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Suicaハサマリおばさんは平成の風物詩だった

電子決済が、群雄割拠の時代を迎えている。このたび、みずほ銀行と地銀連合が、銀行口座への入金に手数料がかからない「Jコインペイ」の開始を発表した。ほかにも、大型キャンペーンを打ち出す「PayPay」、今月20日に新サービスを発表したばかりの「メルペイ」など、次々と新サービスが登場し、既存サービスとの差別化にしのぎを削っている。

そんななか、長らく圧倒的な普及率を誇る電子決済サービスがある。ご存知、Suicaだ。JR東京圏424駅でサービスを開始したのは、平成13年11月18日。その便利さと分かりやすさは秀逸で、絵本作家・坂崎千春さんデザインのなんとも愛くるしいペンギンの大活躍も相まって、老若男女へ一気に広まった。
と同時に、Suicaハサマリおばさんも大量発生した。Suica片手に次々と改札に挟まれていく、おばさん達。衝撃だった。夢中になった。というのも当時、小学4年だった私は、『オバタリアン』という4コマ漫画にハマっており、日常生活でも、母を筆頭におばさんの観察に精を出していたのである。


Suicaハサマリおばさんの生態は、大きく3種類にわけられる。
まず、初期に散見されたのが、Suicaを切符のように改札に通し強引に通り抜けようとする、「切符と混同おばさん」。明らかに無理なのに、恐れず突き進む姿は、自分を信じることの大切さを教えてくれた。
つぎに、たとえば鞄の奥底にしまったSuicaを鞄ごとタッチしようとする、「限界突破おばさん」。最高レベルの処理能力を誇るSuicaとて、その布厚は無理です。決して諦めない幾度もの挑戦は、たくましく生きるためのチャレンジ精神にみなぎっていた。
そして、最も多いのが、チャージ不足で引っ掛かってしまう「確認不足おばさん」。おばさんが4人以上の複数集団になれば、うち1人以上は発生すると考えて良いだろう。なお、この手の引っ掛かり方は、おばさんに限らないのだが、彼女たちの場合「多分足りないのよ〜でも行けるかしら〜あら、やっぱりダメだったわ!ぎゃはははは!」などと全て声に出して実況中継してくれるので、なんとも微笑ましいし、とにかく目立つ。どんなことでもまずはトライしてみること。失敗してもクヨクヨしないこと。改札を挟んで響き渡る大笑いは、私たちに勇気と少しのイライラを与えてくれる。

平成も31年を迎え、さすがに「切符と混同おばさん」を見ることは減ったが、「限界突破おばさん」や「確認不足おばさん」は今なお全国で幅を利かせている。
一方で、「Edy起動できないおばさん」や「PayPayペイできないおばさん」はあまり見ない気がする。新参の電子決済サービス群は、Suicaハサマリおばさん達をいかに取り込んでいくのか。あるいは強敵と諦め、ほかを囲い込んでいくのか。電子決済の勢力競争に、今後も目が離せない。

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