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唯心的音楽論 / Elvis Presley 「My Happiness」

 母親思いだったエルヴィス 。彼は18歳の時、メンフィスでサン・レコードを経営していたサム・フィリップスの録音スタジオを訪れ、母・グラディスの誕生日プレゼントにするために、「My Happiness」と「That`s When Your Heartaches Begin」の2曲をレコードに吹き込んだ。その歌声からは、少しでも母親に喜んで貰いたいというエルヴィスの優しさが伝わってくる。

 反抗する若者の象徴として捉えられ、デビューした当時は、その歌やパフォーマンスに眉をひそめる者も多かったが、実際の彼は繊細で思慮深く、敬虔なクリスチャンでもあった。「Heartbreak Hotel」には或る種の聖性があるが、エルヴィスの音楽はその根底にセイクリッドなものを内包している。彼にとって、音楽とは祈りそのものだったのではないだろうか。

 僕は常々、「『反抗』や『反体制』がロックの本質ではない」と考えている。ロックとは、音楽とは、希望そのものであり、人に生きる喜びや夜明けを信じる力を与えるものだ。エルヴィスのロックンロールに耳を傾ける度に、僕はその思いを強くするのである。

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