見出し画像

夏の魂

7月13日。
東京では、盆の入り。
昨年まだ50代で亡くなった義弟。
その一家が、今日我が家を訪ねてきた。

私からすると義理の妹に当たるその人は、私より20ばかり年上だ。
甥っ子、姪っ子はみな成人したいい大人。

義妹、甥っ子夫婦、姪っ子夫婦とその子供、姪。
総勢、大人6人と赤子1人を迎え入れ、今日は大いに賑わった。

なんと言っても、主役は生後6ヶ月の赤ちゃん。
うちの長男と一文字違いの名前のため、何やら親近感が半端ない。
といっても、歳は9歳も違うのだから、今は赤子のその子が物心つく頃には長男はひねくれものの高校生とかなわけだけど。

赤ん坊がひとりいると、それだけで場が和む。
話が尽きない。

離乳食は?
はいはいはするの?
体重はどのくらい?

誰が抱っこするとか、しないとか。
人見知りが始まったとか、今日は大丈夫だとか。
ちょっと動けば、それだけでみんなが注目する。

ふにゃーとでも泣けば、みんなが一斉に振り返る。
つい4〜5年前は、うちにもこんな小さな子がいたのかと思うと嘘のようだ。
6歳差になるうちの長女は、遠巻きに眺めていた。

私が調子にのってほいほい赤ちゃんを抱っこしていたのを、ちょっと複雑な顔で見る。
睨む、のではない。
ちょっとすねたような口元。

ずっと末っ子で従兄弟の中でもダントツ最年少だった娘からすると、やや複雑な心境なのかもしれない。
それは必要な経験だ。
ヤキモチ焼け焼けと思いながら、私はむっちむちの赤ちゃんの感触を楽しんだ。
楽しんだと言ったら失礼だけど、楽しいんだもの。

よだれは垂らすし、指や洋服はなめ放題。
きょろきょろよく動くので油断はできないけれど、幸い泣かれることはなかった。よし。

私の住まいは神奈川だけど、義弟の実母は東京に住んでいる。
そのため、今日が新盆なのだと。
義妹もその子どもたちもみんな働いているため、一同に会する機会は多くない。

お盆とは、そのような場である。
亡くなった人の魂を思い、みなが顔を揃える場。
私はそのように感じる。

義理の弟。
その人に会ったのは、数えるほどだ。
とても厳格な人だったと聞く。
とても真面目な人だったと聞く。
そして、とても仲の良い家族であったと。

一様に談笑し、またねと別れた今日。
この後、義妹の自宅で迎え火を焚いたそうだ。
あいにくの雨。

灯火は天に届いただろうか。
御霊はご自宅に帰ってこれたのだろうか。
お盆とは、亡くなった人の魂がつかの間、現世に戻れる特別なとき。

ひとときの憩いを。
家族の時間を。
切に願う。

夏の魂。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?