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「人生100年時代」、年金はあてにならない(年金#2)

ご存知ですか。令和4年度から年金が減額されました。
老後の生活を支えるお金のなかで、大きな比率を占めるのが公的年金です。

実際、高齢者世帯の収入の6割が年金生活をおくり、残り4割は年金以外に加えて稼働・財産所得(不動産収入等)などで生活しています。

そこで、重要な問題となるのが「年金のみで生活できるか」という点です。

近年、日本人の平均寿命が延び、「人生100年時代」に突入するといわれる中、100歳まで生きることを前提にしたライフプランを考える必要があります。

セカンドライフにゆとりある暮らしをするためには、一定のお金が必要です。

退職後は収入が減るのが一般的で、老後の生活資金として年金をあてにしている人も多いと思います。

しかしながら、老後資金2,000万円問題が話題になったこともあり、公的年金だけでは安定した老後生活をおくるためには十分ではありません。

「いつから」もらえて「どのくらい」もらえるのかは、収入や職業、年代によって変わってきます。

公的年金に頼らない貯蓄を作るために資産運用をする場合でも、実際にもらえる年金額が分かっていた方が安心です。

公的年金の説明の前に、まずは令和4年4月から年金額改定がありましたので、こちらから説明いたします。

1.令和4年度の年金額改定

厚生労働省から、今年度の年金額の改定は、次の参考指標をもとに決められています。

1.物価変動率:0.2%減
2.名目手取り賃金変動額:0.4%減
3.マクロ経済スライドによる調整率:0.3%減

参考元:厚生労働省「令和4年度の年金額改定について」

年金支給額は、物価や現役世代の賃金の動きに合わせて毎年増減します。

令和4年度の年金額の改定は、物価(昨年)は0.2%減、賃金(18~20年度平均の動向などを反映)は0.4%減です。

今回のように、物価よりも賃金の変動が下回る場合は、賃金の動きに合わせて年金支給額も変える仕組みになっています。

■マクロ経済スライドによる調整率
「公的年金被保険者の変動」と「平均余命の伸び率」(2つを数値化にすると=0.3%)に基づいて、マクロ経済スライドによる調整率を設定します。

計算式
賃金・物価上昇率 - スライド調整率(0.3%)= 年金額

賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除します。
【例】賃金(物価)の上昇率が1%で、スライド調整率が0.3%の場合

計算式
1% - 0.3% = 0.7%

よって、年金額の改定率は、0.7%になります。

反対に改定率がマイナスの場合には、スライド調整率は行われません。
賃金<物価のときは、「賃金」の改定率で年金額を計算します。

・賃金変動に応じて改定(3パターン)

つまり、今回は改定率がマイナス(図①)のため、令和4年度の改定では行われず翌年度以降に繰り越されます(※2)。
(※2)キャリーオーバー制度という:年金額の改定に反映しきれなかったマクロ経済スライドの調整率(0.3%)を、翌年度以降に繰り越す

これによって、今後物価や賃金が上がって、改定率がプラスになっても、繰り越し分があるうちは、その改定率から引かれてしまうので、年金額が増えにくいというわけです。

引用:厚生労働省「図表5-1-3 マクロ経済スライドによる調整ルールの見直し(平成30年4月施行)」

これをふまえて令和4年度の年金額は、法律の規定により0.4%減の引き下げとなります。

令和3年度に引き続き2年連続のマイナス改定になります。

■金額について厚生労働省は、下記のようにモデル例を示しています

引用:厚生労働省「令和4年度の年金額改定について」

今回の年金額改定の減額(年額)を計算すると、

・国民年金
▲259円 × 12か月 = ▲3,108円(年)
・厚生年金
▲903円 × 12か月 = ▲10,836円(年)

月でみると少額かもしれませんが、10年・20年と長期で考えるとみると大きな金額になります。

1-1.マクロ経済スライド

2004年までの年金支給額は、物価スライドにより物価の変動に合わせて年金を調整するという制度でした。

しかし、日本の年金制度は年金を納めている現役世代が減り、受給者が増えれば、年金を支払うことができなくなってしまいます。

そこで登場したのが「マクロ経済スライド」という仕組みです。

これは、そのときの少子高齢化や平均余命の伸びに合わせて、年金の給付水準を調整する仕組みです。

少子高齢化による財政悪化のために「マクロ経済スライド」を発動し、年金額を調整し支給します。

■マクロ経済スライドはいつまで続く
2019年(令和元年)の財政検証より、現在のマクロ経済スライドの終了時期は、厚生年金は2025年度に、基礎年金は2047年度になっています。

基礎年金と厚生年金の終了時期(2033年)を統一するという案も出ています。

ですが終了時期については、5年ごとの財政検証で見直していくため不確実なものとなっています。

参考元:厚生労働省「2019(令和元)年財政検証結果レポート」
参考元:日本総研「マクロ経済スライド終了時期統一および 基礎年金 45 年加入案の評価と課題」

まとめ

日本という国が破綻しない限り、年金制度は存続していると思われますが、支給される年金額は今よりも確実に目減りしていくことが予想されます。

仮に年金受給額が増えたとしても、インフレに対しての増加(年金額)が少ないことから、年金額の水準は低くなると考えられます。

また、現役世代の賃金の上昇が低ければ年金受給額の増加も少なくなります。

「人生100年時代」がいずれ到来すると言われるなか、公的年金のみに頼らず、現役時代から自助努力により資産を増やすことが肝心になってきます。

自助努力の柱となる資産形成(運用)は、少額でもいいので早めに準備をしておくことをおすすめします。

次回は、公的年金について解説していきます。


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