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おててつないだ帰り道

まんまるほっぺに、ぺちゃっぱな。
くりくりおめめに、下がり眉。
ニコッと笑えば、子供の歯。
うちの娘は、よく笑う。

娘はおとなしい子だと思う。
自由奔放な兄とは、正反対。
空気を読んで行動する。

6歳なのに、家族に合わせる。
協調性がなんたるかを理解している。
自分の意見を持っていても、譲らなければいけない時はそっとしまう優しさ。

大人びているとも言う。
ちょっと心配になるくらい、場を読むのが上手いんだ。

おゆうぎ会の役決めなんかは、まさにそれ。
「〇〇の役をやりたいな」
と、家でニコニコ話していたと思うと、翌日にはパタリとやめてしまう。
「どうしたの?」
と尋ねると
「あの役は、やりたい子がたくさんいるから」
と言う娘。

それは優しさ。
年中のうちは、褒めていた。

「お友達に譲ってあげたんだね。えらいね」

娘は、満足気に頷いた。
しかし、いつになっても譲るばかりで、どうにも主張が通せない。
だから、最近は少し違った言葉をかける。

「自分のやりたいものに手をあげていいんだよ」

娘は、ちょっと困った顔をする。

「どうしても決まらなかったら、お友達と相談して決めようね」

こくりと頷いて、照れ笑いする。
それが叶ったのは秋の音楽会。
どうしてもやりたかったという「木琴」を演奏することができた。

多分、倍率は低かったんだろうけど。
「やりたい」と、手を挙げられたこと。
それが叶ったことが、嬉しくて嬉しくて。

娘はたくさん練習して、自信を持って演奏できた。
幼稚園で得たものは、確実に娘の中に育っている。

幼少期は、「協調性」より「主体性」を育みたい。
やりたいこと、興味のあることを優先する。
そのための環境を用意する。

大きくなって、やりたいことがわからない大人にならないように。
「我慢」ができる子は、「協調性」も自然と身につく。

だから焦らなくていい。

「これをやりたい!」
「こんなことがしたい!」

そっちを我慢させないほうが大事。
やりたいことを閉じ込めてはいけない。

のびのびと思うまま、やりたいことをやらせればいい。
大切な幼少期、力いっぱい大きくなあれ。

高望みはしないけれど、しなやかにたくましく育ってほしいとは思う。

社会に出てから、へこたれないように。
理不尽にも不条理にも、負けないように。
攻撃的な強さではなく、自分をしっかりと守り抜く強さを身につけてほしい。

今は、そのための土台づくりだと思っている。
だから、ちょっと厳しくてもいい。
ときには思いっきり甘やかしてもいい。

頭でっかちな知識よりも、豊かな心を。
母として、親として、そっと願ってやまないのです。

娘は、一つの節目を迎える。
4月から晴れて小学生。
小さな小さなその身にも、そんな日が来るのだなあと思う。

また明日。

また明日。

そう思い続けて、迎える卒園。

幼稚園とのさようなら。

半分のお友達は違う小学校へ入学する。

大好きな先生ともお別れになる。

何より、幼稚園への送り迎えが出来なくなる。

子供が成長するというのは、こういうことなんだな。
初めての別れを経験し、新たな出会いの場を迎える。
そのさまをしっかりと見届けよう。

あと何回…
おててつないだ帰り道。

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