変化表

レコード№40~41

                                               ※ビーフリード輸液(500mL袋)より

注射薬限定の情報です。

№40はkintoneのプラグイン(Dropbox for kintone 2.0)を用いて、個人のDropboxに保存しているスキャンデータを呼び出す機能です。

手順❶スキャンデータをDropboxに保存する(薬品毎にフォルダを作成)
手順❷枠内にDropboxのフォルダ名を入力する
手順❸Dropboxにログインした状態でUpdateボタンをクリックする
      ↓
Dropboxフォルダ内に保存されたスキャンデータのリンクが生成する

※個人権限のスキャンデータを参照するので著作権法には触れません。

№41は製品ページの別建てリンクです。


▶血管外漏出に関する情報(レコード№42~43)

レコード№42:危険度
レコード№43:血管外漏出時の応急処置

レコード№42~44

                 ※ビーフリード輸液(500mL袋)より

注射薬限定の情報です。


▶その他の情報(レコード№44~46)

レコード№44:フィルター通過性
レコード№45:混注容量情報
レコード№46:FAQ(よくある質問)

レコード№44~46

                 ※ビーフリード輸液(500mL袋)より

№44・45は注射薬限定の情報。№45・46は製品ページの別建てリンクです。


【コラム】新鋭の外部サービスも味方にできる!

近年、医薬品情報提供支援システムの進歩は目覚ましく、AI技術を活用したAI-PHARMAのようなサービスも登場してきました。会員登録とログインが必要とはなりますが、薬品頁にリンクを貼付しておけば、情報収集の幅が大きく広がります。この拡張性・柔軟性も「クラウド型」の大きなメリットなのです。

≪代表的な医薬品情報提供支援システム≫
・薬剤師ノート(広島佐伯薬剤師会)
・CloseDi(株式会社CloseDi)
・AI-PHARMA(木村情報技術株式会社)
・FINDAT(日本調剤株式会社)

20190421【フォミュつく】注射剤の配合変化


▶コメント欄(レコード№47)

レコード№47

                            ※イムラン錠50mgより

さて、ついに「真打ち」登場です。

№47のコメント欄を抜きにして「クラウド型」は語れません。

コメント欄を端的に説明すれば、薬品毎に紐付いた「掲示板」機能ですが、これがあることで「双方向」の情報発信を実現しています。

つまり、薬剤師一人一人が自ら入手した情報をコメント欄に書き込むことで、「クラウド型」を薬剤師業務のどのようなシーンにも対応できる情報源へと成長させることができるのです。

先述した「多様化の壁」を克服するための決定打となる筈です。

ちなみに当院では下記のような情報が書き込まれています。

・文献情報(メーカーに照会した情報も含む)
・適応外使用情報
・ローカルルール(調剤内規も含む)
・ゼロ情報(「情報がない」という情報と対処例)
・メーカー会員サイトID/PW(動画の視聴や麻薬の製品情報の閲覧用)
・補足情報(例.条件付き簡易懸濁法可能薬品の「条件」)
・その他(ノンジャンルの情報)

※ある程度「汎用性」が出てきたら、レコード項目として独立させることも考慮しましょう。

ただ、何のルールも決めずに放置していると、玉石混淆な「情報の墓場」となってしまい、重要な情報が見つけにくくなってしまいます。

・「再現性」のある(再び尋ねられる可能性の高い)情報が対象
・「添付文書のみ」で解決できる情報は原則として対象外

これが当院のルールです(ポータル画面にもそう書いてあります)。

ところでコメント欄に書き込んだ瞬間、ポータル画面に新着通知が出ますので、不備や誤謬のある情報を他のスタッフが弾くこともできます。

レコード№47③

実は、コメント欄には「変更履歴」への切り替えボタンがあります。

青色の時計アイコンをクリックすると、その頁の変更履歴が閲覧できるだけでなく、変更前に復元することもできてしまいます。

レコード№47②


「これがあって助かった」と思える場面もあるかもしれませんので、是非覚えておきましょう。


【コラム】kintoneで絶対にやってはならないこと

先日私は史上最悪の大失態を犯してしまいました。それは「コメントのあるレコード」の削除です。大概のミスならばリカバー可能ですが、添付ファイルやコメントが付いたレコードを誤削除すると後の祭りで、悔やんでも悔やみ切れません(第2巻で詳しく解説します)。

アプリの誤削除 ⇒ 14日以内なら無料で復元可能

レコードの誤記入(上書き・削除等) ⇒ 変更履歴経由で復元可能

レコードの誤削除 ⇒ 30日以内ならプラグインkbackupで復元可能
・添付ファイルはスタンダードコース以上でないと復元不能
・コメントはいかなる方法でも復元不能


【第3章のまとめ】

・テキスト・リンク・添付ファイルなど様々な媒体に対応
・書籍のスキャンデータを合法的に参照できるプラグインも実装
・関連レコードの自動表示・グラフ集計機能も充実
・「クラウド型」は外部サービスとも容易に連携可能


第1巻はここまで。

最後までお読みいただきありがとうございました。

第2巻では「クラウド型」の制作方法について詳しく解説します。

乞うご期待ください。

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