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【地方紹介10】イル・ド・フランス地方

<地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:イル・ド・フランス地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
イル・ド・フランス地方(Île-de-France)/パリ(Paris)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
イル・ド・フランス地方(Île-de-France)/パリ(Paris)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●エッソンヌ県(Essonne/91)県庁所在地:エヴリー・クールクーロンヌ(Évry-Courcouronnes)
●オー・ドゥ・セーヌ県(Hauts-de-Seine /92)県庁所在地:ナンテール(Nanterre)
●パリ県(Paris /75)県庁所在地:パリ(Paris)
●セーヌ・サン・ドニ県(Seine-Saint-Denis/93)県庁所在地:ベルフォール(Belfort)
●セーヌ・エ・マルヌ県(Seine-et-Marne /77)県庁所在地:ムラン(Melun)
●ヴァル・ドゥ・マルヌ県(Val-de-Marne /94)県庁所在地:クレトゥイユ(Créteil)
●ヴァル・ドワーズ県(Val-d’Oise /95)県庁所在地:セルジー(Cergy)
●イヴリーヌ県(Yvelines /78)県庁所在地:ヴェルサイユ(Versailles)
 
※なお、首都のパリは、イル・ド・フランス地方に含まれますが、パリは膨大な情報量がありますので、別途、とりあげることとし、ここでは、パリを除くイル・ド・フランス地方を取り上げます。
 
 
★地方概要★
 
イル・ド・フランス地方は、フランスの首都パリを含んでいる地方圏です。しかし、パリのイメージが強すぎるのか、この「イル・ド・フランス」という地方名はあまり知られていないように思えます。この地方はパリを除けば、それほど大きな都市はありません。セーヌ河を筆頭に、マルヌ川、オワーズ川、ロワン川と多くの河川が流れ、河畔にはフォンテーヌ・ブローやランブイエという森や緑が広がる美しい自然の残る地方。水と緑のイル・ド・フランスなのです。この地方は、大きな街はパリ以外には少ないものの、世界に名を轟かす名所は意外と多いのです。シャトー(お城の意味)という名前が付く有名なお城を見れば、ヴェルサイユ宮殿はもちろんですが、世界遺産のフォンテーヌブロー城、様々な芸術家たちによって作られたヴォー・ル・ヴィコント城なども有名です。他にもロッシュ・ギュイヨン城、サン・ジャン・ド・ボールガール城、ブルトゥイユ城、フェリエール城と、数多くのお城が点在しています。イル・ド・フランスのイメージの一つとしては、このブルボン王朝時代に作られた豪華な城館が挙げられるでしょう。豪華で見ごたえのあるものが多いので、建築や美術に興味のある人はもちろん、そうでない人でも、知られざる歴史の1ページを発見できることでしょう。城館は広大な敷地の中に建ち、手入れのいき届いた庭園を持っているものが多いです。建築様式はさまざまで、ルネッサンス様式から、ヨーロッパ中の城で模倣されることになった壮大なルイ14世様式、やわらかな曲線と美しい装飾を持つルイ15世様式、すっきりとしながら威厳を感じさせるルイ16世様式など、個性的な魅力に溢れています。そして、繊細な刺繍が施されたような見事なフランス式庭園、もともとの自然を活かしたイギリス式庭園、遊び心溢れる装飾菜園など、庭園の見学も興味深いものが多いです。

世界遺産にも登録されるフォンテーヌブロー城

都市だけではなく、河畔の村々にも魅力的なものが多いのです。その自然風景は特に印象派の画家たちに愛されました。ミレーのバルビゾンに始まり、モネはアルジャントゥイユを、ゴッホはオーヴェル・シュル・オワーズを、シスレーは、モレ・シュル・ロワンを愛し、その風景を何枚もの絵画に残しています。また、当時、フランスで絵の勉強をしていた黒田清輝は、グレ・シュル・ロワンに住み、その風景を残しています。他に、中世の町を今でも良く残している世界遺産の中世都市プロヴァンや、コクトーが眠る村ミリィ・ラ・フォレなど意外に見ごたえのある訪問地が多いのです。
 
パリは確かに魅力的な街です。1週間居ても、1カ月いても、飽きることなく楽しめる町。しかし、せっかくならパリからちょっと足を伸ばしてイル・ド・フランスの町々を訪ねてみてください。そう、「パリを出ると、そこがフランス」だからです。
 
 
★町や村★
 
パリを除いたイル・ド・フランス地方で、群を抜いた人気があるのは、バロック様式の壮麗な宮殿、ヴェルサイユ宮殿のあるヴェルサイユの町。フランスのイメージとして上がることもあるヴェルサイユ宮殿は、パリのエッフェル塔や凱旋門、ルーヴル美術館に匹敵するフランスを代表する観光地と呼ぶことができるでしょう。根強い人気があり、パリからも近いことから、パリからの日帰り観光で紹介されることも非常に多い場所です。

一度は見てみたいヴェルサイユ宮殿の鏡の間

都市としてのヴェルサイユは、王国の最盛期につくられた町で、1682年から1789年にかけて、摂政時代を除き、政府が置かれ、フランスの政治の中心でした。今でも城館とその付属庭園、ならびにトリアノンが形づくる類まれな規模の王宮によってその名を世界中に知られています。ヴェルサイユの町は、公爵、大臣、公史、職人のように、王宮の生活に関連ある高位高官から無名の人にいたるあらゆる階層の人々の住まいの場として、城館を補完する形で作られた町であるため、国王への奉仕の精神の名残として壮重な面影をとどめており、それが幾分いかめしさを帯びたこの町の魅力となっています。
 
ヴェルサイユの町が出来上がる以前は、本当に小さな村であったヴェルサイユですが、1671年以降はほとんど使われなくなったため、ルイ14世は、土地を求める人々に対し、土地の税金を課して、都市の建築的統一をはかるため王室建造物係の指示に従って建物を建てることを条件に、土地を与えました。
 
フランスを代表する観光地、そして世界遺産でもあるヴェルサイユ宮殿は、その名にふさわしい豪華で、また広大な宮殿。一般観光客で見学できるところ、できないところがあるとはいえ、宮殿に加え、庭園、グラン・トリアノン、プティ・トリアノン、そして王妃の村里(Le Hameau)まで訪ねるとなると、一日がかりになります。
 
その他、パリがイル・ド・フランス地方のちょうど真ん中にあり、東西南北、いずれの方向にも魅力的な村や町が残っています。特にセーヌ河畔に美しい風景が残っており、村そのものの美しさというよりも、村と川が織りなす風景が美しい場所が多いです。
 
北には、パリの歴代の王が眠るサン・ドニ。サン・ドニ大聖堂には、歴代のフランスと王妃が眠っており、美しい大理石の霊廟が並んでいます。大聖堂もバラ窓が美しく非常に見ごたえのある歴史的県ぞ物となっています。

ゴシック様式発祥の地としても知られるサン・ドニ大聖堂

南西部には、ミレーに代表されるバルビゾン派が生まれたバルビゾン、そして、シスレーが愛したモレ・シュル・ロワン、日本人画家、黒田清輝が滞在したグレ・シュル・ロワンなどがあります。どれも緑豊かな田舎に佇む小さな村です。中でもロワン川沿いに広がる村、モレ・シュル・ロワンは、木骨組みの家などが残っており、ナポレオンが滞在した家、フランス・ルネッサンス様式のギャラリーなどが残っています。シスレーが住んだ家も残っており、彼が描いたロワン川の対岸からの景色がとても美しいことで知られています。

風光明媚なモレ・シュル・ロワン村

北西にはゴッホ終焉の地オーヴェル・シュル・オワーズがあります。オワーズ川沿いに広がる素朴な村ですが、オーヴェルは晩年にゴッホが滞在したことにより、その名を知られることになりました。ゴッホが住んでいたのはラブー亭と呼ばれる家で、現在では訪問見学ができ、レストランが隣接しています。また、村はずれには小さなゴッホと弟テオの墓がひっそりと建てられています。村のシンボルとなっているノートルダム教会は、ゴッホがモデルにして描いたもので、その作品はオルセー美術館に所蔵されています。

ゴッホがえ描いたオーヴェルの教会

ヴェルサイユからもほど近くにあるサン・ジェルマン・オン・レーは、パリからでも西に約20kmにある町で、パリ市内から気軽に訪ねられる郊外の町です。住宅地も多いですが、城とその奥にあるイギリス式庭園の美しさでも知られています。フランス王家の歴史でもたびたび、その名が出てくる街なのですが、中でも、太陽王ルイ14世が生まれた町として知られており、彼が生まれたお屋敷「パヴィヨン・アンリ・キャトル」が人気を集めています。
  
★名産品と郷土料理★
 
イル・ド・フランスは、現代はもちろん、古くからパリに色々な商品が集まっていました。他の地方に比べると、この地方の郷土料理や名産品と呼べるものは、少し少ないかもしれませんが、そんな中でも、イル・ド・フランス産の名産と言えば、まずは有名なチーズ「ブリー・ドゥ・モー」が挙げられるでしょう。
 
ブリ―・ドゥ・モー(Brie de Meaux)は、食べやすく人気のある白カビタイプのチーズです。フランスではカマンヴェールに勝るとも劣らない人気があり、今や全国的に食べられますが、原産はイル・ド・フランス地方です。白カビのソフトタイプにおいてフランスで最も古くから生産されており、シャルルマーニュ大帝など歴代のフランス王にも愛されたチーズです。1815年のウィーン会議の際には、各国大使たちにも高く評価され、フランスチーズの王様とも言われたチーズです。
なめらかでクリーミーなチーズはクセがなく万人に愛されるフランスを代表するチーズの一つといえるでしょう。

イル・ド・フランスを代表するチーズ、ブリー・ド・モー

また、パリ南東のモレ・シュル・ロワンには、シュクル・ドルジュ(Sucre d'Orge)という 大麦を煮詰めた砂糖で作った飴があります。モレ・シュル・ロワンにて17世紀に修道女が作ったといわれ、ルイ14世の妃、マリア・テレジアも好んでいたという素朴な砂糖飴です。修道女から引き継いだ秘伝のレシピを今でも守っており、どこか懐かしく、やさしい甘さのキャンディです。

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