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ロンドン塔に出るアン・ブーリンの幽霊

「イギリスには幽霊がいっぱいいる」という話を聞いたことがありますか?
厳密に言うと、「幽霊を信じている人が多い」ということになるかもしれません。

幽霊がいたるところにいるイギリス?


大人の英会話クラスのテキストブックに、イギリスの古城やホテルに幽霊が出るというトピックがありました。



テキストブックが作ったお話ではなく、本当の幽霊が出る(と言われている)という話です。



ロンドンに実際にあるホテルでの話。ある特定の部屋に泊まると、ヴィクトリア朝のガウンを着た男がさまよっていたり、夜になると家具を動かす音、ドアを引っ掻く音がするというのです。


イギリスやロンドンと聞いて、すぐに幽霊を連想する人が多いかどうか、分かりませんが、イギリスは国をあげて幽霊をかなり推しています。(?)


それは他でもない「幽霊ビジネス」が成立しやすいから、ではないかと私は考えています。


例えばイギリスに住んでいた頃、買い物のクーポンをもらうために登録したメルマガ等で、「今週末に泊まりませんか?ゴーストナイト!」などのセール情報が送られてきました。

ゴーストナイトって何?と思う方のために説明しますと、イギリスに数ある古城や古い館での「長時間本格的お化け屋敷」のことです。会場にはさまざまな仕掛けがしてあり、招かれた客の中には、仕掛け人の俳優が混ざっています。こんなイベントが、時々やっているのです。

「そんな怖そうなものに誰が行くの?」と思うかもしれませんが、幽霊慣れしているイギリス人は、わりと行きます。

イギリス人の私の夫も、若い頃友達と連れ立って行ってみたそうです。夫は幽霊を信じていなく、

仕掛け人が「亡霊を怒らせてはいけない」と言った時に吹き出して笑ったり、勝手にマネキンと一緒に牢獄へ入ったりするので「邪魔をしないでください」と真顔で注意されたらしいのですが。確かに企画側からすれば迷惑な客ですね。

だいたい夜10時くらいから深夜2時くらいまであったそうです。
20代とかならまだしも、今の私では興味はあっても眠気に勝てなさそうです。

ゴーストナイトがあったというLeicester Guildhall


ヘンリー8世に処刑されたアン・ブーリン


イギリスに幽霊が多いのは、歴史的な古い建造物がたくさんあることも関係しています。

世界でもっとも知られているイギリスの幽霊はなんと言っても、ロンドン塔に出るアン・ブーリンの幽霊です。


イギリスの中学生が歴史の授業で必ず覚えさせられる、ヘンリー8世とその6人の妻(その順番も)。ヘンリー8世は、そのうち二人の妻を処刑していて、うち一人アンブーリンは斬首刑にしています。

ヘンリー8世(Henry VIII, 1491年6月28日 - 1547年1月28日)は、テューダー朝第2代のイングランド王(在位:1509年4月22日(戴冠は6月24日) - 1547年1月28日)、アイルランド卿、後にアイルランド王(在位:1541年 - 1547年)。イングランド王ヘンリー7世の次男。百年戦争以来の慣例に従い、フランス王位の要求も継続した。
6度の結婚に加えて、カトリック教会からのイングランド国教会の分離によって知られる。ローマ教皇庁と対立し、修道院を解散し、自ら国教会の首長となった。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ヘンリー8世


ちなみにヘンリー8世の6人の妻
順番に。

キャサリン・オブ・アラゴンKatherine of Aragon

アン・ブーリン Anne Boleyn


ジェーン・シーモア Jane Seymour

アン・オブ・クレーヴズ Anne of Cleves

キャサリン・ハワード Catherine Howard

キャサリン・パー Kateryn Parr


ヘンリー8世はとても大柄で、絶頂期においては、魅力的で教養があると人から見られ、非常にカリスマ性のあった統治者だったと言われています。その一方で、無慈悲で利己的な人物、というイメージも非常に強いです。

元々最初の妻のキャサリンの侍女だったアンブーリンは、ヘンリー8世から愛人になるよう求められます。

けれどアンは肉体関係を結ぶ前に王妃の座をと強く望みました。当時イギリスはカトリック教会で、離婚はできないので、ヘンリー8世は無理やり『そもそもキャサリンとの結婚は無効であった』ということにしようとしました。(それなら可能だったそうで)

けれどカトリック教会は反対。王妃キャサリンは国民から人気もあり、国内から反対が多かった。そこで暴君のヘンリー8世は激怒。

反対された教皇庁と決別し、カトリック教会とは違うイングランド国教会の原型が誕生したのです。そうしてキャサリンとの結婚は無効にして、アン・ブーリンと結婚しました。

新宗教を成立させてまで離婚をする。
ヘンリー8世のわがままで、自分の都合で作った、離婚が可能な新しい宗教。

けれどそれが、もしかしたらのちの人の自由の礎になったかもしれない、という可能性を考えると、なんだか複雑です。

アン・ブーリン


結婚後、ヘンリー8世は男児を渇望していましたが、アンが産んだのは女の子。


このアンが産んだ女の子。のちのエリザベス一世です。「私は英国と結婚している」と言い、生涯独身。イギリス黄金時代へ導いた女王。

男の子を産まないアンに対してヘンリー8世はアンに対する気持ちが薄れていき、今度はアンの侍女ジェーン・シーモアに心変わりします。

アンは結婚から2年後、国王暗殺の容疑、および不義密通を行ったとして、反逆罪に問われ、魔女だとも言われ、でっちあげられた罪だと言われていますが、監獄ロンドン塔 (Tower of London)に送られるのです。

そして斬首刑となったアン・ブーリン。
さぞ無念だったことでしょう。


話は少し逸れますが、うちの子供がまだ1歳くらいの時に、機嫌が悪かったか何か食べ物を手ではねのけて床に落としてしまったことがありました。

夫が「おいおいヘンリー8世じゃないんだから」と言っていて、イギリス人にとってヘンリー八世という歴史的人物は本当に身近なんだろうな、と思いましたね。

ロンドン塔のカラス

ロンドン塔には今もアンの亡霊が歩き回っていると言われていますが、斬首刑されたので、たいてい首はないとか。

何人も目撃者がいるそうですが、なんといっても幽霊ビジネス推しのイギリスなので、本当のところは分かりません。


ちなみにロンドン塔にはカラスがたくさん住み着いています。(ワタリガラスという種類)特定の時間になると飛んでくるたくさんのカラスたちは、ただでさえ威圧感のあるロンドン塔を、さらに不気味な景色に仕上げています。

このカラスたち。実はロンドン塔によって管理、飼育されています。観光客も「不気味だね〜」とか言いつつ喜んで写真を撮るのですね。

このカラス、駆除しようと試みたこともあったそうですが、「カラスがいなくなるとロンドン塔が崩れ、ロンドン塔を失った英国が滅びる」と占い師が予言し、それ以来、駆除はあきらめ、代わりにワタリガラスを飼育するようになったそうです。

う〜ん。占い師が…。


ちなみにアン・ブーリンの人生に興味があったら「ブーリン家の姉妹」The Other Boleyn Girl  という映画がおすすめです。

私は「レオン」以来ナタリー・ポートマンが好きですが、彼女がアンを演じています。その妹にスカーレット・ヨハンソン。ヘンリー8世はずいぶん美化されて(本人を知らないのになんですが)エリック・バナです。

ヘンリー8世が最初に目をかけたのは実は妹の方だったというストーリーです。けれどアンの人生を映画でリアルに観ることができるのでおすすめです。

The Other Boleyn Girl

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