見出し画像

#10 「真実」は闇の中?外貨建て保険の積立利率

外貨建て保険は、円建て保険と比べて積立利率が高い。積立利率は支払った保険料から手数料や諸費用を引いた金額にかけるため、外貨建て保険は手数料の高い外貨建て商品だと指摘する人もいる。

保険募集人が強く語らない外貨建て保険の積立利率について解説する。

1 外貨建て保険とは

外貨建て保険は、主に米ドル、豪ドル、ユーロで運用される保険で、外貨建て終身保険が有名だ。円建てより高い積立利率で運用されるため、解約時の受取額に魅力がある。しかし円で受け取るため、為替相場の影響を受け、契約時よりも円高になってしまうと、積立利率が高くてもマイナス(受取金額より支払保険料総額の方が多い)になる可能性もある。

2 外貨建て保険の積立利率

メットライフ生命の積立利率の解説を引用する。

積立利率について
●積立利率とは積立金に付利する利率のことをいいます(保険料に付利する利率ではありません)。
●積立利率は毎月1日に設定されます。設定された積立利率は、1ヵ月間、積立金に付利し、積立金を増加させます。毎月の積立利率は、その前々月のこの保険の運用実績から資産運用のための運営費率、積立金を最低保証するための保証費率、その他費用を差し引いた利率となります。
●積立金からは、死亡・高度障害保障のための費用などが毎月控除されます。
そのため、積立金がそのまま積立利率で運用されるものではありません(積立利率は実質利回りを示すものではありません)。
※控除される費用は、保険金額・契約年齢・性別・経過期間などによって異なりますので、一律には記載できません。
積立利率は年3.00%が最低保証されています。             出典:メットライフ生命「積立利率」

分かりにくいかもしれないので、ポイントをまとめる。

・積立利率は、積立金に付利する利率で、保険料に付利する利率ではない。 ⇒ 積立金が不明

・積立金から保障のための費用が毎月控除 ⇒ 積立金が不明

・積立利率は運営費率、保証費率、その他費用を差し引いた利率である。 ⇒ 適用されている利率は不明

・控除費用は、保険金額、契約年齢、性別、経過期間などで異なる。   ⇒ 費用が不明

運用でどの程度増えるかは、「金額×利率」なので、金額と利率で決まるが、どちらの数値もわからない。数値が公開されていればiDeCoを活用した投資信託と比較して確認したいが、これだけでも不利ではないかと想像できる。

少なくとも、顧客には必ず「分かるように」説明すべき内容で、具体的な数値を提示すべきである(説明を受ける予定の人は詳しく聞いてほしい)。

3 為替レートと積立利率の関係

外貨建て保険は、メットライフ生命の場合は最低利率が3%なので、運用期間中はできるだけ高い方がいい。一方、為替レートは運用期間中に変動があってもいいが、解約時には円安になっている必要がある。

・為替レート 「契約時より解約時の方が円安」

・積立利率 「運用期間中、長期に渡り高い」

そこで、メットライフ生命が積立利率の推移を公開している「積立利率変動型終身保険(米国通貨建 2002)」のデータと為替レートをグラフにまとめてみた。

2007年6月1日は「1ドル123円」で、このグラフ内では円安である。過去のデータから将来の為替レートは予測できないため、確実なことは言えないが、外貨建て保険にとっては不利になりそうだ。一方、2012年1月1日は「1ドル76円」で、かなりの円高である。このときこそ外貨建て保険は勧めやすく、円安になる可能性は2007年6月1日より高いだろう。

積立利率を見ると、下落し続けている。しかも積立利率からさらに費用などが差し引かれるため、実際の利率は2%か1.5%かすら不明である。

費用が「保険金額、契約年齢、性別、経過期間」などで決まるため、少なくとも契約を予定している人にはすべて具体的な数値を提供してもらわないと、商品の信頼性は低くなる。

4 外貨建て保険の営業

最後に、外貨建て保険で使用される営業方法[*1]を一つ紹介する。外貨建て保険の魅力は、(表面的に)高い積立利率である。設計書を作成すると、「積立利率3%」「積立利率4%」「積立利率5%」の場合が記載されており、積立利率5%の場合の受取額を見ると、加入したくなる(しかし実際には下がり続けている)。一度、欲しいと思うと、そのあとにリスクを説明されても、公平に判断できなくなるものだ。

また解約時の為替レートは分からないため、設計書はドルベースで記載されている。つまり、為替レートの影響は実感できない。

公平に判断して、外貨建て保険に加入したいなら問題ないが、冷静に判断できないなら、いったん検討期間をおき、冷静に考えてみることが大切である。

[*1]現在、広く行われている営業方法と異なっていたら指摘していただきたい。

5 補足

基本的に商品の優劣は比較してみないと分からないため、この記事だけで外貨建て保険がダメだというつもりはない(言いたいが、一応)。あくまでも保険募集人の説明を聞いてから判断してもらいたい。

日米の金利差は為替レートに影響するかどうかをグラフで証明したかったが、相関はあまり見られなかった。期間によっては、短期金利と為替レートは同じ動きをするため、下記の資料を参考にしてもらいたい。金利と為替レートの関係についてはもう少し調べて記事にする予定だ。

出典:第一生命経済研究所「日米金利差との付き合い方」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?