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写真は正直か

一般的に写真というのは事実を見せるものという認識をされています。なので証拠を見せるとか、何かを証明するために使われるものですが、現実社会では正確性に若干の疑問が残ることも結構あります。

こんにちは。写真の先生してます、大野朋美です。

実態を表しているか

ここ数年、人が密集していることを伝える写真を、報道や何らかのメディアで、目にすることが増えました。品川駅のコンコースとか、どこかのお祭りの様子とか。3年ほど前に、東京のある商店街の混雑した様子が写真と共にネットに流れて話題にもなりました。

こういった写真は、たいてい焦点距離の長い望遠レンズを使って写しています。レンズを道と平行に向けて写すと、前後の人が折り重なるように見える写真になるのです。こういった特性を「圧縮効果」といいます。実際にそこまで人が密集していたのかどうかは分かりませんが、印象通りとは言えない場合も少なからずあったと思います。

一般的に写真というのは事実を見せるものという認識をされています。なので証拠を見せるとか、何かを証明するために使われるものですが、正確性に若干の疑問が残ることも、現実社会には結構あります。

写真に詳しい方なら知っていると思いますが、写し方によって見え方というのは変わります。

物件の写真で

実際と印象が違う例でよく知られているのは、不動産物件の写真やホテルなどの写真ではないでしょうか。実際に行ってみたら、写真で見たより狭かったという…。こういったことは、写真に詳しくなくても、経験から知っている人は少なくないはずです。

この例は、最初の話とは逆に、広角レンズ、超広角レンズを使って部屋を写すことによるものです。広角レンズを使うと手前側が引き延ばされて写ってしまうのです。写す側としては、「狭い部屋を広く見せよう」という意図があったというより、「部屋全体を見せたいと思って写したら、そのようになってしまった」のかもしれません。

有名人の報道写真で

政治家や有名人の報道写真も、疑問に感じるものが結構あります。

テレビ番組で、誰かの記者会見の様子が映されるのを観ていると、たいてい報道カメラマンが連写していますよね。フラッシュの光と、バシャバシャという音が聞こえてきます。

人が話をしたり、笑ったりしているときというのは、1秒間のうちに表情がコロコロと変わります。たとえ笑顔で話している場面であっても、僅かな一瞬を切り取れば、その中にはいかめしい表情、泣いているような悲壮な表情に写ってしまう瞬間もあるのです。

なので連写でたくさん撮っておけば、あとで記事にした時の見出しや文章に合った表情を取り出して使うことができたりもします。

このような写真も、はっきりと嘘をついたものではないかもしれません。でも正確な情報か? と問われれば、疑問が残ります。見る人を騙していないとは言い切れないと思うのです。

写真を学んでいるなら、その知識は、自分が撮影するときのためだけじゃなく、ふだん目にする写真についても、もしかしたら印象通りじゃないかもしれない、という可能性を、忘れないでおきたいものです。

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