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【地方紹介7】コルス地方

<地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:コルス地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
コルス地方(Corse)/アジャクシオ(Ajaccio)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
コルス地方(Corse)/アジャクシオ(Ajaccio)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●コルス・デュ・シュッド県(Corse-du-Sud /2A)県庁所在地:アジャクシオ(Ajaccio)
●コルス・デュ・ノール県(Corse-du-Nord /2B)県庁所在地:バスティア(Bastia)
 
 ★地方概要★
コルス地方は、地中海に浮かぶ、フランス領の島、そのものが一つの地方となっています。日本ではコルシカ島の名前で通っていますが、フランス語ではコルスと呼ばれますので、地方名としてはコルス地方で記載をしていきます。なお、南にあるサルディーニャ島はイタリア領です。
 
自然豊かなコルシカ島は、イル・ド・ボーテ(美しの島)と呼ばれますが、全体的にみると非常に山がちな島です。沿岸部にはいくらかの平地がありますので、比較的大きな町は沿岸に集まっており、海沿いにはビーチ・リゾートなども多く作られています。島の中央部は険しい山岳地帯となっています。この地理的特徴がコルスの食文化を作り上げました。

コルシカ島の首都となったこともあるコルテは島の中心の山間部に位置している。

海沿いには美しいビーチリゾートとなっている場所もあり、温暖なコルシカ島はヴァカンス地としても人気ですが、海を隔てた島は独自の歴史を歩んできたため、全体的に島独特の雰囲気があります。中でも、島を縦断しながら、主要な町々をつなぐコルシカ鉄道を使いながら、島内を巡ってみたいところです。沿岸部の町から山岳地帯を抜けて島の中央までアクセスできる列車は移動手段だけではなく、絶景も楽しむことができます。

山間部を縫う様に進んでいくコルシカ鉄道

紀元前の時代から、地中海はギリシャ人が渡来し、交易が行われていましたが、地中海に浮かぶコルシカ島も同様でした。ギリシャに次いでローマ帝国の支配下に置かれ、ゲルマン民族の大移動後も、支配者は点々としました。中世には、イスラム勢力の支配下におかれることもありましたが、14世紀からはジェノヴァ共和国の領土となりますが、18世紀ごろには、ジェノヴァからの独立運動が盛んになり、島内での勢力を増大していきます。対応に苦慮したジェノヴァは、ルイ15世の時代にコルシカ島をフランスに売却してしまい、以後、フランス領となります。
 
独立運動はその後も継続しましたが、結果的に成功とはならず、コルシカ島はフランス領のままでした。そんな時代に後のフランスを率いることなるナポレオンがアジャクシオで生まれます。彼はコルシカ島出身者としては最も有名な人物となっていきます。近代になるまで、フランスとは異なった歴史を歩み、独立心が強いのがコルシカ島の人々です。いまだに、コルシカ島独立運動なども耳にしますが、現在はフランスの一地方として、美しい自然の残るのどかな島として、一地方を形成しています。
 
★町や村★
 
前述の通り、沿岸部に町が作られており、北部のバスティア、西部のアジャクシオが中心都市で、コルシカ島の中では、この2都市が比較的規模が大きな町です。島内にはいくつも空港が作られており、またフェリーでも南フランスの都市とつながっています。

海沿いに作られているアジャクシオの旧市街

アジャクシオは現在ではナポレオン生誕の地として知られており、コルシカ全体を見ても中心的な存在の街となっています。旧市街には要塞など、歴史的な建物が残る趣深い旧市街が残っています。北部のバスティアは、中世以後、コルシカ島を当地していたジェノヴァ共和国時代の街並みが良く残っており、旧港沿いのエリアでは、マルシェ広場や、旧バスティア市庁舎、サン・ジャン・バプティスト教会など散策するのが楽しい地区です。

旧港沿いにジェノヴァ共和国統治時代の街並みが広がるバスティア

南部では、ボニファシオが知られており、高い岬の上に建てられた町が大変絵になる町です。ここからイタリア領のサルディーニャ島まではたった20kmほどの距離です。また島の中央、山岳地帯にあるコルテは、山の中にありながら、歴史のある町で、コルシカ島の独立運動の際には中心都市となり、コルシカ島唯一の大学もこの町にあります。西部にあるポルト湾は、赤い花崗岩の断崖絶壁と海が織りなす美しい景観が続く景勝地です。複雑な入り江が連なり、息をのむような美しい自然を有するスカンドラ自然保護区とともに、世界遺産にも登録されています。

世界遺産に登録されるスカンドラ自然保護区

★名産品と郷土料理★
 
海に囲まれたコルシカ島では、様々な海の幸が取れます。それらのシーフードを使った料理はもちろんなのですが、島は全体的に山がちで、平地が少ない大地では、その地理に合わせた料理が発展しました。それは、伝統的な栗栽培であったり、山がちな地方でよく作られる羊や山羊のチーズであったり、ソーセージなどのお肉の加工食品、保存食などがあります。歴史的にジェノヴァ共和国治下の時代が長かったこともあり、イタリア料理の影響を受けた料理も多くあります。
 
シーフードを使った料理では、アジミヌ(Aziminu)があります。地中海の恵みをふんだんに使った、コルシカ風ブイヤベースといった料理で、魚介類では、アンコウ、タイ、マトウダイ、カサゴ、蟹やムール貝などを用い、タイム、月桂樹の葉、ウイキョウ、ニンニク、ネギ、タマネギ、トマトなどの香草と野菜と一緒に煮込みます。海と大地の恵みを凝縮した一皿で、パンとルイユとともに食べるというのも、ブイヤベースと共通しているため、使う素材に多少の違いはあれど、コルシカ風ブイヤベースとった料理でしょう。

コルシカ風ブイヤベース「アジミヌ」

山がちなコルシカ島では、羊や山羊のチーズが、多く作られますが、その代表格が、ブロッチュ(Brocciu)です。羊や山羊の乳清から作るチーズとして知られています。フレッシュタイプのものと、熟成タイプのものがありますが、そのまま食べたり、料理に使われたりと様々なシーンで活躍します。フレッシュタイプのチーズは現地以外で食べることは難しいので、コルシカ島訪問の際には、是非とも食べておきたいチーズです。コルシカ出身のナポレオンの母は、パリに引っ越した際に、このフレッシュなブロッチュを食べるために、コルシカ島から山羊を取り寄せて、チーズを作らせたという逸話ものこっており、地元の人には大変愛されているチーズです。

フレッシュ・タイプのブロッチュ・チーズ

最後に特徴的な飲み物として、押さえておきたいのが、ピエトラ(Pietra)。コルシカ島産のビールで地ビールではあるのですが、このビールは特徴的な醸造をして深い味わいがあることから、有名であり、非常に評価も高いビールです。ビールですから麦芽を発酵させてつくりますが、その際にコルシカ特産の栗の粉をいれ、併せて発酵をさせるという醸造工程をとります。そのため、栗の風味に包まれた芳醇なコクが特徴となっています。世界的なビールコンクールでも高い評価を得ているビールですが、やはりコルシカ島外ではなかなか目にしないビールなので、現地で味わってみたいビールです。

深い味わいのコルシカ島の地ビール「ピエトラ」

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