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#14「かんぽ生命」不正販売から学ぶ保険詐欺に合わない方法

かんぽ生命保険の不正販売問題が明るみに出たが、契約者への調査は継続中である。そんな中、中間報告が9月末予定なのに、10月1日から通常通りの営業を段階的とはいえ再開するそうだ。

かんぽ生命に限らず、これから保険に加入しようと考えている方は、「3 不利益になった可能性のある事案」のA~Dは読んでおきたい。怪しいと思ったたら保険会社に問い合わせよう。

気になるので、かんぽ生命について調べてみた。

1 かんぽ生命は国内最大の生命保険会社

2019年9月1日の毎日新聞[*1]によると、18年度末の契約件数は、2914万件で、単体で国内最大の生命保険会社である。

(参考)連結

1位 日本生命 3019万件

2位 第一生命HD 1591万件

3位 明治安田生命保険 975万件

4位 住友生命保険 914万件

かんぽ生命の契約者年齢構成は、約半分が60代以上、50代が16%となっている。20代から30代で20%と、想像していたより若い世代も利用しているようだ。

15年以上前は、「学資保険ならかんぽ生命」と言われていたほど強く、また「日本の会社でないと心配」という理由を聞いたことはあったが、最近はほとんど聞いたことがなかったから、若い世代が利用している割合を見て意外だと思った。

とにかく、国内最大の生命保険会社が不正販売していたのだから、どのように信頼を取り戻すのかが気になる。金融機関は「顧客本位の業務運営」を掲げており、保険業法が改正され、効果はあるか疑問だが、保険相談時の提案の仕方をヒヤリングしたり、顧客のニーズに合う商品を紹介するよう促したりと、ここ何年かの動きを知っていただけに、この不正販売は保険業界全体の信用を落としたと感じた。

顧客本位の業務運営にするそうだが、今更言われても、信用できないため、目に見える形で示してほしい。そこで今後の流れを公式サイトからまとめる。

2 かんぽ商品に係る業務運営について

・2019年7月14日 7~8月の間、保険の提案は控える          

・2019年7月31日 全契約調査及び特定事案調査に最優先で対応 

・2019年8月23日(9月中に完了予定) 全契約者調査、約1,900万人に書面発送

・2019年8月29日 特定事案調査約16万人への書面発送が完了

・2019年9月第2週 金融庁の立ち入り検査(8月23日に通知)[*3]

・2019年9月末 中間報告

2019年10月1日 通常営業を段階的に再開

・年内めど 第三者委員会による調査報告[*4]

※特定事案調査は、不利益を受けた疑いのある契約者に対する調査

3 不利益になった可能性のある事案

現時点でどの程度不利益になっているかは不明だが、特定事案調査では具体的にA~Eに分類し、状況把握を行っている。これほど大規模な不正は聞いたことがないが、かんぽ生命に限らず募集人単位であれば可能性あるため、参考にしてもらいたい。

A(約1.9万件):契約乗換に際し、乗換前のご契約は解約されたが、乗換後のご契約が引受謝絶となった事案

⇒普通、保険契約を切り替える場合、新しい契約の成立が確定してから古い契約を解約する(又はほぼ同時に手続きをする)。

B(約0.3万件):契約乗換後、告知義務違反により乗換後のご契約が解除となり、保険金が支払謝絶等となった事案

⇒告知義務違反は、たとえば入院したことがあるのに、「ない」と答えるなどするケースで、保険会社は保険金支払い時に診察日などを確認するため、保険金支払い時に発覚する。仮に保険募集人が契約を成立させるために告知義務違反を勧めた場合には保険金は給付される。

C(約2.5万件):特約切替や保険金額の減額により、より合理的なご提案が可能であった事案

⇒募集人は解約前に顧客にとって不利益がないか十分説明する必要があり、解約する際には、説明があったことについて「顧客が」「チェックを」つける。保険料が払えない場合でも、保険契約の一部を解約するなど対応方法は複数あり、それらを無視しての乗換は業法違反となる。保険は契約してから1年間の手数料が高いため、正直、1年単位で解約を繰り返せば、手数料収入を稼ぐことができる。それを禁止しているのである。ただ、保険商品と特性や市場の保険比較をしない顧客が違反かどうかを判断するのは難しいだろう(おそらく気づかない。

D(約2.0万件):契約乗換前後で予定利率が低下しており、保障の内容・保障期間の変動がない等の事案

⇒意図が読み取りにくいが、「予定利率が低下していて」は、予定利率の高い契約から低い契約に乗換させ、その契約内容は変わらない、という意味だろう。保険の予定利率は年々下がっており、昔加入した保険ほど予定利率は高いため、普通なら解約せず保険料を払い続けたほうがいいというアドバイスになる。

E(約7.0万件):契約乗換の判定期間後(乗換後のご契約の契約日の後 7 か月から後9 か月)の解約により、保障の重複が生じた事案

⇒かんぽ生命内の基準で、新契約締結から解約まで6ヶ月以上あると営業成績は上がり、解約から契約まで3ヶ月以内だと営業成績は下がる。

<かんぽ生命の社内基準による不適切販売と顧客への影響>[*5]     事案AとE

3 改善の取り組み[*6]

契約乗換の勧奨を行わない(2019 年 7 月)               営業目標と販売実績計上の見直し(2019 年 8 月以降)          募集事前チェック機能の強化(2019 年 10 月)              条件付解約制度の導入(2020 年 4 月→実施時期の前倒しを検討)     契約転換制度の導入(2021 年 4 月以降→実施時期の前倒しを検討)    現在実施している契約乗換判定期間の外の調査の強化

郵便局ではかんぽ生命商品に係る積極的な営業は行わない。       日本郵便において、今期のかんぽ生命商品の営業目標は設定しない。   かんぽ生命商品の営業に携わる全社員の研修を実施する。

4 本当に信頼回復できるのかの疑問点

疑問1 立ち入り検査前に通常営業を再開することを決定しており、真相解明と業務改善ができるのか

疑問2 こんなに短期間で「顧客本位の業務運営」体制ができるなら、なぜ早くやっておかなかったのか

疑問3 書面発送が完了しただけであり、それから1ヶ月で何が分かるのか

疑問4 第三者委員会による最終報告は年内をめどとしているのに、段階的であるとはいえ、営業再開できるのか。

[補足] 合わせて読んでおきたいかんぽ生命不正問題に関する記事

東洋経済「かんぽ生命の不正問題は一体誰の責任なのか」

[補足] かんぽ生命社長 謝罪会見(朝日新聞社)


[*1]出所:毎日新聞9/1「2889万件 かんぽ生命の契約件数 続くじり貧、現場圧迫」

[*2]出所:かんぽ生命「かんぽ商品に係る業務運営について(別紙)」

[*3]出所:朝日新聞デジタル「金融庁、かんぽ生命と日本郵便に立ち入り検査へ」

[*4]出所:朝日新聞デジタル「かんぽ営業再開に批判 社内外から 日本郵政10月方針」

[*5]出所:東京新聞「満額手当優先「不当乗り換え」横行 かんぽ生命保険不適切販売問題」

[*6]出所:かんぽ生命によるご契約調査の基本的な考え方


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