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CFP®なら知っておきたい「住宅ローン控除ってどうなるの?」2022年度税制改正大綱❶

 税制は、経済社会の変化に応じて毎年見直されています。税制改正の流れは以下の通りです。

  • 8月:省庁が財務省主税局に要望提出

  • 9月:経済団体から要望

  • 10月:要望とりまとめ(与党税制調査会)

  • 11月:小委員会、総会で議論(与党税制調査会)

  • 12月:税制改正大綱を発表(与党税制調査会)

  • 1月:閣議決定

  • 2月:内閣が国会へ法案提出、国会審議

  • 3月:法案成立

 税制改正大綱は、与党の税制調査会が中心となって、各省庁からの要望を受けて税制改正の方針をまとめたものです。令和3年12月10日に公表された2022年度(令和4年度)税制改正大綱から、CFP®試験対策に必要な情報をまとめます。

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住宅ローン減税は「期間延長」「控除率縮小」

 暮らしにかかわる税制「個人所得税課税」では、住宅ローン減税の制度変更が注目項目です。控除率の縮小と減税期間の延長などを組み合わせ、中間所得層を手厚く支援する仕組みに見直されました。

期間延長と控除率縮小、結局?

控除率

 これまで、令和3年において住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、5,000万円(住宅の取得等が特定取得以外の場合は3000万円)までの借り入れを対象として、住宅借入金の年末残高に対して1%の税額控除を10年間適用できましたが、令和4年以降も延長しますが控除率は0.7%となります。

 控除率が下がるのは、制度のひずみに対応するためです。住宅ローンの金利が大幅に下がり「逆ざや」の状態になってしまっていたためにそれを解消する措置となります。現在、住宅ローンの変動金利は1%を下回ることが当然になっていて、住宅ローンの金利よりも控除額(1%)の方が多くなってしまうという現象が生じていました。購入者(債務者)が減税によって利益を得られるうえ、不必要な借入れにつながることなどが問題視されていました。

 なお、所得税から控除しきれない場合の住民税控除額は、最高136,500円から最高97,500円へと縮小されています。

期間

 減税の期間は原則10年間から13年間に広げて中間所得層へ考慮が垣間見えます。
 従来の10年間では、年収600万円程度の世帯では、最大400万円の減税額に対して実際の減税額は300万円程度にとどまるケースが多くありました。富裕層ほど減税効果が出やすいことを考慮し、適用期間を13年に延ばすことで、中間層にも恩恵が行き届くようにするわけです。
 なお、消費税10%引上げに伴う措置として控除期間を10年ではなく13年とするものは、本年12月31日入居をもって終了となります。ただし、感染症による経済状況を考慮して、新築住宅等の控除期間を13年としました。

所得要件ほか

 控除対象者はその年の合計所得金額が3,000万円以下であることが要件でしたが、令和4年以降は2,000万円以下に下がります。

 さらに、中古住宅については、従来の築件数要件が撤廃される一方、新耐震基準に適合する住宅であることが要件となります。

適用対象住宅の細分化

 今回の税制改正の大きなポイントは、減税対象となる借入限度額を住宅の省エネ性能に応じて細分化したことです。脱炭素社会の実現に向けて省エネルギー住宅の普及も促す必要があり、住宅分野でも温暖化対策の強化が避けられないなか、個人向けの税制支援を打ち出しました。

適用対象住宅の細分化で、ますますややこしく・・・

新築住宅

 2022~2023年の新築住宅の借入限度額は省エネや耐震性能に優れているとの認定を受けた認定住宅の場合は、5,000万円で、この場合に住宅購入者が受けられる減税総額は最大455万円です。

 ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の省エネ住宅で2022~2023年は4,500万円、省エネ基準を満たした住宅では4,000万円、その他の住宅は3,000万円です。

 2019年度に着工した住宅のうち国の省エネ基準を満たす住宅は戸建ての約9割、マンションの7割前後を占め、減税措置を受ける人の多くは4,000万円以上の限度額が適用されそうです。

中古住宅

 中古住宅に関しては、前記各水準の適合住宅では3,000万円、その他の住宅は2,000万円で、控除率0.7%、減税期間10年間です。
 なお、登記簿上の建築日付が1982年(昭和57年)1月1日以降の中古住宅は「新耐震基準」に適合しているとみなし、適用します(木造等築20年以内、マンション等築25年以内の築年数要件を廃止)。

床面積

 対象の新築住宅は床面積50㎡以上ですが、所得1,000万円以下の購入者の場合、2023年以前に建築確認を受けた新築住宅では40㎡以上が適用対象となります。
 これは、都市部のマンション価格が高騰していることへの対応です(従前より適用で、今回の改正ではありません)。

実際問題

で。いつ買おうか。

 現在適用されている住宅ローン減税は、入居期限が2021年末までです(2021年11月までに契約を済ませている場合に適用)。現状で未契約の人が従来の制度の適用を受けるためには、2021年内に契約し、大晦日までに入居するしかありません。ですから現在の仕組みを適用するのは無理です。

 新たな制度も2024年から控除対象限度額の上限が減少します。住宅ローン減税の恩恵を期待するなら、まず「2023年末までに入居」、その次のタイミングは制度改正の期限「2025年末までに入居」ですね。

 また、試験対策として知っておきたいことを追加すると、ローン控除を始めて適用する年の確定申告時や、翌年以降の年末調整時に必要だった借入金の年末残高証明書が提出不要となり、債権者(銀行等)が借入金の年末残高などの必要事項を記載した調書を作成して税務署へ提出することになりました。

まとめ

  • 入居期限;4年延長(2025年末まで)

  • 控除率;1%→0.7%

  • 控除期間;10年→13年(新築の場合)

  • 所得要件;3,000万円以下→2,000万円以下

  • 対象住宅;省エネの基準が細分化

 税制改正が行われると、CFP®試験では「内容」と「計算」で出題されまする確率が高まります。改正事項はもちろんのこと、これまでとはどう異なるのかを確認しておく必要があります。

【参考】住宅ローン控除を最大限利用するために

住宅ローン控除を最大限利用するための借入金額が気になるところです。13年目のローン残高が借入限度額となる借入金額がいくらかは、以下の通りです。(金利0.5%、元利均等返済35年、控除期間13年の場合)

  • 借入限度 5,000万円 → 借入金額 7,707万円

  • 借入限度 4,000万円 → 借入金額 6,165万円

  • 借入限度 3,000万円 → 借入金額 4,624万円

ワタシのような庶民には到底考えられないような、多額の借入です。。。

つづく。

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